日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ45] 地球科学の科学史・科学哲学・科学技術社会論

2015年5月24日(日) 11:00 〜 12:45 203 (2F)

コンビーナ:*矢島 道子(東京医科歯科大学教養部)、青木 滋之(会津大学文化研究センター)、山田 俊弘(千葉県立船橋高等学校)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、座長:山田 俊弘(千葉県立船橋高等学校)、矢島 道子(東京医科歯科大学教養部)

11:45 〜 12:00

[MZZ45-04] 近接した2つの台風の相互作用を表す「藤原の効果」の語の起こりについての推論

*山本 哲1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:藤原の効果, 台風, 藤原咲平, 北尾次郎, 第二次大戦, 米軍

近接した2つの熱帯低気圧(台風、ハリケーンなど)の相互作用を表す「藤原の効果」という語は、日本人の名前が付された数少ない気象学のエポニムのひとつである。1941年から1947年まで中央気象台長を務めた気象学者藤原咲平(1884~1950)に由来することが知られている。この語の起こりを明らかにするため、過去の文献を調査した。
2つの台風の相互作用を理論的に最初に解明したのは北尾次郎(Kitao, 1889)である。藤原は北尾の研究は参照しながらも、1920年から1930年代にかけて独自に渦の相互作用に関する多数の論文(Fujiwhara, 1923ほか)を発表した。
第二次大戦中、米軍は第三艦隊の2回に渡る被害をはじめとして、台風により度重なる被害を受けた。これを契機として、1945年6月米軍はグァムに台風追跡センターを設置し、航空機による台風偵察と警報発表を開始した。
1945年8月沖縄と日本の間を2つの台風(米国名SusanとRuth)が相互作用しながらゆっくり進み、米軍の日本占領計画、降伏文書調印を48時間遅らせることとなった。台風の相互干渉による複雑な動きは詳細に観測され解析された。この後、米国の気象関係者(気象局か軍気象部門)がこの現象を「藤原の効果」 (“Fujiwhara effect”)と呼ぶようになったと推定された。

参考文献
S. Fujiwhara, “On the growth and decay of vortical systems,” Q. J. R. Meteorol. Soc., vol. 49, pp. 75-104, 1923.
D. Kitao, “Beitraege zur Theorie der Bewegung der Erdatmosphare und der Wirbelsturme (Zweite Abhandlung),” J. Coll. Sci. Imp. Univ. Japan, vol. 2, no. 14, pp. 329-403, 1889.