16:15 〜 16:30
[G02-05] 防災教育教材:減災アクションカードゲームの開発と評価
キーワード:減災, とっさの判断, ユニバーサルデザイン, カードゲーム, 防災教育教材
1.はじめに
防災教育のツールを大別すると、防災に関する知識を与えることを目的とする「答えがある」タイプと、防災に関する問題提起をし、参加者自身が考えることを目的とする「答えがない」タイプがある。学校などで行われている避難訓練や、「防災カルタ」などは前者に分類され、「クロスロード」や「HUG」などは後者に分類されると考えられる。「答えがない」タイプの防災教育ツールは、参加者が自発的に防災について考えることができるため教育面で求められているが、内容が難しく対象年齢が高い傾向にある。そこで、小中学生でも参加できる「答えのない」タイプの防災教育のツールとして「減災アクションカードゲーム」を開発し、アンケートによる評価を行った。
2.減災アクションカードゲーム
ルールは簡単で、かるたのルールに似ている。ただし、カードに文字はなく、災害時の「とっさの」行動を表す絵(ピクトグラム)のみが描かれている。また、一人だけでなく複数人がカードを取ることが出来る。ゲームの流れは以下の通りである。1)参加者は2~7人のグループで輪を作り、カードを輪の中にばらばらに配置する。この際、各グループにファシリテーターが1人就く。2)問題文(例えば、「あなたは今、学校の教室にいます。地震で建物が大きく揺れています。さあ、どうする?」)が読まれ、参加者は3 秒以内にカードを取る。3)カードを最初にとった人から順番に、カードを選んだ理由を30秒以内に説明する。4)説明に全員が賛同すれば得点になり、意見が分かれた場合は議論する。議論になった場合はファシリテーターが得点の判断をする。5)カードを元に戻す。6)ファシリテーターが問題のキーポイントを説明する。2-6を繰り返す。7)防災ミニリーダー認定式を行う。グループ内で積極的に参加し獲得得点が高かった参加者に、今後も防災をリードしてもらいたい思いを込め、防災ミニリーダーの称号を与える。
3.ゲームの特徴
減災アクションカードゲームは以下の大きな特徴がある。(1)災害発生時の「とっさの」判断を鍛えることができる、(2)災害時に遭遇する可能性がある危険を他人との議論を通して認識し共有することができる、(3)ユニバーサルデザインとすることで国や世代を超えて防災学習ができる、である。
(1)については、問題が読まれてからカードを取る時間を3秒に限定することで、参加者は災害発生時に「とっさに」取る行動を意識することになる。例えば地震であれば、地震発生直前(緊急地震速報の受信)、地震発生中(地面が揺れている)、地震発生直後(揺れが収まった)の各ターニングポイントでの「とっさの」行動を考えることになる。このカードゲームを繰り返し行うことで、様々な状況での「とっさの」判断を身に付けることが期待される。
(2)については、問題やカードはあえて抽象化して作成しており、参加者の想定した状況次第で回答が何通りにもなる。したがって、参加者が様々な状況を想像することができ、ひとつの問題から複数の危険を参加者全員で共有することができる。
(3)については、カードに文字はなく、災害時の「とっさの」行動を表すピクトグラムのみが描かれている。そのため、ゲームの問題と議論における注意点を、現地の言葉、環境に合わせるだけでどの地域でも適用できる。現に日本への留学生を対象に英語版のゲームの実施を複数回実施しており、カードのピクトグラムの意味も正しく理解されたことが確認できている。
4.ゲームの評価
本ゲームは2014年7月から実施し、2014年度には小中学生から高齢者までの幅広い年代を対象に宮城県内で12回、宮城県外で2回行った。各イベントでは参加者に対してアンケートを行い、ゲームの評価を行った。アンケートはゲームへの関心度、魅力度、参加者の意識などを定量的に聞いている。どのイベントでも8割以上の参加者から「楽しい」、「わかりやすい」、「またやりたい」との回答を得た。同様に「災害から身を守る方法をもっと知りたい」という回答も9割近い回答を得ている。したがって、ゲーム性と防災学習を兼ね備えた本教材の評価は高いと考えられる。
5.今後の展望
本ゲームでは、1グループにつき1名のファシリテーターが必要になる。そのため、多くの人がファシリテーターを務めることができるマニュアルが必要不可欠であり、現在作成している。ファシリテーターは高校生でも務めることができるため、今後は小中学生に高校生が教える新たな防災教育への広がりも検討している。
また、評価の点に関しても現時点ではゲーム自体の評価のみに留まっている。そのため、「ゲームを通して参加者が何を学ぶことが出来たのか」など、ゲームによる効果の測定も実施していきたい。
