11:00 〜 11:15
[SSS26-07] 2011年Mw9東北地震の時に房総半島南部で生じたハイパーレゾナンス
キーワード:ハイパーレゾナンス, GPS1秒サンプリング記録, 2011年東北地震, 房総半島, 第三紀堆積層
1.はじめに
川崎・他(2014)は,試行錯誤によって,2011年東北地震の時のGEONETのGPS1秒サンプリング変位記録の波形合わせを行い,次の結論を得た。
記録上の最も卓越的なフェイズは,東北地方のUr成分記録に顕著に表れる,幅ほぼ100秒,振幅数mの、Mw9のモーメントレイト関数がそのまま伝わってくるような主パルスで,気象庁発震時からほぼ35秒後に初期破壊が始まる単純な長方形の低角逆断層型断層モデルで大勢を説明できる。
2番目に卓越的なのは,Uφ成分記録に顕著な,幅ほぼ30秒,振幅最大70cmの,片振れの副パルス(SH波)で,特に関東地方で目立つ。Fig.1 は,南関東の5度間隔のレコードセクションで,経過時間65秒と95秒の補助線の間が副パルスである。副パルスの大勢は,主地震からほぼ30秒後,主地震の破壊過程が進行中に、震央(E142.5, N38.5)から破壊を始め,Mw8.4に匹敵するモーメントを解放した,走向N140E,ほぼ垂直断層面の左横ずれ断層型のサブイベントによって説明できる。彼らはこのサブイベントをスーパサブイベントと呼んだ。ただし,試行錯誤のため,波形の一致は完全ではなく,パラメーター間のトレードオフもあり,パラメータの曖昧さは大きい。
2.周期15秒~20秒のハイパーレゾナンス
Fig.1 の方位N140W-N145W の三浦半島や方位N145W-N150Wの房総半島南部(震央距離420~460km)において副パルスに続いて顕著なのが,周期15秒から20秒,peak-to-peak振幅が1m近い数サイクルのレゾナンス(HR-1)である。この巨大なレゾナンスをハイパーレゾナンスと呼ぶ。ハイパーレゾナンス発生域は,房総半島先端部の分厚い付加体堆積層(中山、2013)に対応するように思われる。
約30分後に茨城県50km東方沖でMJ7.6(G-CMTはMw7.9)の最大余震が生じた。それによるUφ成分主要動は,関東以外の地域では本震のSH波同様の片振れのパルス(幅~25秒)であるが,房総半島(震央距離150km~200km)ではpeak-to-peak振幅が20cm~30cmを越える数パルスの波形(周期15秒~20秒)となり,それ自身がハイパーレゾナンスの性質(後述)を有している。
3.周期10秒~15秒のレゾナンス
次ぎに顕著なのが,千葉県北部の東京湾近くで見られる,周期10秒~15秒,振幅10cm~20cmで1分から2分程度継続するレゾナンス(R-2)である。第三紀堆積層の特に分厚い分布域に対応している。同様のレゾナンスが,新潟平野信濃川河口部,最上川河口部の酒田などでもみられる。
4.周期6秒~7秒のレゾナンス
3番目に顕著なのが,東京湾北部から荒川周辺に広く見られる,周期6秒~8秒で数分継続するレゾナンス(R-3)である。
5.まとめ
房総半島南端と三浦半島において,周期15秒~20秒の巨大なハイパーレゾナンスを認識することができた。それ以外にも,周期10秒~15秒,周期6秒~8秒のレゾナンスが生じ,それは付加体堆積層や,第三紀堆積層に対応している。茨城沖の最大余震(MJ7.6)の時に同様のレゾナンスが再来したが、Mw9の地震によるレゾナンスより一回り小さい。
SH波の変位波形は,半無限媒質の理論計算からも期待されるように,片振れのパルスになる。震源から放出された実体波なのか,レゾナンスなのかの識別に使うことができる。そのため、記録を円筒座標系に座標変換することが重要であり。GPS1秒変位記録は大変有用な記録と言える。
参考文献
川崎一朗・石井紘・浅井康広・西村卓也,2014,2011年Mw9.1東北地震に伴ったMw8.4スーパーサブイベント,地震2,87-98.
中山貴隆,2013,制御震源による房総半島の地殻構造,東京大学院理系研究科地球惑星科学専攻修士論文.
