日本地球惑星科学連合2015年大会

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[U-06] 宇宙・太陽から地球表層までのシームレスな科学の新展開

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*松見 豊(名古屋大学太陽地球環境研究所)、草野 完也(名古屋大学太陽地球環境研究所)、石坂 丞二(名古屋大学地球水循環研究センター)、坪木 和久(名古屋大学・地球水循環研究センター)、榎並 正樹(名古屋大学 年代測定総合研究センター)

18:15 〜 19:30

[U06-P13] 過去5300年のSPE探査に向けた日本産樹木の年輪同位体分析計画

*箱崎 真隆1中村 俊夫1木村 勝彦2中塚 武3三宅 芙沙4増田 公明4 (1.名古屋大学年代測定総合研究センター、2.福島大学共生システム理工学類、3.総合地球環境学研究所、4.名古屋大学太陽地球環境研究所)

キーワード:樹木年輪, 酸素同位体比, SPE

近年、樹木年輪の同位体分析は著しい技術革新を遂げており、過去の宇宙・地球環境の解明に向けた高解像度プロキシデータの獲得が容易になりつつある。本発表では、Solar Particle Event(以下SPE)の探査範囲拡張などを見越した、過去5300年の日本産樹木試料の年輪同位体分析の計画について述べる。
著者らは、山口県宇生賀盆地のスギ埋没林が約3700-5300年前のものであることを、年輪年代法(年輪幅)とC-14年代法によって明らかにした。しかし、年輪年代法(年輪幅)による暦年代の確定には成功しなかった。日本を含む北東アジア地域では3000年前以前の木材試料が非常に少なく、宇生賀埋没林の年輪情報は古環境復元のプロキシとして地域的にも年代的にも極めて貴重であった。
著者らは、この宇生賀埋没林試料の暦年代を確定するため、近年、日本で飛躍的な発展を遂げている年輪酸素同位体比に基づく年輪年代法の利用を計画している。年輪中の酸素同位体比は年輪幅に比べて樹木の生理・生態的要素に左右されにくく、生理特性の異なる樹種間や生育環境の異なる同種個体間でも、年輪年代法に基づく年代決定を可能にする。共著者の中塚、木村らは全国各地の埋没林、遺跡出土木材を利用して、すでに4300年前まで暦年代を決定できる年輪酸素同位体比の標準年輪曲線を構築している。宇生賀埋没林の試料はこの標準年輪曲線と約600年のオーバラップがあり、十分に暦年代を確定できる可能性をもっている。
暦年代が確定できた宇生賀埋没林の試料は、順次、1年輪単位のC-14濃度測定に用いる。樹木年輪のC-14濃度は大気C-14濃度を強く反映しているため、過去の太陽活動の変化を復元する最良のプロキシである。本研究では1年輪単位という高解像度分析によって、SPEのような短期的な激変を捉え、その頻度や周期性の有無についても検討していく予定である。