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[PEM27-20] 中規模伝搬性電離圏擾乱発生時に共鳴散乱ライダーで観測されたCa+密度変動
キーワード:共鳴散乱ライダー, カルシウムイオン, 中規模伝搬性電離層擾乱, GPS-TEC, スポラディックE層
中間圏・下部熱圏領域には、流星や宇宙塵によって宇宙空間から地球大気に持ち込まれた金属原子やイオンの定常層が存在する。そのうちいくつかの金属原子層(Na, K, Fe, Ca)と金属イオンでは唯一カルシウムイオン(Ca+)については、共鳴散乱を利用することにより、その密度や温度の高度分布を地上からライダー観測することが出来る。国立極地研究所は、第Ⅷ期重点研究観測「南極域から探る地球温暖化」における中層・超高層大気観測研究の一環として、レイリー/ラマンライダーに共鳴散乱ライダーを追加した高機能ライダーの開発を進めている。この共鳴散乱ライダーは、送信系に波長可変のアレキサンドライト・レーザーと第2高調波発生器を用いており、インジェクションシーダーの波長を波長計で制御することで、基本波(768-788 nm)、第2高調波(384-394 nm)のうち任意の波長のレーザーパルスを得ることが出来る。これにより中間圏界面付近に存在する金属原子(K, Fe)やオーロラ起源のイオン(N2+)に加えて、電離圏E領域に存在するCa+の共鳴散乱(393 nm)も観測可能である。このライダーを用いて、2014年8月21日14:13-19:28 UTに国立極地研究所(35.7N, 139.4E)でCa+の共鳴散乱ライダー観測を行い、高度80-130 kmのCa+密度変動(高度分解能15 m、時間分解能1分)を取得することに成功した。この晩は、情報通信研究機構(35.7N, 139.5E)のイオノゾンデ観測では、一晩中スポラディックE(Es)層が観測されており、国土地理院のGPS受信機網によって得られたTEC(Total Electron Contents)mapでは、北西-南東方向の波面構造を持った中規模伝搬性電離圏擾乱(Medium-Scale Traveling Ionospheric Disturbances; MSTIDs)が南西方向に伝搬する様子が観測された。本講演では、この共鳴散乱ライダーによるCa+密度観測の結果を報告すると共に、イオノゾンデ、GPS-TEC mapで同時観測されたEs層、MSTIDsとの関係を議論する。