日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)

18:15 〜 19:30

[SVC45-P35] 水準測量によって測定された桜島火山の地盤上下変動(2013年11月~2014年11月)

*山本 圭吾1吉川 慎2松島 健3大倉 敬宏2横尾 亮彦2井上 寛之2三島 壮智2内田 和也3園田 忠臣1関 健次郎1小松 信太郎1堀田 耕平2藤田 詩織3 (1.京都大学防災研究所、2.京都大学大学院理学研究科、3.九州大学大学院理学研究院)

キーワード:桜島火山, 姶良カルデラ, 精密水準測量, 地盤上下変動

桜島火山では,2006年6月から始まった昭和火口における噴火活動が近年激化し,2010年から2013年には年間に800回を超える爆発的噴火が発生,2014年も年間の爆発回数が500回近くになるなど活発な状態が続いている.平成26年度より「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」における課題「桜島火山におけるマグマ活動発展過程の研究」が開始された.この一環として, 2014年11月に桜島火山において一等水準測量の繰返し観測を実施した.本講演では,この測量結果について報告し,最新の桜島火山の活動に伴う地盤上下変動について議論する.
2014年11月に水準測量を実施した路線は,海岸線に沿って桜島を一周する桜島一周道路路線,西部山腹のハルタ山登山路線及び北部山腹の北岳路線であり,総延長は約56 kmである.これらの路線を,大学合同で3測量班を構成し,2014年11月5日~20日の期間において測量に当たった.測量方法は,各水準点間の往復測量で,その往復差は一等水準測量の許容誤差を満たすようにした.実際の測量における誤差は,1 km当りの平均自乗誤差が桜島一周道路路線,ハルタ山登山路線,北岳路線においてそれぞれ±0.32,±0.31,±0.25 mm/km,水準環閉塞誤差は桜島一周道路路線およびハルタ山登山路線において時計回りにそれぞれ2.3 mm(許容誤差12.1 mm),2.2 mm(許容誤差7.6 mm)であり高精度の一等水準測量であった.
これまで行われてきた水準測量と同様に,桜島西岸の水準点BM.S.17を不動点(基準)とし,計算された各水準点における比高値を,平成21年度~25年度に実施された前計画「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の一環として2013年11月に行われた測量結果(山本・他,2014)と比較した.
この結果から,2013年11月から2014年11月の約1年間における桜島北部付近の地盤上下変動量は2 mm以内であることが確認された.桜島北部の地盤においては,1993年頃からの山頂噴火活動の静穏化に伴い再開した姶良カルデラ地下のマグマ溜りにおけるマグマの貯留(江頭・他,1997)を反映すると考えられる地盤隆起が観測されてきた.2012年11月・12月~2013年11月の約1年間に桜島北部において測定された最大の隆起量は4.1 mmと,隆起速度が姶良カルデラ増圧期に平均的に見られる隆起速度に比べて半分程度であったが,2013年11月~2014年11月の1年間ではさらに小さくなり,地盤隆起がほぼ停滞した状態となっている.姶良カルデラ下のマグマ溜りにおける増圧傾向(マグマの貯留)は,この1年間停滞している可能性がある.一方で,桜島中央部に近いハルタ山登山路線および北岳路線の水準点においては,最大で7.0 mmにおよぶ地盤の沈降が確認された.桜島中央部付近における地盤沈降は,2007年10月-12月~2009年11月,2010年11月~2011年11月および2012年11月・12月~2013年11月の期間においても見られている.これらは,桜島中央部直下のマグマ溜りにおける減圧,すなわちマグマの放出量が供給量を上まったことを示唆しており,近年の昭和火口における活発な噴火活動を反映しているものと考えられる.