日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] 火山噴火のダイナミクスと素過程

2015年5月24日(日) 16:15 〜 18:00 304 (3F)

コンビーナ:*小園 誠史(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)、奥村 聡(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、座長:鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)

16:30 〜 16:45

[SVC46-02] 大地震が富士山周辺のダイクシステムに及ぼす静力学的影響の評価

*細野 将希1三井 雄太2石橋 秀巳2 (1.静岡大学理学部、2.静岡大学理学研究科)

キーワード:富士山, ダイク, 大地震, 静的応力変化

地震が火山システムに与える力学的影響を議論した近年の研究(Chesley et al., 2012)では、1707年の宝永(南海トラフ)地震と1703年の元禄関東地震による富士山下の主ダイク(北西-南東走向)上の静的応力変化を、半無限均質媒質におけるグリーン関数を利用して計算した。彼らの結果では、宝永(南海トラフ)地震の場合のみ主ダイク南東側の深部においてダイクが開くような法線応力変化が働き、浅部では逆にダイクが閉じるような応力変化が生じたため、49日後の爆発的な富士山宝永噴火に繋がったとされた。

本研究では、まず同先行研究の追試を行った上で、2011東北地震の直後に活性化したと地震活動から推定できる副ダイク(北北東-南南西走向)についても、同様の数値計算を行った。考察するシナリオ地震として、上記の2種類だけでなく、過去に近隣で起きたM8級以上の地震である2011年の東北地震および762年の美濃-飛騨-信濃地震の断層モデルも考察した。この他、規模こそ小さめではあるが富士山の近場で発生し得る潜在的な地震として、富士川河口断層帯が活動した場合についても考察した。

結果、上記の宝永(南海トラフ)地震では、主ダイクとは異なり、副ダイクでは全体が閉じる方向に応力変化が生じることがわかった。元禄関東地震と美濃-飛騨-信濃地震では、双方のダイク共に全体が閉じる方向に応力が変化する。一方、2011東北地震の場合は双方のダイク共に全体が開く方向に応力が変化し、富士川河口断層帯の活動では、双方のダイク共に浅部が開いて深部が閉じる方向に応力が変化するという結果が得られた。

このように、大地震が富士山のダイクシステムに与える力学的影響は多様であり、(宝永地震や東北地震の後に見られたように)大地震がダイクの活動のon-offを入れるスイッチとして働く場合もあると考えられる。この考えに則れば、2011東北地震が起きた直後である現在から次の南海トラフ地震が発生するまでは、副ダイク沿いの火山活動リスクが通常時よりも高いことになる。