日本地球惑星科学連合2015年大会

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[O-02] 地球・惑星科学トップセミナー

2015年5月24日(日) 09:45 〜 11:30 国際会議室 (2F)

コンビーナ:*原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、道林 克禎(静岡大学理学研究科地球科学専攻)、関根 康人(東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻)、座長:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(静岡大学理学研究科地球科学専攻)、関根 康人(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

10:55 〜 11:30

[O02-03] はやぶさ2のサイエンスと太陽系の水

*渡邊 誠一郎1 (1.名古屋大学)

キーワード:太陽系探査, 小惑星, 彗星, 熱水活動, 前生命環境進化, 惑星科学

小惑星探査機はやぶさ2は2014年12月に打ち上げられ,小惑星1999 JU3に向かって飛行を続けている.この目的小惑星は,地球接近小惑星の1つであり,可視近赤外の波長帯において,暗く(反射率が低く)平坦で鉱物による吸収が乏しいC型と呼ばれる反射スペクトルを持つ.はやぶさ2は可視分光カメラ,近赤外分光計,中間赤外カメラ,レーザ距離計,衝突装置(人工クレーターを生成),分離カメラ(衝突放出物撮影用),小型着陸機(欧州チームが開発)などをサイエンス機器として搭載している.また,工学実験機器としてではあるが,複数のローバを搭載している.さらに表面試料を採取するためのサンプラーを持ち,最大3ヶ所(うち1ヶ所は衝突装置で掘削された地下物質の採取に挑戦)からの試料を互いに混じらないように採取することができる.これによって採取された小惑星表面物質を2020年末に地球に持ち帰る予定である.
C型小惑星は,有機物を含む始原的隕石である炭素質コンドライトの母天体と考えられている.それらは太陽系の外惑星領域で作られた微惑星(惑星形成期に惑星材料となった小天体)の生き残りもしくは破片であると考えられる.炭素質コンドライトには鉱物が高温の水と反応してできる水質変成鉱物が含まれており,C型小惑星の少なくとも一部は,太陽系形成期に内部で熱水活動(温泉!)が生じていたと推定されている.熱水と鉱物が共存する環境下で有機物がどのような反応によってどのような形に変化したのかを知ることは,はやぶさ2プロジェクトの最も重要な目的の1つである.
1999 JU3のような地球接近小惑星は,小惑星メインベルト(火星軌道と木星軌道の間の小惑星が多数回っている円環状領域)に存在していた小惑星が衝突によって壊された破片天体であり,それが木星などの惑星の重力の影響(摂動)を受けて,軌道が変化して地球に接近するようになったものと考えられている.こうしたメインベルトからの物質供給は太陽系初期ほど盛んであり,初期地球へもこうした小惑星が多数落下してきた.初期の地球進化,とりわけ海洋の形成や前生命環境進化において,こうした小惑星物質の寄与は重要な役割を果たしたはずである.
講演では,本セッションのキーワードである水を意識しつつ,はやぶさ2ミッションが標榜する「小惑星からのサイエンス」について述べたい.