18:15 〜 19:30
[PCG30-P01] はやぶさ2ONCの地上校正試験と初期画像データ
キーワード:小惑星, 惑星探査, はやぶさ2探査, 分光撮像
はじめに
ONCは3台(T, W1, W2)の可視CCDカメラからなるシステムであり、探査機の光学航行と理学観測の両方を担う。特にONC-Tは、7枚の狭帯域フィルタを用いて分光撮像を行い、はやぶさ2搭載機器中で最も高い空間解像度で小惑星1999JU3の全球観測する点で大変に重要な機器である。本ポスターでは、ONCの地上試験およびと初期運用中取得データについて簡単に解説する。特に、地上試験では、これまで行われたことがなかった隕石を用いたEnd-to-end試験を実施した。この手法は、はやぶさ2の他の機器および欧州から参加しているMASCOTのCAMおよびMicroOmegaでも採用されて、機器間のクロスキャリブレーションとしても役立つこととなった。なお、昨年に彗星に着陸を果たしたRosetta探査においてもFlight Spare品の校正試験に我々の隕石試料を利用したい旨の要請があり、こちらにも利用された。
炭素質隕石を用いたONC-Tの分光撮像試験
カメラの性能は、積分球やコリメータを用いた標準的な光学検証試験によって定量され、それら個々の性能試験の結果の積み上げで総合性能を割り出すことは可能である。しかし、現実には往々にして見落とし点や不測の不具合が起きるものである。これを防ぐためには、なるべく実際の観測に近い条件で、実際の観測対象に近い物体を撮像するEnd-to-end試験を行って計測性能の確認を行うことが有効である。はやぶさ2のONC-Tでは、相対吸収強度が3%ほどしかない0.7μm吸収帯の捕捉が非常に重要な要件となっている。そこで、光学検証試験において、炭素質コンドライトを被写体として計測を行った。
実験では、0.7μm吸収帯を持つCMコンドライト(Murchisonx3, Nogoya, Murray)のいずれでも0.7μm吸収は検出され、吸収帯のないCMコンドライト(Jbilet Windelwan)では、検出されないことが確認された。この結果は、1999JU3に0.7μm吸収帯があれば、ONC-Tで検出可能であることを示すものである。
システム総合試験中取得ONC-W1データ
システム総合試験では、W1カメラ健全性確認撮像試験の際に被写体として炭素質コンドライトを用いた。W1は分光機能を持たないが、小惑星表面へのタッチダウンの際に地表面から1~3mの距離で撮像できる可能性がある。この際には数mmの極めて高い分解能が実現できる。しかし、実際の小惑星が持つ微妙な濃淡コントラストや組織が計測できるかは、実際の隕石で試験する必要がある。
撮像試験には、数種類のCM, CV隕石を用いた。実験結果は、W1は1m程度の距離においてCV隕石に特徴的な大きなCAI組織を識別できることを示唆している。また、CM2隕石内のコンドリュール破片の濃淡がW1画像中にも確認できる結果を得た。ただし、この濃淡の程度は弱く、表面の起伏による見かけ輝度変化と見分けることは難しいものであることに十分注意する必要がある。
ONC初期運用中取得ONC-W2データ
2014年12月3日の打上げ後の第1可視中にW2による月撮像が行われ、ONCのファーストライトとなった。本画像の計測値および地上感度試験の結果からは、月の反射率は7%相当と見積られる。月探査周回機KAGUYAのMI計測値から推定される太陽位相角50°における月高地の反射率 (4.5 ? 10.7 %)と概ね良く一致する。
ONCは3台(T, W1, W2)の可視CCDカメラからなるシステムであり、探査機の光学航行と理学観測の両方を担う。特にONC-Tは、7枚の狭帯域フィルタを用いて分光撮像を行い、はやぶさ2搭載機器中で最も高い空間解像度で小惑星1999JU3の全球観測する点で大変に重要な機器である。本ポスターでは、ONCの地上試験およびと初期運用中取得データについて簡単に解説する。特に、地上試験では、これまで行われたことがなかった隕石を用いたEnd-to-end試験を実施した。この手法は、はやぶさ2の他の機器および欧州から参加しているMASCOTのCAMおよびMicroOmegaでも採用されて、機器間のクロスキャリブレーションとしても役立つこととなった。なお、昨年に彗星に着陸を果たしたRosetta探査においてもFlight Spare品の校正試験に我々の隕石試料を利用したい旨の要請があり、こちらにも利用された。
炭素質隕石を用いたONC-Tの分光撮像試験
カメラの性能は、積分球やコリメータを用いた標準的な光学検証試験によって定量され、それら個々の性能試験の結果の積み上げで総合性能を割り出すことは可能である。しかし、現実には往々にして見落とし点や不測の不具合が起きるものである。これを防ぐためには、なるべく実際の観測に近い条件で、実際の観測対象に近い物体を撮像するEnd-to-end試験を行って計測性能の確認を行うことが有効である。はやぶさ2のONC-Tでは、相対吸収強度が3%ほどしかない0.7μm吸収帯の捕捉が非常に重要な要件となっている。そこで、光学検証試験において、炭素質コンドライトを被写体として計測を行った。
実験では、0.7μm吸収帯を持つCMコンドライト(Murchisonx3, Nogoya, Murray)のいずれでも0.7μm吸収は検出され、吸収帯のないCMコンドライト(Jbilet Windelwan)では、検出されないことが確認された。この結果は、1999JU3に0.7μm吸収帯があれば、ONC-Tで検出可能であることを示すものである。
システム総合試験中取得ONC-W1データ
システム総合試験では、W1カメラ健全性確認撮像試験の際に被写体として炭素質コンドライトを用いた。W1は分光機能を持たないが、小惑星表面へのタッチダウンの際に地表面から1~3mの距離で撮像できる可能性がある。この際には数mmの極めて高い分解能が実現できる。しかし、実際の小惑星が持つ微妙な濃淡コントラストや組織が計測できるかは、実際の隕石で試験する必要がある。
撮像試験には、数種類のCM, CV隕石を用いた。実験結果は、W1は1m程度の距離においてCV隕石に特徴的な大きなCAI組織を識別できることを示唆している。また、CM2隕石内のコンドリュール破片の濃淡がW1画像中にも確認できる結果を得た。ただし、この濃淡の程度は弱く、表面の起伏による見かけ輝度変化と見分けることは難しいものであることに十分注意する必要がある。
ONC初期運用中取得ONC-W2データ
2014年12月3日の打上げ後の第1可視中にW2による月撮像が行われ、ONCのファーストライトとなった。本画像の計測値および地上感度試験の結果からは、月の反射率は7%相当と見積られる。月探査周回機KAGUYAのMI計測値から推定される太陽位相角50°における月高地の反射率 (4.5 ? 10.7 %)と概ね良く一致する。