日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT52] 空中からの地球計測とモニタリング

2015年5月27日(水) 09:00 〜 10:45 102B (1F)

コンビーナ:*楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、小山 崇夫(東京大学地震研究所)、座長:楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))、小山 崇夫(東京大学地震研究所)、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)

10:15 〜 10:30

[STT52-06] 空中電磁探査技術を活用した大規模表層崩壊予測技術に関する研究

*木下 篤彦1瀬戸 秀治1高原 晃宙1清水 孝一1石塚 忠範1西岡 恒志2桜井 亘3河戸 克志4奥村 稔4影浦 亮太4 (1.独立行政法人土木研究所、2.和歌山県、3.国土交通省近畿地方整備局紀伊山地砂防事務所、4.大日本コンサルタント株式会社)

キーワード:空中電磁探査, 表層崩壊

近年、空中電磁探査技術を用いた深層崩壊危険箇所や火山体の調査が実施されており土砂災害発生箇所の予測に関する研究が徐々に進歩している。一方、表層崩壊についても2014年広島災害、2013年伊豆大島災害、2011年那智川災害など多くの災害が発生しており空中電磁探査技術を用いて崩壊発生箇所の予測ができれば砂防事業の優先度や警戒避難につなげることができる。そこで本研究では、2011年に大規模な表層崩壊が発生した那智川流域を例に挙げ、空中電磁探査の結果から2011年の崩壊箇所と非崩壊箇所の比抵抗特性の違いについて検討した。
 まず、地質と比抵抗特性との関係について整理した。那智川流域は熊野酸性岩(花崗斑岩)のエリアと熊野層群(砂岩泥岩互層)のエリアに分かれているためこれらが比抵抗分布として区別可能であるかを検討した。次に2011年の崩壊箇所を比抵抗分布と重ね合わせ、どのような比抵抗の箇所で崩壊が発生したかを検討した。最後に那智川流域の崩壊斜面と非崩壊斜面について、比抵抗コンターの構造や地下での比抵抗変化率に着目して、その違いについて検討した。
 検討の結果、熊野酸性岩(花崗斑岩)は比抵抗値が高く、熊野層群(砂岩泥岩互層)は低くなったため、空中電磁探査で地質境界を精度良く表すことができた。また2011年の崩壊斜面のほとんどは地質境界付近に分布していることが分かった。このことから鉛直方向の地質特性の違いにより崩壊が発生したものと考えられる。崩壊斜面と非崩壊斜面の違いについて、崩壊斜面は比抵抗コンターが鉛直であること、崩壊発生斜面近傍の上方で比抵抗変化率の大きい領域が途絶することが分かった。一方、非崩壊斜面は、比抵抗コンターが斜面に平行であること、斜面の上方から下方に連続して比抵抗変化率の大きい領域が連続することが分かった。比抵抗構造については地質構造を表しており、崩壊斜面は比抵抗コンターが鉛直であることから、崩壊斜面の地質構造は鉛直であり、熊野層群に対して熊野酸性岩が鉛直に近い構造で貫入していると考えられる。また、地質構造が鉛直である場合浸透した水が斜面下方に流れにくく、地下水位が上昇しやすく崩壊しやすいと考えられる。比抵抗変化率の大きいエリアはボーリング調査の結果と合わせると地下水位を表していると考えられる。崩壊斜面は比抵抗変化率の大きい領域が途絶していることから排水性が低かったと考えられる。以上のことから、表層崩壊の危険度評価において、空中電磁探査は地質構造や地下水位、地下水の排水性を評価できると考えられる。