日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG32] 熱帯におけるマルチスケール大気海洋相互作用現象

2015年5月26日(火) 16:15 〜 18:00 202 (2F)

コンビーナ:*時長 宏樹(京都大学防災研究所・白眉センター)、長谷川 拓也(独立行政法人海洋研究開発機構)、清木 亜矢子(海洋研究開発機構)、東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、名倉 元樹((独) 海洋研究開発機構)、大庭 雅道(電力中央研究所 環境科学研究所 大気海洋環境領域)、今田 由紀子(東京大学大気海洋研究所)、座長:名倉 元樹((独) 海洋研究開発機構)、今田 由紀子(気象庁気象研究所)

16:15 〜 16:40

[ACG32-07] 2014年エルニーニョの急激な衰退と予測可能性について

*土井 威志1ベヘラ スラディヒン1山形 俊男1 (1.JAMSTECアプリケーションラボ)

キーワード:エルニーニョ, 季節予測

世界中の天候異常の原因となるエルニーニョ現象の発生は数理的に予測が可能だということが知られており、我が国の気象庁を含め世界中の現業気象機関からその予測情報が発信されるようになった。しかし、2014年のエルニーニョ現象の予測は特異であった。2014年の冬から春にかけては、太平洋熱帯西部で強い西風バーストが観測され、今年の4月までは20世紀最大と言われた1997/98エルニーニョ現象発生の状況と大変似ていた。そこで、多くの研究者が大規模なエルニーニョが夏に発生することを危惧した。各国各機関の気候モデルによる数理予測システムでも、多くのシステムが夏にエルニーニョが発生する可能性が高いと予測していた。エルニーニョ予測では高い実績があるJAMSTEC/APLのSINTEX-F季節予測システムでも同様に、夏に高確率でエルニーニョが発生すると予測していた。事実、2014年のエルニーニョ現象は6月までは順調に発達しており、インドモンスーンによる降水量が平年の約60%減になるなど影響が見られた。しかしその後は、エルニーニョ現象の発達が停滞し、8~9月はかなり弱まってしまった。SINTEX-Fを含め多くのモデルでこのエルニーニョ現象の突然の衰退を予測することはできなかった。
本研究では、何故2014年の夏のエルニーニョの発達が停滞したのかについて、主にSINTEX-F季節予測システムの結果を用いて調べた。熱帯インド洋との海盆相互作用や太平洋数10年規模変動の影響などいくつかの仮説が提唱されているが、本発表では季節内変動とエルニーニョ現象との相互作用に注目する。特に7月中旬頃、熱帯太平洋の西-中央付近の貿易風の強化に伴い励起された湧昇ケルビン波が、エルニーニョ現象の急激な衰退の一因になっている可能性について発表する。