謝辞:本調査は東北大学「グローバル安全学トップリーダー育成プログラム」の支援を受けて実施いたしました。
防災教育のツールを大別すると、防災に関する知識を与えることを目的とする「答えがある」タイプと、防災に関する問題提起をし、参加者自身が考えることを目的とする「答えがない」タイプがある。学校などで行われている避難訓練や、「防災カルタ」などは前者に分類され、「クロスロード」や「HUG」などは後者に分類されると考えられる。「答えがない」タイプの防災教育ツールは、参加者が自発的に防災について考えることができるため教育面で求められているが、内容が難しく対象年齢が高い傾向にある。そこで、小中学生でも参加できる「答えのない」タイプの防災教育のツールとして「減災アクションカードゲーム」を開発し、アンケートによる評価を行った。
2.減災アクションカードゲーム
ルールは簡単で、かるたのルールに似ている。ただし、カードに文字はなく、災害時の「とっさの」行動を表す絵(ピクトグラム)のみが描かれている。また、一人だけでなく複数人がカードを取ることが出来る。ゲームの流れは以下の通りである。1)参加者は2~7人のグループで輪を作り、カードを輪の中にばらばらに配置する。この際、各グループにファシリテーターが1人就く。2)問題文(例えば、「あなたは今、学校の教室にいます。地震で建物が大きく揺れています。さあ、どうする?」)が読まれ、参加者は3 秒以内にカードを取る。3)カードを最初にとった人から順番に、カードを選んだ理由を30秒以内に説明する。4)説明に全員が賛同すれば得点になり、意見が分かれた場合は議論する。議論になった場合はファシリテーターが得点の判断をする。5)カードを元に戻す。6)ファシリテーターが問題のキーポイントを説明する。2-6を繰り返す。7)防災ミニリーダー認定式を行う。グループ内で積極的に参加し獲得得点が高かった参加者に、今後も防災をリードしてもらいたい思いを込め、防災ミニリーダーの称号を与える。
3.ゲームの特徴
減災アクションカードゲームは以下の大きな特徴がある。(1)災害発生時の「とっさの」判断を鍛えることができる、(2)災害時に遭遇する可能性がある危険を他人との議論を通して認識し共有することができる、(3)ユニバーサルデザインとすることで国や世代を超えて防災学習ができる、である。
(1)については、問題が読まれてからカードを取る時間を3秒に限定することで、参加者は災害発生時に「とっさに」取る行動を意識することになる。例えば地震であれば、地震発生直前(緊急地震速報の受信)、地震発生中(地面が揺れている)、地震発生直後(揺れが収まった)の各ターニングポイントでの「とっさの」行動を考えることになる。このカードゲームを繰り返し行うことで、様々な状況での「とっさの」判断を身に付けることが期待される。
(2)については、問題やカードはあえて抽象化して作成しており、参加者の想定した状況次第で回答が何通りにもなる。したがって、参加者が様々な状況を想像することができ、ひとつの問題から複数の危険を参加者全員で共有することができる。
(3)については、カードに文字はなく、災害時の「とっさの」行動を表すピクトグラムのみが描かれている。そのため、ゲームの問題と議論における注意点を、現地の言葉、環境に合わせるだけでどの地域でも適用できる。現に日本への留学生を対象に英語版のゲームの実施を複数回実施しており、カードのピクトグラムの意味も正しく理解されたことが確認できている。
4.ゲームの評価
本ゲームは2014年7月から実施し、2014年度には小中学生から高齢者までの幅広い年代を対象に宮城県内で12回、宮城県外で2回行った。各イベントでは参加者に対してアンケートを行い、ゲームの評価を行った。アンケートはゲームへの関心度、魅力度、参加者の意識などを定量的に聞いている。どのイベントでも8割以上の参加者から「楽しい」、「わかりやすい」、「またやりたい」との回答を得た。同様に「災害から身を守る方法をもっと知りたい」という回答も9割近い回答を得ている。したがって、ゲーム性と防災学習を兼ね備えた本教材の評価は高いと考えられる。
5.今後の展望
本ゲームでは、1グループにつき1名のファシリテーターが必要になる。そのため、多くの人がファシリテーターを務めることができるマニュアルが必要不可欠であり、現在作成している。ファシリテーターは高校生でも務めることができるため、今後は小中学生に高校生が教える新たな防災教育への広がりも検討している。
また、評価の点に関しても現時点ではゲーム自体の評価のみに留まっている。そのため、「ゲームを通して参加者が何を学ぶことが出来たのか」など、ゲームによる効果の測定も実施していきたい。
謝辞:本調査は東北大学「グローバル安全学トップリーダー育成プログラム」の支援を受けて実施いたしました。