18:15 〜 19:30
[PPS05-P03] 火星探査衛星Mars Express搭載赤外フーリエ分光計を用いた火星大気中ダストの地方時依存性の研究
本研究ではMars Express (MEx)搭載赤外フーリエ分光計 (PFS) を用いて、火星年(MY)27から30までの期間においてダストの地方時依存性を調べた。
ダストは火星大気中において、太陽放射を吸収する主要な熱源であり、大気中の温度構造及び全球的な大気循環に大きな影響を与える。つまり、地球大気での水蒸気、雲、エアロゾルの役割を火星大気ではダストが担っているのである。そのため、火星大気を理解するためにダストの理解は必要不可欠である。これまでMars Global Surveyer 探査機などによってダストの全球的な季節変動などが明らかになってきた(例、Smith et al., 2004)。近年では、ダストの鉛直構造変動がMars Reconnaissance Orbiter 探査機によって明らかになるなど、注目を浴びている(Heavens et al., 2014)。しかし、これまでの探査機はその軌道が特定の地方時に限定されることが多く、ダストの地方時依存性の研究はとても少ない。そもそも地方時依存性の有無すら自明ではない。
数少ない先行研究では、Formisano et al. (2001)、Martin and Tamppari. (2007)が挙げられる。前者では、Mariner 9 搭載 IRIS を用いて、Local Time (LT)7.5から12.5に至るまでのダストの光学的厚さの値がおよそ1.0から0.4付近まで下がり、その後 LT12.5から17.5までの間値は上昇し、再びおよそ1.0に戻る傾向が報告されていた。Formisano et al. (2001)では、LT12.5以降に値が上昇する原因はダストデビルにあるのではないかと推測した。Martin and Tamppari. (2007)では、Viking 搭載 IRTM を用いて、LT10から16の間にダストの光学的厚さの値が午後に向かって徐々に減少していく傾向が明らかになった。さらに、ダストデビルが頻繁に発生する場所とダストの光学的厚さの値との明白な関係性はないと主張している。
私たちは、Mars Express 搭載PFSのデータを解析した。また、ダストの光学的厚さのデータは、PFSチームによって9μm波長帯からリトリーバル・提供されている。(Grassi et al., 2005)。Mars Express は、全球的に火星の季節(Ls)・地方時を広く網羅しており、その変動を調べることに適している。本発表では、火星年(MY)27から30までの期間のデータを解析した。ダストの定常的な地方時依存性を調べるため、グローバルダストストームなどの突発的な現象に関連したデータ(MY28のLs260°から360°まで)はあらかじめ除外することとした。
まず始めに、先行研究との比較検証を行った。同じ季節や場所でPFSのデータを選定し、先行研究と比較すると、LT13から 20にかけてダストの光学的厚さの値が上昇する傾向がPFSでもみられ、Formisano et al. (2001)の結果と合致する。次に、PFSのMY3年分のデータを用いて、より広い地方時の変動について調べた。季節変動と切り分けるため、ダストの光学的厚さの変動が少ない季節(Ls0°から180°まで)に限定し、さらにLsを20°毎に区切ることで各季節毎の地方時依存性を調べた。また、局所的なダストストームが頻繁に発生する極域(北緯、南緯それぞれ60°以上)のデータも除いて解析を行った。その結果、LT9から16の間でダストの光学的厚さが減少する傾向を示した季節が存在したが、そのような傾向を示さない季節もあった。ここでえられた結果を検証するため、より高いSN比をもつデータの選定を行うとともに、他衛星との同時観測データを解析することでより詳しく地方時依存性について検証を進める予定である。
ダストは火星大気中において、太陽放射を吸収する主要な熱源であり、大気中の温度構造及び全球的な大気循環に大きな影響を与える。つまり、地球大気での水蒸気、雲、エアロゾルの役割を火星大気ではダストが担っているのである。そのため、火星大気を理解するためにダストの理解は必要不可欠である。これまでMars Global Surveyer 探査機などによってダストの全球的な季節変動などが明らかになってきた(例、Smith et al., 2004)。近年では、ダストの鉛直構造変動がMars Reconnaissance Orbiter 探査機によって明らかになるなど、注目を浴びている(Heavens et al., 2014)。しかし、これまでの探査機はその軌道が特定の地方時に限定されることが多く、ダストの地方時依存性の研究はとても少ない。そもそも地方時依存性の有無すら自明ではない。
数少ない先行研究では、Formisano et al. (2001)、Martin and Tamppari. (2007)が挙げられる。前者では、Mariner 9 搭載 IRIS を用いて、Local Time (LT)7.5から12.5に至るまでのダストの光学的厚さの値がおよそ1.0から0.4付近まで下がり、その後 LT12.5から17.5までの間値は上昇し、再びおよそ1.0に戻る傾向が報告されていた。Formisano et al. (2001)では、LT12.5以降に値が上昇する原因はダストデビルにあるのではないかと推測した。Martin and Tamppari. (2007)では、Viking 搭載 IRTM を用いて、LT10から16の間にダストの光学的厚さの値が午後に向かって徐々に減少していく傾向が明らかになった。さらに、ダストデビルが頻繁に発生する場所とダストの光学的厚さの値との明白な関係性はないと主張している。
私たちは、Mars Express 搭載PFSのデータを解析した。また、ダストの光学的厚さのデータは、PFSチームによって9μm波長帯からリトリーバル・提供されている。(Grassi et al., 2005)。Mars Express は、全球的に火星の季節(Ls)・地方時を広く網羅しており、その変動を調べることに適している。本発表では、火星年(MY)27から30までの期間のデータを解析した。ダストの定常的な地方時依存性を調べるため、グローバルダストストームなどの突発的な現象に関連したデータ(MY28のLs260°から360°まで)はあらかじめ除外することとした。
まず始めに、先行研究との比較検証を行った。同じ季節や場所でPFSのデータを選定し、先行研究と比較すると、LT13から 20にかけてダストの光学的厚さの値が上昇する傾向がPFSでもみられ、Formisano et al. (2001)の結果と合致する。次に、PFSのMY3年分のデータを用いて、より広い地方時の変動について調べた。季節変動と切り分けるため、ダストの光学的厚さの変動が少ない季節(Ls0°から180°まで)に限定し、さらにLsを20°毎に区切ることで各季節毎の地方時依存性を調べた。また、局所的なダストストームが頻繁に発生する極域(北緯、南緯それぞれ60°以上)のデータも除いて解析を行った。その結果、LT9から16の間でダストの光学的厚さが減少する傾向を示した季節が存在したが、そのような傾向を示さない季節もあった。ここでえられた結果を検証するため、より高いSN比をもつデータの選定を行うとともに、他衛星との同時観測データを解析することでより詳しく地方時依存性について検証を進める予定である。