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[U06-P10] 日本産樹木年輪の14C年代に基づく暦年較正データとIntCal13との比較研究
キーワード:放射性炭素年代, 樹木年輪年代, 暦年代, 太陽活動, 太平洋高気圧, 熱帯収束帯
最近では,さまざまな年代測定資料について得られた14C年代について,14C年代から暦年代への較正(換算)は不可欠なものとなっている。暦年代較正には,資料を産した炭素リザーバに応じていくつかの較正データが使い分けられる。北半球中緯度に位置する日本産の資料の14C年代は,一般に世界標準の暦年代較正データIntCal13(Reimer et al. 2013)を用いて較正される。また,南半球産の試料の14C年代は,南半球の暦年代較正データSHCal13(Hogg et al. 2013)を用いて較正される。IntCal13は,主として北米や欧州産樹木の年輪を用いて作成されたものである。SHCal13は,ニュージーランドやタスマニア島産樹木の年輪を用いて作成されたものである。一方で,国立歴史民俗博物館,名古屋大学,山形大学では,さまざまな日本産の樹木について年輪年代と14C年代の関係を調査し,IntCal13との一致度を比較検討してきた。これまでに日本の研究グループにより調べられた年輪試料の暦年代範囲は,現在から3000年前までのうち,飛び飛びで2000年間程度の範囲であるが,14C測定の誤差範囲内でほとんどの暦年代範囲でIntCal13データとほぼ調和的である。しかし,一部の範囲(紀元1世紀から3世紀)では顕著なズレが生じていることが明らかになった(尾嵜2009)。特に,この顕著なズレの時期は弥生後期から古墳中期に含まれている。すなわち,弥生後期から古墳中期にかけては,IntCal13を較正に使うかぎり,14C年代測定法では日本産資料の暦年代を正しく推定することができないことになり,日本の考古学研究,歴史学研究に大きく支障をきたすことになる。さらに名古屋大学では,年代測定総合研究センターと太陽地球環境研究所との共同で,奈良県産の杉巨木,屋久島産の屋久杉巨木を用いて,過去2000年間の暦年較正データの検討を進めているところであるが,この暦年代区間の屋久杉年輪について,IntCal13に比べて14C年代が顕著に古い方にずれる傾向を見いだしている。
実際,宮原ほか(2005),三宅ほか(2012)や吉光ほか(2012)は,奈良県室生寺から採取されたスギ材からAD1617-AD1739の年輪を,また鹿児島県屋久島で伐採された2本の屋久杉のうち,小型屋久杉からAD1413-AD1615及び大型屋久杉からAD72-AD1072の年輪を選別し,飛び飛びではあるが年輪を1年輪ごとに分割して14C濃度を測定した。Miyahara et al. (2006) や三宅ほか(2012)はこれらの年輪データをもとに,過去の太陽活動の強弱変動の周期を解析している。一方,これらの日本産樹木年輪の14C年代に着目すると,日本産樹木の14C年代は,IntCal13が示す14C年代に対して,AD72-AD1072の年輪で+25±30 14C年,AD1413-AD1615の年輪で+16±22 14C年,AD1617-AD1739の年輪で+5±24 14C年ほど古い年代側へのずれが見られた。すなわち,日本産樹木の14C年代とIntCal13の14C年代のずれは,14C年代のばらつきの範囲内ではあるが,日本産の樹木の方がIntCal13に比べて古い14C年代を示す傾向にあることが明らかである。さらに,同じ年輪年代について注意深く調査すると,日本産樹木の14C年代は,IntCal13の14C年代とSHCal13の14C年代の間を揺れ動いており,SHCal13の14C年代を超えて古い年代を示すことはない。また,韓国産樹木年輪AD1250-AD1650及びAD1650-AD1850では,IntCal13よりも平均的に+17±35 14C年,+6±13 14C年古い年代を示すことが明らかにされており(Hong et al.2013),日本産樹木と調和的な値を示している。これらのずれは,14C年代較正の正確度にかかわる大問題であり,今後,高精度のデータを蓄積し詳細な検討が必要である。
実際,宮原ほか(2005),三宅ほか(2012)や吉光ほか(2012)は,奈良県室生寺から採取されたスギ材からAD1617-AD1739の年輪を,また鹿児島県屋久島で伐採された2本の屋久杉のうち,小型屋久杉からAD1413-AD1615及び大型屋久杉からAD72-AD1072の年輪を選別し,飛び飛びではあるが年輪を1年輪ごとに分割して14C濃度を測定した。Miyahara et al. (2006) や三宅ほか(2012)はこれらの年輪データをもとに,過去の太陽活動の強弱変動の周期を解析している。一方,これらの日本産樹木年輪の14C年代に着目すると,日本産樹木の14C年代は,IntCal13が示す14C年代に対して,AD72-AD1072の年輪で+25±30 14C年,AD1413-AD1615の年輪で+16±22 14C年,AD1617-AD1739の年輪で+5±24 14C年ほど古い年代側へのずれが見られた。すなわち,日本産樹木の14C年代とIntCal13の14C年代のずれは,14C年代のばらつきの範囲内ではあるが,日本産の樹木の方がIntCal13に比べて古い14C年代を示す傾向にあることが明らかである。さらに,同じ年輪年代について注意深く調査すると,日本産樹木の14C年代は,IntCal13の14C年代とSHCal13の14C年代の間を揺れ動いており,SHCal13の14C年代を超えて古い年代を示すことはない。また,韓国産樹木年輪AD1250-AD1650及びAD1650-AD1850では,IntCal13よりも平均的に+17±35 14C年,+6±13 14C年古い年代を示すことが明らかにされており(Hong et al.2013),日本産樹木と調和的な値を示している。これらのずれは,14C年代較正の正確度にかかわる大問題であり,今後,高精度のデータを蓄積し詳細な検討が必要である。