09:30 〜 09:45
[SVC45-06] 阿蘇中岳2014-2015年火山灰の色調の時間変化
キーワード:阿蘇, 中岳, 火山灰, 色, 酸化, 温度
★意義★ 阿蘇中岳の第一火口では,2014年11月25日から噴火活動が活発になり,火山灰を放出する連続噴煙や,赤熱した岩塊を間欠的に吹き上げるストロンボリ式噴火が続いており(2015年2月10日現在),新鮮なマグマ試料を頻繁に入手することが可能である.本研究では火道頂部および噴煙内におけるマグマの脱水・酸化プロセスの時間変化を把握する目的で,火山灰の色調に注目した.
★観測内容★ 火山灰の細粒成分(シルトサイズあるいはそれ以下)を水簸により分離し色を土色計(Minolta SPAD-503)で測定した.さらに,一部の試料については篩分けた粗粒成分(粒径0.25-0.5mm)を瑪瑙乳鉢で約30分微粉化したものに対しても色の測定を行なった.色測定結果はCIE(1976)のL*a*b*色空間で報告する.
★結果★ 火山灰の細粒成分のa*値(赤さの示標)には系統的な経時変化が観察された(Fig.1),大局的には,観察期間の初めにa*値は大きく増加し,それ以降は振動しながら減少するように見える.具体的には,2014年11月25日から12月4日頃にかけてa*値は大幅増(0.3→6.7),12月24日にかけて大幅減(6.7→1.7),12月27日頃にかけて微増(1.7→2.5),2015年1月14日に極小(2.5→0.6),1月16日にかけて微増(0.6→1.5),1月19日にかけて徐々に低下(1.5→1.2),そして1月28日には微増(1.2→1.6)した.これに対し火山灰の粗粒成分は,細粒成分のa*値が11月25日から12月4日頃にかけて大幅に増加したこととは逆に,粗粒成分のa*値は0.94(2014年11月29日)から0.44(12月3日)へ低下した.
★考察★ 火山灰の色調は,火山灰に含まれる鉄分の空気による酸化や(宮城・東宮,2002,火山),脱水素による酸化(Miyagi et al., 1999; Geochem. J.)を反映する.噴煙は,多量の空気を取り込むと温度が低下するため,鉄分を酸化できるほど高温(300℃?)な時間は限られる.そのため,噴煙内における火山灰粒子の酸化作用は比表面積が大きな細粒成分に対して選択的に起こる.一方脱水素による酸化は空気が流入しない火道内の,破砕前のマグマにも対しても起こり得る.そのため,火山灰の細粒粒子の色調は噴煙の温度を,また粗粒粒子の色調は噴出前のマグマの酸化状態を反映すると考えらる(宮城・他,2010,火山).2014年11月末から12月上旬にかけて火山灰の細粒成分が酸化的な色調へと変化し,逆に粗粒成分は還元的な色調へと変化した観察事実は,噴煙温度の上昇と地下からの還元的なマグマ供給量の増加を反映していると解釈できる.12月中旬以降の火山灰には発泡した淡褐色ガラス粒子が比較的多量(>40%)含まれるため噴煙は高温だと期待される.ところが細粒成分のa*値は低い値を維持しているため,期待と違って噴煙温度が高温でないか,あるいは噴煙内での火山灰粒子の酸化を阻害する何らかのメカニズムの存在が示唆される.
★謝辞★ 試料採取にあたっては,気象庁および京都大学火山研究センターの協力をいただいた.
★観測内容★ 火山灰の細粒成分(シルトサイズあるいはそれ以下)を水簸により分離し色を土色計(Minolta SPAD-503)で測定した.さらに,一部の試料については篩分けた粗粒成分(粒径0.25-0.5mm)を瑪瑙乳鉢で約30分微粉化したものに対しても色の測定を行なった.色測定結果はCIE(1976)のL*a*b*色空間で報告する.
★結果★ 火山灰の細粒成分のa*値(赤さの示標)には系統的な経時変化が観察された(Fig.1),大局的には,観察期間の初めにa*値は大きく増加し,それ以降は振動しながら減少するように見える.具体的には,2014年11月25日から12月4日頃にかけてa*値は大幅増(0.3→6.7),12月24日にかけて大幅減(6.7→1.7),12月27日頃にかけて微増(1.7→2.5),2015年1月14日に極小(2.5→0.6),1月16日にかけて微増(0.6→1.5),1月19日にかけて徐々に低下(1.5→1.2),そして1月28日には微増(1.2→1.6)した.これに対し火山灰の粗粒成分は,細粒成分のa*値が11月25日から12月4日頃にかけて大幅に増加したこととは逆に,粗粒成分のa*値は0.94(2014年11月29日)から0.44(12月3日)へ低下した.
★考察★ 火山灰の色調は,火山灰に含まれる鉄分の空気による酸化や(宮城・東宮,2002,火山),脱水素による酸化(Miyagi et al., 1999; Geochem. J.)を反映する.噴煙は,多量の空気を取り込むと温度が低下するため,鉄分を酸化できるほど高温(300℃?)な時間は限られる.そのため,噴煙内における火山灰粒子の酸化作用は比表面積が大きな細粒成分に対して選択的に起こる.一方脱水素による酸化は空気が流入しない火道内の,破砕前のマグマにも対しても起こり得る.そのため,火山灰の細粒粒子の色調は噴煙の温度を,また粗粒粒子の色調は噴出前のマグマの酸化状態を反映すると考えらる(宮城・他,2010,火山).2014年11月末から12月上旬にかけて火山灰の細粒成分が酸化的な色調へと変化し,逆に粗粒成分は還元的な色調へと変化した観察事実は,噴煙温度の上昇と地下からの還元的なマグマ供給量の増加を反映していると解釈できる.12月中旬以降の火山灰には発泡した淡褐色ガラス粒子が比較的多量(>40%)含まれるため噴煙は高温だと期待される.ところが細粒成分のa*値は低い値を維持しているため,期待と違って噴煙温度が高温でないか,あるいは噴煙内での火山灰粒子の酸化を阻害する何らかのメカニズムの存在が示唆される.
★謝辞★ 試料採取にあたっては,気象庁および京都大学火山研究センターの協力をいただいた.