図の説明 2011年東北地震のときの南関東におけるGPS1秒サンプリング記録の,方位N135WからN155Wまでの5度間隔のレコードセクション。横軸は,気象庁発震時からの経過時間。Mw8.4のスーパーサブイベントの震央(E142.5, N38.5)(Kawasaki et al., 2014)を仮定し,3.9km/sでレデュースした。縦軸は,右辺が震央距離,左辺が振幅。HR-1 が周期15秒から20秒のハイパーレゾナンス,R-2 と R-3 は,周期10秒から15秒,5秒から10秒のレゾナンス。
川崎・他(2014)は,試行錯誤によって,2011年東北地震の時のGEONETのGPS1秒サンプリング変位記録の波形合わせを行い,次の結論を得た。
記録上の最も卓越的なフェイズは,東北地方のUr成分記録に顕著に表れる,幅ほぼ100秒,振幅数mの、Mw9のモーメントレイト関数がそのまま伝わってくるような主パルスで,気象庁発震時からほぼ35秒後に初期破壊が始まる単純な長方形の低角逆断層型断層モデルで大勢を説明できる。
2番目に卓越的なのは,Uφ成分記録に顕著な,幅ほぼ30秒,振幅最大70cmの,片振れの副パルス(SH波)で,特に関東地方で目立つ。Fig.1 は,南関東の5度間隔のレコードセクションで,経過時間65秒と95秒の補助線の間が副パルスである。副パルスの大勢は,主地震からほぼ30秒後,主地震の破壊過程が進行中に、震央(E142.5, N38.5)から破壊を始め,Mw8.4に匹敵するモーメントを解放した,走向N140E,ほぼ垂直断層面の左横ずれ断層型のサブイベントによって説明できる。彼らはこのサブイベントをスーパサブイベントと呼んだ。ただし,試行錯誤のため,波形の一致は完全ではなく,パラメーター間のトレードオフもあり,パラメータの曖昧さは大きい。
2.周期15秒~20秒のハイパーレゾナンス
Fig.1 の方位N140W-N145W の三浦半島や方位N145W-N150Wの房総半島南部(震央距離420~460km)において副パルスに続いて顕著なのが,周期15秒から20秒,peak-to-peak振幅が1m近い数サイクルのレゾナンス(HR-1)である。この巨大なレゾナンスをハイパーレゾナンスと呼ぶ。ハイパーレゾナンス発生域は,房総半島先端部の分厚い付加体堆積層(中山、2013)に対応するように思われる。
約30分後に茨城県50km東方沖でMJ7.6(G-CMTはMw7.9)の最大余震が生じた。それによるUφ成分主要動は,関東以外の地域では本震のSH波同様の片振れのパルス(幅~25秒)であるが,房総半島(震央距離150km~200km)ではpeak-to-peak振幅が20cm~30cmを越える数パルスの波形(周期15秒~20秒)となり,それ自身がハイパーレゾナンスの性質(後述)を有している。
3.周期10秒~15秒のレゾナンス
次ぎに顕著なのが,千葉県北部の東京湾近くで見られる,周期10秒~15秒,振幅10cm~20cmで1分から2分程度継続するレゾナンス(R-2)である。第三紀堆積層の特に分厚い分布域に対応している。同様のレゾナンスが,新潟平野信濃川河口部,最上川河口部の酒田などでもみられる。
4.周期6秒~7秒のレゾナンス
3番目に顕著なのが,東京湾北部から荒川周辺に広く見られる,周期6秒~8秒で数分継続するレゾナンス(R-3)である。
5.まとめ
房総半島南端と三浦半島において,周期15秒~20秒の巨大なハイパーレゾナンスを認識することができた。それ以外にも,周期10秒~15秒,周期6秒~8秒のレゾナンスが生じ,それは付加体堆積層や,第三紀堆積層に対応している。茨城沖の最大余震(MJ7.6)の時に同様のレゾナンスが再来したが、Mw9の地震によるレゾナンスより一回り小さい。
SH波の変位波形は,半無限媒質の理論計算からも期待されるように,片振れのパルスになる。震源から放出された実体波なのか,レゾナンスなのかの識別に使うことができる。そのため、記録を円筒座標系に座標変換することが重要であり。GPS1秒変位記録は大変有用な記録と言える。
参考文献
川崎一朗・石井紘・浅井康広・西村卓也,2014,2011年Mw9.1東北地震に伴ったMw8.4スーパーサブイベント,地震2,87-98.
中山貴隆,2013,制御震源による房総半島の地殻構造,東京大学院理系研究科地球惑星科学専攻修士論文.
図の説明 2011年東北地震のときの南関東におけるGPS1秒サンプリング記録の,方位N135WからN155Wまでの5度間隔のレコードセクション。横軸は,気象庁発震時からの経過時間。Mw8.4のスーパーサブイベントの震央(E142.5, N38.5)(Kawasaki et al., 2014)を仮定し,3.9km/sでレデュースした。縦軸は,右辺が震央距離,左辺が振幅。HR-1 が周期15秒から20秒のハイパーレゾナンス,R-2 と R-3 は,周期10秒から15秒,5秒から10秒のレゾナンス。