日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS28] 東アジア‐北西太平洋域高解像度古気候観測網

2015年5月28日(木) 09:00 〜 10:45 202 (2F)

コンビーナ:*多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、中川 毅(立命館大学)、池原 研(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、山本 正伸(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、座長:山本 正伸(北海道大学大学院地球環境科学研究院)

10:15 〜 10:30

[MIS28-15] 完新世揚子江堆積物のOSL年代測定と,推定される堆積過程

*杉崎 彩子1Jan-Pieter Buylaert2Andrew Murray3多田 隆治1Hongbo Zheng4王 可5齋藤 京太1入野 智久5内田 昌男6 (1.東京大学、2.Aarhus University、3.Technical University of Denmark、4.Nanjing Normal University、5.北海道大学 大学院地球環境科学研究院、6.国立環境研究所)

キーワード:光ルミネッセンス年代測定, 完新世, 揚子江デルタ

揚子江の洪水史は,夏季東アジアモンスーン(EASM)がもたらす降水量と関連性があり,完新世におけるEASMの頻度と降水量の復元は,現在の異常気象を理解するために重要である.揚子江デルタ堆積物は主に洪水時期に流出した懸濁物粒子から構成されており,EASMの良いアーカイブであるが,生物源炭酸塩が稀なことから年代制約が困難であった.本研究では,揚子江デルタ堆積物コアYD13-1H,G3を対象にOSL年代測定を用いて年代制約を与えることを目指し,具体的には1)デルタ堆積物を形成する現在の懸濁物粒子が堆積前に露光されているか,2)デルタ堆積物内の石英微・粗粒子のOSL年代が放射性炭素年代と整合的であるか,3)石英と長石の露光時間への応答の違いから,鉱物粒子の運搬過程の推定ができるか,の3点に着目した.
測定結果から,現在の懸濁物粒子は事前に露光しており,デルタ堆積物を構成する鉱物粒子はOSL年代測定に適していることが確認された.2本の堆積物コアから得られたOSL年代は,下部4mが一様に6千年,上部5mが2千年と急激な堆積速度を示し,これらはデルタの形成時期および人間による開拓が始まった時期と一致した.また点在する現地性の貝化石の年代とは,洪水のイベント層と推定される砂層を除き一致した.OSL年代がこの二つの時代に集中する理由について,堆積構造,長石のOSL年代と放射性炭素年代との比較から検討する.