11:30 〜 11:33
[SRD41-P01] 琉球弧トカラ列島宝島における浅熱水鉱化作用
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:熱水鉱化作用, 海底カルデラ, 硫化鉱物
【はじめに】琉球弧は九州南西部に伸びる島弧である。トカラ列島より西側では海底火山になることもあり研究があまり進んでいない。横瀬ほか(2007, 2010)は、琉球弧の火山フロントにほぼ100 kmの間隔で大型なカルデラが見いだされることを提唱している。その一つが、奄美大島の北方80 kmに位置する宝島と小宝島を外輪山の一部とする宝島カルデラである。宝島では、凝灰角礫岩中に金属硫化物を含む石英脈があることが知られており(大迫 1976、中野ほか 2008)、過去には宝島金山、鷺ヶ崎鉱山等の鉱山開発の試みもあった。我々は、2013年に宝島の調査を行い、東部の積石海岸において石英脈を胚胎した数 m 大の転石を発見した。この石英脈とそれに含まれる硫化鉱物を分析し、鉱化の生じた深度・温度を推定することが本研究の目的である。
【手法】宝島の積石海岸および金山跡から鉱石試料を約10個採取した。積石海岸の試料は砂浜に見られた数 m 大の転石から割り出して採集した。金山跡の試料は廃石所跡から採取した。鉱物同定には偏光顕微鏡及び反射顕微鏡による検鏡、EPMA 及び XRD 分析を用いた。硫化鉱物の化学組成の分析を EPMA 分析を用いて行った。石英脈中の微量金属元素を定性的に調べるため放射化分析を行った。石英脈中の流体包有物の均質化温度の決定を透過顕微鏡及び加熱ステージを用いた観察により行った。
【結果】採取した鉱石中の石英脈は、幅が最大で数10 cmに及ぶものから数 μmの網状の組織に至るまで様々なものが見られた。鉱石の造岩鉱物としては、石英の他に緑泥石、輝石、斜長石があり、輝石の一部が緑泥石化していたものが認められた。鉱石鉱物としては、黄銅鉱、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱がほぼすべての試料に認められた。一部の試料からは、銅藍、四面銅鉱、輝銅鉱、硫カドミウム鉱、重晶石が認められ、エレクトラムが金山跡の試料に認められた。また放射化分析によって、金山跡及び積石海岸の鉱石の双方からAuが検出された。石英には、擬針状、モザイク状組織といった特徴的な組織が観察された。また石英中に含まれる流体包有物のうち気液二相分離を示すものについて均質化温度を決定したところ、210℃を最低温度とする分布を示した。
【考察】先行研究(e.g., Henley, 1985)によると石英に見られた特徴的な組織は沸騰を示唆するものであり、二相分離を示す流体包有物があることもこれを支持する。石英脈中の金属硫化鉱物の形成は、熱水の沸騰に伴う浅熱水性鉱化作用で説明できる。石英脈中の流体包有物の均質化温度からは、深度 200~300mで熱水の二相分離が起こったと考えられる。この推定された鉱化深度と観察された硫化鉱物の組合せは、浅熱水性鉱化作用の中でも中硫化型のものと良く一致している。一般に中硫化型浅熱水鉱化作用は熱源から数 kmの距離で見られるとされており(Sillitoe, 2010)、宝島カルデラのカルデラ底直下にマグマを想定してこれが熱源となる熱水循環系の存在を考えることができる。現在、小宝島の海岸には100℃近い高温の温泉が湧出しており、この熱水循環系が長期にわたり活動を継続している可能性も考えられる。
【手法】宝島の積石海岸および金山跡から鉱石試料を約10個採取した。積石海岸の試料は砂浜に見られた数 m 大の転石から割り出して採集した。金山跡の試料は廃石所跡から採取した。鉱物同定には偏光顕微鏡及び反射顕微鏡による検鏡、EPMA 及び XRD 分析を用いた。硫化鉱物の化学組成の分析を EPMA 分析を用いて行った。石英脈中の微量金属元素を定性的に調べるため放射化分析を行った。石英脈中の流体包有物の均質化温度の決定を透過顕微鏡及び加熱ステージを用いた観察により行った。
【結果】採取した鉱石中の石英脈は、幅が最大で数10 cmに及ぶものから数 μmの網状の組織に至るまで様々なものが見られた。鉱石の造岩鉱物としては、石英の他に緑泥石、輝石、斜長石があり、輝石の一部が緑泥石化していたものが認められた。鉱石鉱物としては、黄銅鉱、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱がほぼすべての試料に認められた。一部の試料からは、銅藍、四面銅鉱、輝銅鉱、硫カドミウム鉱、重晶石が認められ、エレクトラムが金山跡の試料に認められた。また放射化分析によって、金山跡及び積石海岸の鉱石の双方からAuが検出された。石英には、擬針状、モザイク状組織といった特徴的な組織が観察された。また石英中に含まれる流体包有物のうち気液二相分離を示すものについて均質化温度を決定したところ、210℃を最低温度とする分布を示した。
【考察】先行研究(e.g., Henley, 1985)によると石英に見られた特徴的な組織は沸騰を示唆するものであり、二相分離を示す流体包有物があることもこれを支持する。石英脈中の金属硫化鉱物の形成は、熱水の沸騰に伴う浅熱水性鉱化作用で説明できる。石英脈中の流体包有物の均質化温度からは、深度 200~300mで熱水の二相分離が起こったと考えられる。この推定された鉱化深度と観察された硫化鉱物の組合せは、浅熱水性鉱化作用の中でも中硫化型のものと良く一致している。一般に中硫化型浅熱水鉱化作用は熱源から数 kmの距離で見られるとされており(Sillitoe, 2010)、宝島カルデラのカルデラ底直下にマグマを想定してこれが熱源となる熱水循環系の存在を考えることができる。現在、小宝島の海岸には100℃近い高温の温泉が湧出しており、この熱水循環系が長期にわたり活動を継続している可能性も考えられる。