日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高等学校の地球惑星科学教育

2015年5月24日(日) 11:00 〜 12:00 102B (1F)

コンビーナ:*畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

11:51 〜 11:54

[G04-P03] 地学×地理の授業実践の試みと考察

ポスター講演3分口頭発表枠

*山本 隆太1吉田 裕幸2飯村 諭2 (1.早稲田大学教育学研究科、2.鴎友学園)

キーワード:地学, 地理, フューチャーアース, 学校教育, ジオパーク, フォッサマグナ

地球温暖化や砂漠化などの環境問題に加え、2011年の東日本大震災といった大災害を経験した日本では、地球および自然環境についての学習の重要性は益々高まっているといえる。これらの諸問題に対しては持続可能な解決策を考えなければならない。しかし、人間社会の貧困や開発といった社会経済的側面を視野に入れない解決策では、持続可能な地球は実現されえない。場合によっては、ある科学的解決策が次なる社会問題を生む恐れさえある。こうした地球規模での環境問題・開発問題に対しては、地球(GEO)という視点から諸課題を全体的・包括的に捉える視点が必要とされており、この点を議論しているのがFuture Earthであるといえる。学校教育に目を移すと、地球にまつわる学習は地学教育・地理教育で行われている。双方の学習を通じて自然環境と社会経済問題を包括的に扱うことはできるのであろうか。
かねてから地理(自然地理)と地学(固体地球・大気・海洋)には共通する内容が多いことは知られている。しかし、この共通点について、実際に授業実践を通じて検討した報告は管見の限りない。そこで本研究では、内容の共通性に着目し、地理・地学による授業実践を行うとともに、その可能性について検討した。都内私立高校の2年生文系地理B履修者(54人)を対象とし、1単位時間(45分)の授業で、地学的視点と地理的視点からフォッサマグナを扱う授業実践を試みた。授業後には生徒から授業アンケートを回収した。
授業実践は、地球や地球的タイムスケールといった地学的視点について確認をした上で、日本列島の形成を扱い、糸静線の位置や堆積層が6000m以上あるといったフォッサマグナの地学的側面を確認した。続いて、自然と人文の関係を総合的に扱う地誌といった地理的観点について確認をした上で、フォッサマグナと人間生活の関わりについて、ジオパークによる観光や、糸魚川のセメント産業について確認した。
授業後に行ったアンケート結果では、51名(96%)が「地理・地学の「捉え方の違い」を理解できた」、「2つの視点から学ぶことは有意義であると感じる」と答えた。また、違う視点から同じ事象を見ることで理解が深まるといったコメントが寄せられた。
その他、地学が実社会と関わる部分を地理学習が担うことによって、地学学習の意義が意識されるようになるという地学にとっての利点や、自然地理的内容の科学的プロセスやメカニズムの説明を曖昧にせずに授業が展開できるといった地理にとっての利点があると考えられる。
実践から導かれた今後の課題は、1)教材形式・学習作業工程の洗練をはかり、学習作業を通じて学問観の違いを意識化させる方法の開発、2)地学・地理の学習体系全体における共通授業可能性の検討、の2点が指摘される。