日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG28] 生命-水-鉱物-大気相互作用

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*白石 史人(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、高井 研(海洋研究開発機構極限環境生物圏研究センター)、上野 雄一郎(東京工業大学大学院地球惑星科学専攻)、長沼 毅(広島大学大学院生物圏科学研究科)、掛川 武(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、横山 正(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、中村 謙太郎(独立行政法人海洋研究開発機構 (JAMSTEC) システム地球ラボ プレカンブリアンエコシステムラボユニット)

18:15 〜 19:30

[BCG28-P08] 秋田県北鹿地域に産する海洋堆積物と凝灰岩におけるマンガンと鉄の挙動に関する研究

*塚本 雄也1掛川 武1 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻)

キーワード:縞状マンガン鉱床, 北鹿地域, 黒鉱, 海底熱水活動, 酸化還元環境

Mnに富んだ堆積物は、海底熱水活動の存在や古環境の酸化還元環境を評価するためによく使われてきた。最古のMn鉱床は24億年前に縞状Mn鉱床として発見されており、それは先カンブリアン紀の海水の酸化状態と対応している。これらの研究によってMnの地球化学は地球の歴史だけでなく、古環境の評価にとって重要であることが示唆される。
北鹿地域はCu、Pb、Znといった金属を多く含む黒鉱鉱床が有名である。海底熱水活動が起こっていた間、黒鉱を構成する金属は噴出孔の比較的近くに堆積していた一方で、MnやFeは熱水プルームによって比較的遠くまで運ばれていたことが予想される。その結果として、MnやFeに富んだ層の延長線上に黒鉱鉱床が存在していることが示唆される。したがって、Mnが黒鉱鉱床の探査指標となりうるか検討することを1つ目の研究目的とする。北鹿地域ではMnに富んだ層が存在していることでも知られている。そのMnの起源はまだあまりわかっていないが、Mnに富んだ層は黒鉱鉱床形成期後の海底熱水活動によって形成された可能性がある。それゆえに、Mnに富んだ層が黒鉱鉱床形成期後の海底熱水活動による産物かどうか考察することを2つ目の研究目的とする。
本研究では1つ目の課題に対しては3つの地点から黒鉱鉱床を覆ったM2泥岩6つの岩石サンプルを採取し、分析を行った。また、2つ目の課題に関しては小雪沢から”R2”、”T2”、ドレライト、泥岩の岩石サンプル31個を採取し、分析を行った。サンプル中の鉱物の化学組成はSEM、EPMAを用いて分析を行った。サンプルの全岩化学組成はEDXRFを用いて分析を行った。鉱物の同定はXRDを用いた。
まず、1つ目の目的に関して考察を行う。M2泥岩におけるMnの含有率は最大でも0.04 wt%と低い値を示した。距離に応じたMn含有率の変化も見出せなかった。したがって、本研究において、Mnは黒鉱鉱床の探査指標にはならないことが示唆される。次に2つ目の目的に関して考察を行う。小雪沢では2つの沢において地質調査を行った(ルートA、B)。局所的に泥岩を挟んでいる凝灰角礫岩や軽石凝灰岩の層が多く見られた。またここでは貫入岩であるドレライトを見ることもできた。ルートAで見られたドレライトは赤色、もしくは赤褐色の熱水による変質が見られた。このルートAにおいて、化学分析の結果、Mnに富んだ層を発見することができた(3.7 wt%、1.8 wt%)。”T2”とドレライトの境界付近に部分的にMnが濃集していることもわかった。その一方でルートAから300 mほどしか離れていないルートBのドレライトにおいて赤色変質は見られなかった。これらのことから、Mnに富んだ層はドレライトが貫入したことによって海底熱水活動が起き、Mnがリサイクルされ、地層中の酸化的な場所において選択的に濃集したことによって形成したことが推察される。さらに、MnとFeは同様の挙動を示す一方で、酸化的な環境においてFeのほうがMnよりも先に酸化して沈殿、堆積していることもわかった。