日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)

18:15 〜 19:30

[SVC45-P11] 2014年7月伊豆大島北部の火山性地震増加に伴う地殻変動

*山本 哲也1高山 博之1高木 朗充1長岡 優1木村 一洋1鬼澤 真也2 (1.気象研究所、2.気象庁)

キーワード:伊豆大島, 地殻変動, GPS, 火山性地震

2014年7月下旬に伊豆大島北部で火山性地震が増加し、大島町元町で震度3の地震を含め震度1以上の地震が17回観測されるなど地震活動が活発化した。この地域における地震活動の活発化は、2002年以降に限っても3~4年に一度程度観測されてきた現象であるが、今回の活動はそれらの中で最も活発な活動であった。このような活動(イベント)は、伊豆大島火山の中長期的な火山活動評価を行う上の手がかりとなると考えられ、様々な側面から検討する必要がある。ここでは、気象研究所、気象庁、国土地理院による伊豆大島の10数点のGPS連続観測データを用いて、このイベントに伴う地殻変動を調べた。
GPS観測点間を結ぶ基線長の日平均値をみると、地震が増加した2014年7月下旬頃に島北部の基線においてステップ状の時間変化が見られる。ステップは最大1cm程度であり、南北方向に伸びる基線でより明瞭である。島の中部から南部にかけての基線については、これに対応するようなステップ状の変化は見られず、おおむね島北部に限られた地殻変動であると考えられる。GPSの日平均値を用いているため時間分解能が限られるものの、このステップ状の変化は主として7月28日に発生したイベント中で最大のマグニチュードの地震(M3.7)に伴うものと見られる。
また、地震増加の前および後について、GPS観測点における水平変位ベクトルが島内でどのように分布しているのかを調べた。変位の基準点としては山頂カルデラ北西側の観測点を用いた。地震増加に先行する2ヶ月間をみると、地殻変動が停滞気味であり、各観測点における水平変位ベクトルは多くの場合3mmに満たない大きさだった。それに対して地震増加の後の2ヶ月間についてみると伊豆大島全島が膨張するような水平変位ベクトルの分布が見らた。特に島の東部では1cmを越えるような東向きの変位が検出された。これは変位速度に換算すると0.5cm/月に相当し、近年伊豆大島で最も急速に火山性地殻変動で膨張が進んだ2012年11月~12月頃の変位速度に匹敵する。
過去に発生した2007年5~6月及び2010年10月の伊豆大島北部における火山性地震の増加は、顕著な火山性の膨張が先行した後に発生している。それに対して今回のイベントでは、火山性地震の増加を契機として顕著な火山性の膨張が始まったようにみえるという特徴がある。