日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS26] 生物地球化学

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

18:15 〜 19:30

[MIS26-P15] ヒノキ二次林の異なる斜面位置における群状間伐がリターフォールと堆積有機物に及ぼす影響

*中西 麻美1稲垣 善之2柴田 昌三3大澤 直哉4 (1.京都大学フィールド科学教育研究センター、2.森林総合研究所四国支所、3.京都大学大学院地球環境学堂、4.京都大学大学院農学研究科)

キーワード:群状間伐, リターフォールCN比, 堆積有機物, 更新樹種, 窒素供給, 斜面位置

森林生態系における窒素循環は、森林の伐採および、伐採後の植生回復において影響を受ける。針葉樹林の伐採後に下層植生が更新、成長してくると、広葉樹の落葉は針葉樹より窒素濃度が高い(CN比が低い)傾向があるため、落葉による窒素供給量が増加し、堆積有機物の分解が変化することが予想される。このような変化は、土壌養分が多い林分よりも貧栄養で強い窒素制限下にある林分で顕著な可能性がある。例えば、同一斜面上で土壌の肥沃度に違いがみられる林分では、貧栄養な斜面上部ほど変化が大きいことが予想される。
本研究では、京都市内の天然更新したヒノキが優占する二次林の異なる斜面位置3ヶ所(上部、中部、下部)において、広葉樹の更新を促すための群状間伐が実施された林分を対象とした。窒素循環への伐採の影響を明らかにするために、伐採から10年後のリターフォールおよび堆積有機物の質と量、堆積有機物の滞留時間について調べた。伐採の影響が斜面位置によって異なるかを明らかにするために、リターフォールと堆積有機物の質と量について、斜面位置、伐採を主効果、これらの交互作用を変数とした分散分析をおこなった。交互作用が有意だった場合には、斜面位置別に伐採の有無を要因としてt検定で解析した。
リターフォールの炭素量とヒノキ落葉の炭素・窒素量は、どの斜面位置でも対照区より伐採区で低かった。交互作用は有意でなかった。リターフォールの窒素量は対照区と伐採区で有意な差は認められず、各斜面位置の伐採区では対照区と同程度に回復していた。更新木に高木・亜高木層の広葉樹が多かった斜面中部と下部の伐採区では、対照区よりも広葉樹落葉の炭素・窒素量は大きく、リターフォールのCN比は低かった。更新木に低木層の広葉樹とアカマツが多かった斜面上部の伐採区では、広葉樹落葉の炭素・窒素量とリターフォールのCN比に対照区と差異は認められなかった。
堆積有機物の炭素量、窒素量はどの斜面位置でも伐採区で対照区より低かった。堆積有機物の炭素・窒素量の平均滞留時間はすべての斜面位置において伐採区のほうが対照区よりも短かった。広葉樹落葉の窒素量が多いほどリターフォールのCN比は低く、リターフォールのCN比が低いほど堆積有機物の滞留時間が短い傾向を示した。この傾向は中部と下部で顕著であったが、斜面傾度に沿った土壌肥沃度との対応は明らかではなかった。堆積有機物の分解における伐採から10年後の各斜面位置の変化は、斜面傾度による土壌肥沃度の違いの影響を受けておらず、更新木の樹種構成に影響を受けていることが示唆された。