日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM08] Progress in Physics of the Inner Magnetosphere

2015年5月26日(火) 14:15 〜 16:00 302 (3F)

コンビーナ:*Danny Summers(Dept of Math and Stats,Memorial University of Newfoundland)、海老原 祐輔(京都大学生存圏研究所)、三好 由純(名古屋大学太陽地球環境研究所)、座長:海老原 祐輔(京都大学生存圏研究所)

15:10 〜 15:25

[PEM08-04] GEMSIS-RC及びRBのシミュレーションに基づくPc5波動と放射線帯電子のドリフト共鳴の特性

*神谷 慶1関 華奈子1齊藤 慎司1天野 孝伸2三好 由純1松本 洋介3梅田 隆行1 (1.名古屋大学太陽地球環境研究所、2.東京大学、3.千葉大学)

キーワード:放射線帯電子, ドリフト共鳴, Pc5波動, GEMSIS-RC,RBコード

Pc5帯の周波数帯(1.67-6.67mHz)の超低周波(ULF wave)による相対論的電子の動径方向輸送は、放射線帯電子の加速あるいは減速を担う重要な候補の一つである。これは、地球の双極子磁場における電子のドリフト運動と、磁気圏内のPc5帯の電磁場擾乱との共鳴相互作用である、ドリフト共鳴の結果によるものと考えられる。Pc5波動の振幅は動径方向距離が小さくなるにつれて急激に減少し、最近の研究ではPc5波動による動径方向輸送の効率が波の特性に大きく依存することが指摘されている[例:UkhorskiyとSitnov、2008]。その結果、放射線帯外帯電子の集団的振舞いが動径拡散的な振舞いから大きく揺らぐことが示している。よって、内部磁気圏においてPc5波動に対する電子の集団運動の基本的な動作を理解することは重要である。
 本研究では、内部磁気圏の2つのシミュレーションモデル:GEMSIS-RC(環電流)とRB(放射線帯)モデルを組み合わせている。 GEMSIS-RCモデルは、第1断熱不変量保存を仮定した5次元位相空間において、無衝突の環電流イオンのドリフト運動方程式を運動論近似して解き、その解から導かれる電流値とマクスウェル方程式を組み合わせることで電磁場の時間変化を記述できる、波動と粒子の自己矛盾のない数値シミュレーションコードである[Amano et al.,2011]。 GEMSIS-RBモデルは、任意の電磁場構造において相対論的電子の運動方程式を解くことにより粒子の軌道を追跡できるテスト粒子シミュレーションコードである[Saito et al.,2010]。すなわちGEMSIS-RCコードで導出した内部磁気圏の低周波数の電磁場擾乱をGEMSIS-RBコードにインプットさせて電子の軌道を計算することにより、ULF波動が放射線帯電子に及ぼす影響を理論的に求めることができるのが本研究の特徴である。簡単のため、ドリフト共鳴における単色波の影響を調べた。それらのシミュレーションの結果を用いて、電子や波のパラメータへの依存性を評価し、位相空間密度の動径方向プロファイルを解析した。その結果、共鳴条件を満たす粒子はエネルギーが変化し続けることが示されたが、そのエネルギー変化は、単純な理論的概算よりも広い範囲である。また、共鳴条件を満たす電子は位相空間密度に局所的なピークを持つことが示された。これは、電子のドリフト速度の変化に対して非線形効果を考慮しなければならないということを意味するものであると考えている。