日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW26] 水循環・水環境

2015年5月27日(水) 09:00 〜 10:45 301A (3F)

コンビーナ:*内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、座長:内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、林 武司(秋田大学教育文化学部)

09:45 〜 10:00

[AHW26-04] 森林流域における化学物質の流出機構:観測とモデリング

*宮本 拓人1知北 和久2Md Motaleb Hossain1阪田 義隆2落合 泰大1 (1.北海道大学大学院理学院、2.北海道大学大学院理学研究院)

キーワード:森林流域, 化学物質, タンクモデル, L-Q式

河川水は生活に欠かせない貴重な水資源の一つであり,また,輸送速度が速いため、湖沼や地球の水収支に大きな影響を与える。特に河川における化学物質の流出は河川の生態系に関係し,湖沼の富栄養化の原因にもなる。本研究では2013年における北海道の森林流域である生花苗(おいかまない)川流域(流域面積 62.47 km2)を対象とした。本流域における土地利用は88.3 % が森林、10.6 % が農用地である。地質は主に新第三紀中新世の泥岩・砂岩であり、半分以上が純海成層の生花苗層となっている。今回は河川水の水質分析から化学物質の濃度を求め、河川の流量, 電気伝導度(EC)、流域の気象情報の時系列データを得た。特に淡水に対するECモニタリング技術は新しく、研究報告は多くない。今回は河川水のECと化学物質の濃度の相関関係から化学物質濃度及び化学物質負荷量の時系列データを得た。この時系列データに対しタンクモデルを適用し、河川への流出経路解析を行った。これによって森林流域における化学物質の流出機構を議論する。
本研究では特にECに影響の大きいと思われるMg2+, Ca2+, Na+, SO42-, HCO3- について注目した。結果としてはタンクモデル解析の結果、2013年は全体的に基底流出が68.3%と卓越していることが分かった。また、イベント時には表面流出が卓越した。HCO3-の解析より、土壌水の地下への涵養が起こりやすいことが示唆された。また、高出水時には河川による溶脱が大きく,河道侵食による効果が現れていることが示唆された。 SO42-の解析より、地下浅部の風化帯での黄鉄鉱の酸化が示唆された。また細菌による有機物の腐食化や上流域での基岩の風化が起こっている可能性が示唆された。Ca2+, Na+ , Mg2+ の解析より、土壌中ではH+とのイオン交換がよく起こることが示唆された。黄鉄鉱の酸化による硫酸の生成が流域上部や地下の風化帯で起こっていることが示唆された。