16:45 〜 17:00
[SCG58-13] 津軽錦石の組織観察と成因について
キーワード:碧玉, 錦石, カルセドニー, 組織
はじめに
にしき石は碧玉の一種で、様々な色糸で織り出された絹織物のように色鮮やかな色彩を呈し、磨くと美しい光沢を示す。にしき石は研磨加工され、装身具として広く愛用されている。青森県津軽地方は,にしき石の産地として有名である。にしき石の鮮やかな色彩は、含まれる鉄鉱物の種類によると報告されている。
目的
にしき石の多くは海岸の礫から採取され、産状についての研究は少ない。多くの産地では露頭が発見されていないため賦存状態が明らかになっていない。そこで本研究ではにしき石の組織観察および組成分析によって形成過程を推定することを目的として研究を行った。
試料
本研究では、青森県北津軽郡中泊町青岩および、同県東津軽郡外ヶ浜町竜飛崎で採取されたにしき石を観察試料として用いた。両地域ともに、東北日本内帯に広く分布する緑色凝灰岩地域に属し、新第三系の岩石からなる。にしき石を含む母岩は輝石安山岩ならびに同質の火山角礫岩で、両産地とも多くの石英脈、玉髄質石英ならびに蛋白石脈等が見られる。採取したにしき石の主要な構成鉱物は、石英ならびに後述する鉄鉱物、そして,少量の重晶石、燐灰石、アンケル石などを伴う。
手法
岩石ならびに鉱物組織の観察には偏光顕微鏡ならびに走査型電子顕微鏡(日本電子社製,JSM-7001F)を用い、さらに、エネルギー分散型X線分析装置(OXFORD社製,INCA system)により鉱物の化学組成分析を行った。
結果
にしき石は主に様々な形態ならび大きさの石英粒子から構成されている。これら石英粒子の多くは、繊維状組織を呈する約0.1mmの大きさの球晶や、一般に"マイクロ石英"と呼ばれる約0.05mmの微粒子である。一般的なカルセドニー(玉髄)の組織に比べて、にしき石を構成する球晶はひとつひとつの繊維が粗い。また、めのうのような縞状組織を示す部分は少ない。にしき石の鮮やかな色の原因となる鉄鉱物としては、赤鉄鉱(赤色),セラドン石(緑色)、針鉄鉱(黄色)、菱鉄鉱(黄色)、黄鉄鉱(褐色)などが認められた。多くの鉄鉱物は、繊維状組織の隙間に微細な粒子として、あるいは、球晶間隙の充填物として産出する。これらの鉄鉱物の形態は、針状もしくは粒状などさまざまな形で含有する。鉄鉱物の違いによって分布する領域が異なっている。にしき石は角礫状の構造を示し、角礫内部を交代する石英はマイクロ石英や、正延性(length-slow)の球晶によって構成されている。これに対し、角礫の粒間部分は自形のはっきりした石英とこれを包晶する負延性(lengt-fast)のカルセドニーにより充填されている。このように角礫状部分と粒間部分では石英の組織に差が認められる。多くのにしき石が角礫状構造を持つことから、原岩は火山角礫岩あるいは凝灰角礫岩と推定される。岩石組織の不均一性の一因は、原岩の種類の違いによる。以上の組織観察の結果より、角礫岩が著しい珪化作用を受けることにより、マイクロ石英と鉄鉱物の集合体へと変化し、その後、粒界を埋めるように自形石英結晶ならびにカルセドニーが沈殿し、にしき石が形成されたと考えられる。
にしき石は碧玉の一種で、様々な色糸で織り出された絹織物のように色鮮やかな色彩を呈し、磨くと美しい光沢を示す。にしき石は研磨加工され、装身具として広く愛用されている。青森県津軽地方は,にしき石の産地として有名である。にしき石の鮮やかな色彩は、含まれる鉄鉱物の種類によると報告されている。
目的
にしき石の多くは海岸の礫から採取され、産状についての研究は少ない。多くの産地では露頭が発見されていないため賦存状態が明らかになっていない。そこで本研究ではにしき石の組織観察および組成分析によって形成過程を推定することを目的として研究を行った。
試料
本研究では、青森県北津軽郡中泊町青岩および、同県東津軽郡外ヶ浜町竜飛崎で採取されたにしき石を観察試料として用いた。両地域ともに、東北日本内帯に広く分布する緑色凝灰岩地域に属し、新第三系の岩石からなる。にしき石を含む母岩は輝石安山岩ならびに同質の火山角礫岩で、両産地とも多くの石英脈、玉髄質石英ならびに蛋白石脈等が見られる。採取したにしき石の主要な構成鉱物は、石英ならびに後述する鉄鉱物、そして,少量の重晶石、燐灰石、アンケル石などを伴う。
手法
岩石ならびに鉱物組織の観察には偏光顕微鏡ならびに走査型電子顕微鏡(日本電子社製,JSM-7001F)を用い、さらに、エネルギー分散型X線分析装置(OXFORD社製,INCA system)により鉱物の化学組成分析を行った。
結果
にしき石は主に様々な形態ならび大きさの石英粒子から構成されている。これら石英粒子の多くは、繊維状組織を呈する約0.1mmの大きさの球晶や、一般に"マイクロ石英"と呼ばれる約0.05mmの微粒子である。一般的なカルセドニー(玉髄)の組織に比べて、にしき石を構成する球晶はひとつひとつの繊維が粗い。また、めのうのような縞状組織を示す部分は少ない。にしき石の鮮やかな色の原因となる鉄鉱物としては、赤鉄鉱(赤色),セラドン石(緑色)、針鉄鉱(黄色)、菱鉄鉱(黄色)、黄鉄鉱(褐色)などが認められた。多くの鉄鉱物は、繊維状組織の隙間に微細な粒子として、あるいは、球晶間隙の充填物として産出する。これらの鉄鉱物の形態は、針状もしくは粒状などさまざまな形で含有する。鉄鉱物の違いによって分布する領域が異なっている。にしき石は角礫状の構造を示し、角礫内部を交代する石英はマイクロ石英や、正延性(length-slow)の球晶によって構成されている。これに対し、角礫の粒間部分は自形のはっきりした石英とこれを包晶する負延性(lengt-fast)のカルセドニーにより充填されている。このように角礫状部分と粒間部分では石英の組織に差が認められる。多くのにしき石が角礫状構造を持つことから、原岩は火山角礫岩あるいは凝灰角礫岩と推定される。岩石組織の不均一性の一因は、原岩の種類の違いによる。以上の組織観察の結果より、角礫岩が著しい珪化作用を受けることにより、マイクロ石英と鉄鉱物の集合体へと変化し、その後、粒界を埋めるように自形石英結晶ならびにカルセドニーが沈殿し、にしき石が形成されたと考えられる。