17:15 〜 17:18
[SMP43-P01] ザクロ石に含まれるアルミノケイ酸塩鉱物を用いたラマン地質温度圧力計の構築
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:ラマン地質温度圧力計, 珪線石, 藍晶石, ザクロ石, 高温変成岩, 超高圧変成岩
近年、ラマン分光法を用いた地質温度圧力計の開発が活発に行われており、従来の熱力学的手法を用いた地質温度圧力計では得られなかった情報が明らかになる例も報告されている。特に、ザクロ石に包有されている石英の残留圧力をラマン分光法で測定し、変成温度圧力条件を制約する石英ラマン圧力計は、三波川帯において目覚ましい成果を挙げている。一方石英は、超高圧及び高温条件下では、コース石やβ石英に相転移するため、石英ラマン圧力計が適用できる地質帯は限られていた。本研究では、ザクロ石に包有されているアルミノケイ酸塩鉱物(珪線石と藍晶石)に着目し、石英包有物と同様にラマンスペクトルから温度圧力条件を制約できるか検討した。
まず、珪線石、藍晶石、及びザクロ石の弾性係数から、変成温度圧力条件と残留圧力の関係を数値計算によって調べた。その結果、ザクロ石中に含まれる珪線石の残留圧力値は、圧力条件にほぼ依存せず、温度条件によって決まる事が示された。一方、ザクロ石中の藍晶石の残留圧力値は、温度条件にはあまり依存せず、圧力条件によって変化する事が示された。次に天然の試料に含まれるザクロ石中の珪線石と藍晶石をラマン分光分析した。試料は、超高温変成岩である東南極Lutzow-Holm Complex, RundvagshettaのGarnet-Sillimanite gneissと、高圧変成岩である四国中央部三波川帯別子地域のKyanite-Quartz eclogiteを用いた。Garnet-Sillimanite gneissのザクロ石に含まれる珪線石のラマンスペクトルは、962 cm-1と1182 cm-1付近に特徴的なピークが見られ、4~5 cm-1程度高波数側へのシフトが確認された。Kyanite-Quartz eclogiteに含まれるザクロ石中の藍晶石のラマンスペクトルは、325 cm-1と486 cm-1付近に特徴的なピークが見られ、1 cm-1程度高波数側へのシフトが確認された。
先行研究の実験データを用いて、珪線石と藍晶石のラマンピークシフトを圧力に変換すると、珪線石は最大0.8 GPa程度、藍晶石は最大0.3 GPa程度の残留圧力を保持している事が明らかになった。数値計算の結果と比較すると、超高温変成岩中の珪線石包有物の残留圧力は、変成温度100℃程度の条件に制約され、先行研究の見積り温度と矛盾しない結果になった。一方、藍晶石包有物の残留圧力は、数値計算では高圧になるほど負の値になる結果であったが、三波川帯の高圧変成岩中で測定された残留圧力は正であった。これは、数値計算に用いた藍晶石の弾性係数に問題があると考えられるが、藍晶石の状態方程式を改良する事で解決できると期待される。上記の結果は、高圧~超高圧、及び高温~超高温領域において、アルミノケイ酸塩鉱物がラマン地質温度圧力計として有用である事を示唆している。
まず、珪線石、藍晶石、及びザクロ石の弾性係数から、変成温度圧力条件と残留圧力の関係を数値計算によって調べた。その結果、ザクロ石中に含まれる珪線石の残留圧力値は、圧力条件にほぼ依存せず、温度条件によって決まる事が示された。一方、ザクロ石中の藍晶石の残留圧力値は、温度条件にはあまり依存せず、圧力条件によって変化する事が示された。次に天然の試料に含まれるザクロ石中の珪線石と藍晶石をラマン分光分析した。試料は、超高温変成岩である東南極Lutzow-Holm Complex, RundvagshettaのGarnet-Sillimanite gneissと、高圧変成岩である四国中央部三波川帯別子地域のKyanite-Quartz eclogiteを用いた。Garnet-Sillimanite gneissのザクロ石に含まれる珪線石のラマンスペクトルは、962 cm-1と1182 cm-1付近に特徴的なピークが見られ、4~5 cm-1程度高波数側へのシフトが確認された。Kyanite-Quartz eclogiteに含まれるザクロ石中の藍晶石のラマンスペクトルは、325 cm-1と486 cm-1付近に特徴的なピークが見られ、1 cm-1程度高波数側へのシフトが確認された。
先行研究の実験データを用いて、珪線石と藍晶石のラマンピークシフトを圧力に変換すると、珪線石は最大0.8 GPa程度、藍晶石は最大0.3 GPa程度の残留圧力を保持している事が明らかになった。数値計算の結果と比較すると、超高温変成岩中の珪線石包有物の残留圧力は、変成温度100℃程度の条件に制約され、先行研究の見積り温度と矛盾しない結果になった。一方、藍晶石包有物の残留圧力は、数値計算では高圧になるほど負の値になる結果であったが、三波川帯の高圧変成岩中で測定された残留圧力は正であった。これは、数値計算に用いた藍晶石の弾性係数に問題があると考えられるが、藍晶石の状態方程式を改良する事で解決できると期待される。上記の結果は、高圧~超高圧、及び高温~超高温領域において、アルミノケイ酸塩鉱物がラマン地質温度圧力計として有用である事を示唆している。