日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

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[U-05] Future Earth - 持続可能な地球へ向けた統合的研究

2015年5月25日(月) 11:00 〜 12:45 103 (1F)

コンビーナ:*氷見山 幸夫(北海道教育大学教育学部)、中島 映至(東京大学大気海洋研究所)、谷口 真人(総合地球環境学研究所)、大谷 栄治(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:鈴木 康弘(名古屋大学)

11:00 〜 11:25

[U05-05] Future Earthと地震学

*佐竹 健治1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:フューチャーアース, 地震学, 社会との関わり, 学際研究, 超学際研究

持続可能な地球へ向けた統合的研究を実施するFuture Earthプログラムについて,地震学と比較して社会との関係などを考えてみたい.Future Earthは自然・人類起源の環境変化を理解し,地球規模の開発に必要な知識を提供し,持続可能な社会への転換を目指すため,研究者のみでなく社会(さまざまステークホルダー)との協働を行う点に特徴がある.なかでも,人口が集中し環境・社会が急激に変化しているアジアでの,日本の役割が期待されている.

アジアにおける地球環境変化を考える際,台風・集中豪雨・洪水あるいは地震・津波・火山噴火などの自然災害を無視することはできない.2004年のインド洋津波は, M 9.1のスマトラ・アンダマン地震によって発生し,周辺の10以上の国で23万人もの死者をもたらした.この原因として,インド洋ではM9クラスの超巨大地震の発生が知られていなかったこと,従って津波早期警戒システムや沿岸自治体・住民に津波についての知識や備えがなかったことが挙げられている.この10年間に,三カ国に津波警報センターが設置され,地震発生後5分以内をめどに津波警報が発出されるようになったほか,沿岸で津波堆積物などの調査が行われて2004年と同規模な津波が数百年前にも発生していたことがわかってきた.地球温暖化・海面上昇などの環境変化と自然災害による環境変化は,前者が長期的・連続的であるのに対し,後者は短期的・突発的であることから,取り組み方も異なるとされているようである.持続可能な開発のためには将来発生する可能性がある自然災害についても考慮する必要があり,地震や津波の長期予測が重要であろう.

日本地震学会では,東日本大震災後,臨時委員会やシンポジウムを開催し,モノグラフ「地震学の今を問う」を発刊した.主な論点は,なぜ東北地方太平洋沖地震は何故想定できなかったのか,学会は国の施策とどう関わるのか,防災のためには何が足りなかったのか,教育現場やメディアで地震学の知見をどう伝えるのか,などである.そこでは,大地震の予測などはトランス・サイエンス的問題(科学だけでは解決できない問題)として捉えるべきという主張もなされている.また,平成25年に建議された「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」で,総合的かつ学際的研究として推進することとされ,歴史学や考古学なども含む異分野の研究者が集まった研究が始まった.

Future Earthの特徴は,自然科学・社会科学・工学・人文科学などの学際的(inter-disciplinary)研究,さらには,学術だけでなく社会の様々なステークホルダーが参加する超学際(trans-disciplinary)的な取り組みにある.学術研究者のみでなく社会も参加して,研究活動の設計(co-design)や成果の創出(co-production)を行うことが提案されている.先に述べたように,環境問題と自然災害とでは時間スケールなどに違いはあるものの,社会との協働という超学際的な取り組みは,地震学が抱える問題と共通点がある.