日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM26] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2015年5月24日(日) 11:00 〜 12:45 302 (3F)

コンビーナ:*梅田 隆行(名古屋大学 太陽地球環境研究所)、天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、成行 泰裕(富山大学人間発達科学部)、杉山 徹(独立行政法人海洋研究開発機構 地球情報基盤センター)、中村 匡(福井県立大学)、座長:中村 匡(福井県立大学)、小路 真史(名古屋大学太陽地球環境研究所)

12:30 〜 12:45

[PEM26-14] デカメータ電波パルスの観測に基づく我が銀河系中心部ブラックホール・バイナリ―群――電離層効果を考慮した位置決定(その2)

*大家 寛1 (1.東北大学)

キーワード:ブラック ホール, 銀河系中心, デカメートル電波, 干渉計

1.序
わが銀河系中心部より到来するデカメータ電波パルスの解析を通じてカー・ブラックホールがバイナリ―を形成していることを結論してきた。前回に引き続き東北大学・長距離基線デカメータ電波干渉計による2014年の観測に基づき、Gaa-Gabバイナリーシステムの他3systemのバイナリーの存在を明らかにし、3層電離層モデルを採用して2分角以内の精度でSgrA*を中心に位置することを明らかにした。
2.観測システムと観測実施期間
観測は東北大学長距離基線デカメータ電波干渉計を用いて行われた。干渉計システムはYoneyama, Zao、およびKawatabiの3局よりなり、最長83km,最短44kmの3基線が設定される。22.816MHzにて帯域1kHで観測された受信信号は仙台局にテレメータ伝送される。各信号は帯域幅100Hzの狭帯域3チャンネルに分割され、各々サンプリング率6kHzでAD変換された後干渉データとして処理される。観測期間は銀河中心部が出現する以前の1月下旬から銀河中心部観測の条件が整う4月10日にわたる期間にて実施された。
3.データ解析
データ解析は第一段階として、銀河系中心部が、観測点地方時、午前1時半より観測可能となる3月18,19,及び20日、3観測日について行った。解析に際しては、電離層を3層モデルで近似し、その方位を起点に実際の電離層効果による銀河中心の方位(RA ,Dec)を補正しつつ追跡する方式をとった。電離層パラメターは各観測日ごとに対応し、国分寺観測点におけるfoF2の15分値を基礎に3次補間関数を用いて1分値として使用した。
方位決定には、探索する方位に対応して算出される基準干渉計フリンジと、観測データに内在する干渉計フリンジとの相関を求める方法によっている。即ち、検出すべき方位を掃引しつつ結果として得られるパルスの波形の整形度とパルスレベルが最大となる点を探査する方式である。
 4. 結果 
4.1 方位  観測周波数22.186MHzにおいては、電離層による銀河中心部の方位角の偏向は、仰角の低い時刻にはかなり顕著で、24arc min近くのずれを示し、南中時にも3 arc min程度の差のあることが3層モデル電離層から示された。解析の結果、モデル電離層効果のもとで算出されるSgA*の方位と実際の電離層効果のもとで決定された各Binary方位との補正値が得られ、4組のブラック・ホールバイナリ―、Gaa-Gab, Gac-Gad, Gae-Gad,およびGag-Gahに対し以下とうりとなっている。結果の記述に当たり、Gaa(RA(0.01,0.53);Dec(-0.45,0.63))―Gab(RA(0,109);Dec(-1.53,1.33))とするフォーマットを用いるが、この表現の意味するところはバイナリ―の片方Gaa場合、方位の補正値は赤経(RA)が平均値0.01arc min、 標準偏差0.53 arc min赤緯(Dec)が平均値-0.45 arc min 標準偏差0.63 arc minであることを示す。続いてバイナリ―のパートナーGab の記述が同じフォーマットで示される。同じフォーマットで以下、Gac(RA(1.34,1.89);Dec(-0.30,0.0.41))―Gad(RA(-0.28,0.40);Dec(-1.53,1.33));Gae(RA(0, 0);Dec(0, 0))―Gaf(RA(-0.47,0.67);Dec(-1.09,1.54)); Gag(RA(-0.14,0.70);Dec(0.81,1.08))―Gah(RA(-0.681.22);Dec(0.27,0.54))となっている。以上の結果はGab の赤緯 の場合の一例を例外として、すべての結果はの平均値が標準偏差の1.89 arc min以内にありこれらのBHバイナリーからのデカメータ電波パルスがSgrA*に源を持っていることを示唆している。すなわちすべてのパルス源は赤経17h45m40s, 赤緯-29o00’28”に対し約2 arc min以内で同じ方位に位置することが認められる。
4.2 導出されるBHパラメタ―
BHバイナリ―の公転周期はDoppler効果による周波数変調から得られ、また、変調度からは視線方向に投影された軌道運動速度が求められる。公転には円軌道・ケプラー運動を仮定しBHバイナリ―の質量を求めた。この場合観測されるパルス周期がカーブラックホールのスピン周期と仮定し、パルス周期の比が質量比となることによりそれぞれの質量を得ている。軌道傾斜角が不明のため、質量の制限値を1巨大BHの想定で恒星運動より導出された値(たとえばEizenhauer, 2004)に準拠している。
5. 結論
今回解析した4組のBHバイナリ―からの電波源からのパルスはその源がパートナーBHと軌道運動することを示し、公転周期はそれぞれGaa-Gab系2050sec、Gac-Gad系1024sec, Gae-Gaf系1200sec Gag-Gah系325sec を示し、質量範囲は、1万太陽質を単位として、Gaa ,130-132;Gab,104-107;Gac,82-84;Gad, 57-60;Gae,15-17;Gaf,11-14;Gag,17-18;及びGah,14-15 となる。これらの質量をもって公転するBHバイナリ―はその位置が2arc min の精度でSgrA*にあると結論される。