日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG65] 兵庫県南部地震から20年:活断層と強震動に関する研究の進展

2015年5月26日(火) 09:00 〜 10:45 A04 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*中原 恒(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻固体地球物理学講座)、堀川 晴央(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)、丸山 正(文部科学省研究開発局地震・防災研究課)、座長:堀川 晴央(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、丸山 正(独立行政法人産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

09:40 〜 09:55

[SCG65-03] 干渉SARが明らかにした内陸地震の震源断層の複雑性

*橋本 学1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:干渉SAR, ALOS/PALSAR, 内陸地震, 活断層, 地殻変動

1992年のLanders地震から合成開口レーダー干渉法(以下,干渉SAR)は,地震時地殻変動の検出の有力な手段として用いられて来た.我が国では1995年兵庫県南部地震をはじめとして,主として我が国のLバンドSAR(JERS-1 SAR,ALOS/PALSAR)を用いて地殻変動検出と震源断層運動の推定に関する研究が行われて来た.特に,ALOS/PALSARは,2006年からの国内外の内陸地震による地殻変動の検出を行い,大きな成果を挙げてきた.その最も重要なものは,震源断層の複雑性である.本小論では,ALOS/PALSARにより得られた顕著な内陸地震による地殻変動をレビューし,その地学的および災害科学的意義を議論する.

2008年中国・四川地震では,平行する断層のすべりによる変動や,すべりの不均質性や断層面形状の走向に沿った変化などを捉えることに成功した(e.g. Hashimoto et al., 2010).2009年岩手・宮城内陸地震では,西傾斜の主断層と東傾斜の副断層が動いたことを示した(Takada et al.,2009).2010年ハイチ地震では,地形と逆相関の地殻変動を検出し,支配的と考えられていたエンリキロ断層(鉛直左横ずれ断層)ではなく,伏在する逆断層の運動であることを明らかにした(e.g. Hashimoto et al., 2011).同じ2010年ニュージーランド・ダーフィールド地震では,5つ以上の小断層の複雑な破壊が生じたことを示した(橋本,2012).2011年4月のいわきの地震も複数の斜交する正断層のすべりであることを示した(Fukushima et al., 2013).もちろん,2007年能登半島沖地震や2009年イタリア・ラクイア地震,2010年中国・青海省の地震などのように,一枚の断層面で近似できるケースも認められるが,ALOS/PALSARの5年弱の運用期間中では,むしろ少数であった.

地震調査研究推進本部の長期評価では,「固有地震モデル」が基本的な考えとなっている.しかし,これらの地殻変動から推定される断層運動は,単一の断層面のすべりが繰り返す「固有地震モデル」とは矛盾する.ダーフィールド地震やいわき地震のようにセグメント間の破壊の伝播が,地震の規模の予測を極めて困難にする.地殻構造の影響も含め,モデル化を急ぐべきである.一方,多くの断層の運動が大地形の生成に寄与していることは否定しないが,ハイチ地震のような地形と逆相関の地殻変動を生じる地震がどのような機構で起きるのか.地学的に大きな課題であるとともに,防災・減災に寄与するためにも考慮する必要がある.