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[PPS21-08] 真空下における粉体物質の熱伝導率モデル
キーワード:熱伝導率, 粉体
太陽系の過去から現在において、粉体物質は普遍的に存在し、太陽系天体の進化に重要な役割を果たしてきた。例えば、太陽系初期に惑星形成に先立って形成されたと考えられている微惑星は、星雲中のダスト(粉体)の集合体であったと推定される。また、現在の月や小惑星などの表層はレゴリスと呼ばれる岩石の粉砕物で覆われている。このような真空環境における粉体物質の熱伝導率は、空隙のない岩石に比べて 2 桁以上低いことが知られており、粉体物質の存在は、たとえ天体表層を薄く覆う場合でも天体の熱進化および現在の熱的な状態に大きな影響を与える。一方、粉体物質の熱伝導率は温度、粒径、空隙率、圧縮応力などの多くのパラメータに依存し、一桁以上変化することが知られている。実際の天体上に存在する粉体の環境(温度、圧縮度)および物理的状態(粒径、空隙率など)は様々であり、粉体物質の存在を考慮した熱的な問題に取り組むためには、これらのパラメータ依存性を統合的に取り入れた熱伝導率モデルを確立することが重要な課題である。
我々はこれまでに、アナログ物質として主にガラスビーズを用い、真空下での熱伝導率のパラメータ依存性を実験的に調査してきた。これらの実験結果に基づいて、粉体中の熱輸送メカニズムについての理解を進めてきた。本発表では、実験的に明らかとなった熱輸送メカニズムに従って理論的に構築した、真空下での粉体物質の熱伝導率モデルについて紹介する。
粉体熱伝導率についての先行研究において、単純立方格子などの規則的な充填を仮定したモデルや、実験値へのフィッティングによって決定した経験式などが提案されてきたが、物理メカニズムに則した完全な理論モデルは構築されていない。また、先行研究において蓄積されてきた室内実験の結果を再現することはできておらず、モデルによっては 1 桁以上の差が生じている。そのため、多種多様な状態で存在する天体上での粉体の熱伝導率を精度よく推定することが困難であった。
本研究で構築した粉体熱伝導率モデルは、ランダムに充填する単一サイズの球体を仮定し、物理メカニズムに従って定量化された初めてのモデルである。本モデルは温度、粒径、空隙率、圧縮応力などのパラメータ依存性を統合的に記述しており、これらのパラメータの値を与えることで、様々な状態での粉体熱伝導率を推定することができる。我々がこれまでに室内実験によって取得したガラスビーズの熱伝導率の値と比較すると、本研究の熱伝導率モデルは最大値を与えることに成功しており、相対的な差は 3 倍以下であることが分かった。
我々はこれまでに、アナログ物質として主にガラスビーズを用い、真空下での熱伝導率のパラメータ依存性を実験的に調査してきた。これらの実験結果に基づいて、粉体中の熱輸送メカニズムについての理解を進めてきた。本発表では、実験的に明らかとなった熱輸送メカニズムに従って理論的に構築した、真空下での粉体物質の熱伝導率モデルについて紹介する。
粉体熱伝導率についての先行研究において、単純立方格子などの規則的な充填を仮定したモデルや、実験値へのフィッティングによって決定した経験式などが提案されてきたが、物理メカニズムに則した完全な理論モデルは構築されていない。また、先行研究において蓄積されてきた室内実験の結果を再現することはできておらず、モデルによっては 1 桁以上の差が生じている。そのため、多種多様な状態で存在する天体上での粉体の熱伝導率を精度よく推定することが困難であった。
本研究で構築した粉体熱伝導率モデルは、ランダムに充填する単一サイズの球体を仮定し、物理メカニズムに従って定量化された初めてのモデルである。本モデルは温度、粒径、空隙率、圧縮応力などのパラメータ依存性を統合的に記述しており、これらのパラメータの値を与えることで、様々な状態での粉体熱伝導率を推定することができる。我々がこれまでに室内実験によって取得したガラスビーズの熱伝導率の値と比較すると、本研究の熱伝導率モデルは最大値を与えることに成功しており、相対的な差は 3 倍以下であることが分かった。