日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

2015年5月28日(木) 11:00 〜 12:30 304 (3F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:及川 輝樹(独)産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、村瀬 雅之(日本大学文理学部地球システム科学科)

11:00 〜 11:15

[SVC45-10] 映像と現地調査に基づく御嶽山2014年噴火の推移

*及川 輝樹1吉本 充宏2中田 節也3前野 深3石塚 吉浩1竹下 欣宏4小森 次郎5嶋野 岳人6石峯 康浩7 (1.産総研 活断層・火山研究部門、2.山梨県富士山科学研究所、3.東京大学地震研究所、4.信州大学教育学部、5.帝京平成大現代ライフ学部、6.常葉大学社会環境学部、7.国立保健医療科学院健康危機管理研究部)

キーワード:御嶽山, 御嶽火山, 噴火推移, 映像, 聞き取り調査

御嶽山2014年噴火の推移を,山頂部を含めた現地調査,山小屋関係者等への聞き取り調査とあわせて噴火時撮影された写真,ビデオなどの映像資料とつきあわせて復元した.
2014年噴火前の,前兆としては,地元の山岳ガイド,山小屋関係者などが,気が付くような噴気活動の増大や異常な火山ガス臭などは認められなかった.噴火は,11時52分頃に大きな音もなく発生した.噴火は,最初は地獄谷内の火口から発生し,その後東側の火口が開いた.噴火発生と同時に低温の火砕流(火砕サージ)が発生し,火口から南側(地獄谷方面)へ約2㎞,北西側(兵衛谷方面)へ約1.5㎞,東側(八丁たるみ方面)へ約1㎞,北側(一ノ池方面)へ約600m流れた.映像から火砕流は複数回発生したことが明らかである.火砕流の温度は,証言などから山頂付近では100℃は超えないと考えられるが,場所により変化がありそうである.火砕流の発生と長径50㎝を超える噴石が山頂部に降りそそいだが,12:20頃には噴石もだいぶ少なくなっており,徐々に量が少なくなっていった.しかし,12:35ごろでも火口から北側約1㎞の二ノ池まで達する噴石が落ちていた.火砕流堆積物を含め初期の噴出物は水滴などを含まない状態であったが,少なくとも12:20頃から泥雨の降下が始まった.気象庁によるとそのころ噴煙高度が最大となった.その後,16:00頃から地獄谷の火口から直接溢れ出したラハールが流れ下っているのが報道の写真から読み取れる.
このような噴火の推移過程から、次のような噴火推移モデルが考えられる.1)熱水溜まりから多量のフラッシュ蒸気(減圧沸騰した蒸気など)が発生・爆発,2)その爆発により周囲の母岩を破砕し,それを多量に巻きこんだ水蒸気まじりの噴煙が火砕流として流下,3)重い岩片を落下させ密度が軽くなった噴煙が上昇,膨張し冷えた噴煙の中で水蒸気が水滴となり降下,4)最後にフラッシュ蒸気になりきらなかった熱水が火口から溢流.
山頂調査は,火山噴火予知連絡会御嶽山総合観測班地質チームの山頂調査チームが2014年11月8日実施した.山頂部での噴出物の厚さは最大35 cmであったが,噴火直後は局所的に80㎝程度の厚さに達したところもあったようである.噴出物は不淘汰で数㎝大の礫を多く含む,ゆるく成層した粘土質火山灰層からなり,厚さは側方に大きく変化する.これらの特徴から,山頂部の噴出物は火砕流として運搬定置してものが大部分であると判断される.確認できた噴石は,数十cm大のものが多数あり,30–20 cm大の噴石は火口から北方向に1.3 kmまで到達していた.なお,調査中は,火口からは白色噴煙が勢い良く放出されていたが,火山ガス臭はきつくなくカラスが山頂付近を飛んでいた.噴煙から酸性の水滴が五月雨的に落ちていたこと,地獄谷下流の濁川の流れが泥まじりの灰色であったことなどから,噴火後一ヶ月以上がたっても,火口から熱水が溢れ出していたと考えられる.