日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] 火山噴火のダイナミクスと素過程

2015年5月25日(月) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*小園 誠史(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)、奥村 聡(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)

18:15 〜 19:30

[SVC46-P19] 定期観測データに基づく,カメルーン火口湖における湖水爆発発生可能性の数値的評価

*小園 誠史1日下部 実2吉田 裕3Romaric Ntchantcho4大場 武5Gregory Tanyileke4Joseph V. Hell4 (1.東北大・理、2.富山大・理、3.吉田技術士事務所、4.IRGM、5.東海大・理)

キーワード:湖水爆発, ニオス湖, マヌーン湖, 数値モデル, 脱ガスパイプ

「湖水爆発」は火口湖からの急激なガス放出を伴う現象であり,周辺地域への甚大な被害を及ぼすことがある.西アフリカ・カメルーンの火口湖であるニオス湖とマヌーン湖では,それぞれ1986年と1984年に急激なCO2ガスの放出を伴う湖水爆発が起こり,約1800名の周辺住民が犠牲となった.これらの火口湖における湖水爆発のメカニズムを理解するために,湖水の化学組成の定期観測が湖水爆発発生以来継続して行われており,これによって湖水内CO2鉛直分布の変動過程に関する詳細な情報が得られている.本研究は,数値モデリングと定期観測から得られたCO2分布に基づき,ニオス湖及びマヌーン湖における湖水爆発の発生可能性を評価することを目的とした.
湖水内CO2分布の変動過程によると,湖底からのCO2に不飽和な流体の供給によって,その不飽和状態の深層水が上方に押し上げられ,その結果湖水内の中深度において湖水が飽和状態に達する,という湖水爆発発生へのシナリオを予想することができる.そこで本研究では,CO2気泡を含むプリュームの上昇に関する数値モデルを用いることで,上述のシナリオにおける湖水内中深度での気泡生成が,湖水表面に達するようなプリュームを再現できるかどうかを調べた.その結果,定期観測データから推測される湖水内CO2分布などの現実的な条件のもとで,湖内中央部で生成されたプリュームが高流量のCO2を伴って湖水表面に達することがわかった.このプリュームの特徴は急激なCO2ガス放出を伴う湖水爆発現象に相当する.以上のことから,CO2に不飽和な最下部層の成長によって引き起こされる気泡プリュームの上昇が,湖水爆発をもたらす重要なメカニズムの一つとして考えられる.
ニオス湖及びマヌーン湖における湖水内CO2分布に影響を与える重要な要素として,脱ガスパイプを用いた湖水からの人工的なCO2除去が挙げられる. CO2に富む湖水が深部の層からパイプを通して引き込まれると,上昇する湖水の減圧に伴う気泡生成と膨張の効果によって,パイプ内の流れが自立して継続(自噴)し,その結果湖水表面において噴水が生じる.定期観測に基づく最新の湖水内CO2分布によると,湖底におけるCO2濃度が急激に低下していることから,その湖底CO2濃度の変化がパイプ内流れのダイナミクスや脱ガスの程度に与える影響を調べるために,本研究では脱ガスパイプ内の湖水の流れに関する数値モデルを新たに開発した.このモデルによって,湖底のCO2濃度と,湖水表面において計測可能な噴水高度の間の定量的な関係を得ることができた.また,本モデルによる結果は実際に計測された噴水高度とよく一致しており,このことは本モデルがニオス湖及びマヌーン湖における脱ガスパイプのダイナミクスを正確に再現していることを示している.