日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW26] 水循環・水環境

2015年5月27日(水) 09:00 〜 10:45 301A (3F)

コンビーナ:*内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、座長:内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、林 武司(秋田大学教育文化学部)

10:39 〜 10:42

[AHW26-P08] 関東平野中央部および小浜平野における地中熱ポテンシャル評価と比較

ポスター講演3分口頭発表枠

*濱元 栄起1八戸 昭一1白石 英孝1石山 高1宮越 昭暢2宮下 雄次3田原 大輔4 (1.埼玉県環境科学国際センター、2.産業技術総合研究所、3.神奈川県温泉地学研究所、4.福井県立大学)

キーワード:地中熱, 地下水, 関東平野, 小浜平野

地中熱利用システムは、経済的にも環境的に優しい技術であり、これまでヨーロッパや北アメリカで広く使われてきた。しかしながら日本国内では、まだ導入が進んでいない状況にある。この理由のひとつとして、日本はヨーロッパや北アメリカに比べて複雑な地形や地質構造であることが挙げられる。このような複雑な構造では地下の熱物性や温度構造が地域ごとに異なるため、地中熱利用システムの効率も地域差が生じる原因となる。このような場合、システムの適切な導入を図るためには、熱交換井の本数や深さなどを事前に把握することが重要で、熱の利用可能量を数値計算や熱応答試験で評価することが有効である。数値シミュレーションを行うにあたっては、地質構造や地下水特性、地下温度が事前情報として必要である。しかしながら地中熱の設計を目的とした基礎情報の整備は進んでおらず今後の整備が望まれている。特に地下温度情報は少なく、本研究では、研究対象地域において地下温度調査を実施した。
本発表では、研究対象地域で測定したデータを用いて数値シミュレーションを行った結果を示すとともに、本研究で新たに開発した地中熱ポテンシャルマップの作成手法を用いて典型的な日本の平野部に適用した事例を示す。本研究の対象地域は関東平野中央部(埼玉地域)と小浜平野(福井県)である。このうち関東平野は人口は4000万人以上であり都市化が進んでいる。一方小浜平野は、日本海に面し、人口密度は関東平野に比べると少ない。このように社会条件が異なる地域で地中熱ポテンシャルを評価し比較することは社会科学や経済学の面からも重要な基礎情報となる。本研究では 関東平野中央部におけるポテンシャル評価を行うために23地点で、小浜平野では4地点で地下温度調査を行った。小浜平野においてはこの4地点のボーリングコア試料を用いて熱伝導率の測定を行った。本発表では、これらの地域の地下熱環境の違いや地中熱利用システムの効率の違いについて示す。
さらに地下温度や地下水流動が地中熱利用システムに与える影響を調べるため、局所モデルによる数値シミュレーションを行った。この結果、地下温度が5℃上昇すると、効率が約20%向上し、地下水流動の速さが、0m/yearから15m/year速くなる場合、効率は約30%向上することを明らかにした。地中熱ポテンシャルを考える場合このように地下温度や地下水流動の影響も大きいことに留意しなければならない。さらに地下温度に関しては、特に関東平野で最近100年間の地表面温度上昇によって、地下温暖化が進んでいることがわかってきた。このような地下温暖化によって地中熱利用システムの効率に影響があるのかどうかを数値シミュレーションしたところ、暖房時の効率が向上することがわかった。