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[SVC11-07] 顕微FT-IR反射法による諏訪之瀬島火山1813年噴火ガラス包有物の含水量測定
キーワード:ガラス包有物, 含水量, 顕微FT-IR反射法, 諏訪之瀬島
火山噴火は主に爆発的噴火と非爆発的噴火を二極として様々なものがある.この噴火多様性の要因のひとつとして,噴火直前のマグマ中の揮発成分量(大部分を水が占める)の違いが指摘されてきた.近年の研究ではこの初期含水量よりもむしろマグマの火道上昇中における脱ガス効率の違いが噴火様式を左右すると指摘されているが,依然として爆発的噴火の潜在力=初期含水量についての知見は重要である.また,爆発的噴火の強度を考えると,その起こり得る最大の噴火を想定する上で初期含水量を知ることが重要である.一方,斑晶鉱物中のガラス包有物はその含水量測定により,噴火直前のマグマ含水量を推定できる数少ない手法の一つとして用いられてきた.しかし,従来は測定のための試料調整の困難さから,比較的含水量の多く包有物径の大きい試料を除いて,測定数が限られていた.最近,安田(2013)は真空装置を併用した顕微FT-IR装置に従来の透過法ではなく反射法を用いることにより,格段に容易に試料調整が可能な含水量測定法を確立した.
諏訪之瀬島火山は日本でも有数の活火山であり,現在もストロンボリ式噴火をはじめとする活発な火山活動を継続している.一方,最近の研究では,当火山は数百年程度の間隔でプリニー式噴火に匹敵する大規模な噴火を行っていることが明らかとなっている(嶋野ほか,2013).このように規模の異なる噴火で噴出したマグマの初期含水量について知ることは,大規模噴火に至るマグマの準備過程を理解する上でも重要であろう.これまで,嶋野・小屋口(2001)は1813年噴火について異なる噴火様式で噴出した噴出物の岩石学的な特徴(全岩主要元素微量元素組成,鉱物組み合わせ,斑晶鉱物・石基鉱物の化学組成)に加えて全岩含水量を測定し,脱ガス程度の違いによって爆発的噴火から溶岩流出噴火へ移行したことを示した.一方,初期含水量については,ガラス包有物が少量かつ微小であるため測定は行わず,Housh & Luhr (1991)の含水量計を用いて推定を行った.この際,斜長石斑晶リムと石基部分が平衡状態にあったと想定して見積もりを行い,約3重量%であったと結論付けた.しかし,Housh and Luhr (1991)による見積もりはしばしば実測値と一致しない場合があることが指摘されている.また,斑晶リム組成はコア組成に比べてAn成分が有意に高く,晶出直前にマグマ混合などの不均質化プロセスを経ている可能性が指摘されており,マグマ全体が約3wt%であったという直接的なデータは得られていない.そこで本研究では,反射法を用いてガラス包有物の含水量を測定し,嶋野・小屋口(2001)による見積もりとの比較を行った.また,1813年噴火より大規模な活動と考えられる1万年前の火砕噴火堆積物中の斑晶ガラス包有物の含水量も測定した.
1813年噴出物の斑晶ガラス包有物の含水量は斜長石が1.0-2.0wt.%程度,輝石は0.6-1.2wt.%程度,1万年前の斑晶ガラス包有物の含水量は斜長石が1.4-3.0wt.%程度,輝石が2.0-2.4wt.%程度となった.
まず,1813年噴出物については,嶋野・小屋口(2001)の推定値である約3.0wt%と比較するといずれのガラス包有物も低い測定値を示しており,このことは1)嶋野・小屋口(2001)の過大見積り,2)ガラス包有物が同見積値とは異なるタイミングの含水量を反映している,の2点の可能性が挙げられる.斑晶ガラス包有物はいずれも斑晶中央部のコア付近に包有されている.また,斜長石斑晶,輝石斑晶いずれも明瞭な逆累帯構造を示していることを考慮すると,2)の可能性が高い.すなわち,斑晶コア生成時点では最大2wt.%程度の含水量であったが噴火直前により含水量の高いマグマ(あるいは水)の混合によりマグマ含水量の増加と斑晶リムの逆累帯構造が形成されたと解釈することができる.ホストの斑晶によって含水量が系統的に異なる(輝石の方が低含水量)ことは,結晶化段階の違いを示していると考えられるが,今後,ガラス包有物の主要成分組成測定などにより検証が必要である.
次に,約1万年前の噴出物中の斑晶ガラス包有物の含水量については,1813年噴火噴出物より系統的に高い含水量であった.約1万年前の噴火の方が1813年の噴火よりより大規模であったと考えられており,初期含水量の違いがこのような結果の違いを生んだのかもしれない.今後より多くの試料について測定を行って詳細を明らかにする必要がある.
諏訪之瀬島火山は日本でも有数の活火山であり,現在もストロンボリ式噴火をはじめとする活発な火山活動を継続している.一方,最近の研究では,当火山は数百年程度の間隔でプリニー式噴火に匹敵する大規模な噴火を行っていることが明らかとなっている(嶋野ほか,2013).このように規模の異なる噴火で噴出したマグマの初期含水量について知ることは,大規模噴火に至るマグマの準備過程を理解する上でも重要であろう.これまで,嶋野・小屋口(2001)は1813年噴火について異なる噴火様式で噴出した噴出物の岩石学的な特徴(全岩主要元素微量元素組成,鉱物組み合わせ,斑晶鉱物・石基鉱物の化学組成)に加えて全岩含水量を測定し,脱ガス程度の違いによって爆発的噴火から溶岩流出噴火へ移行したことを示した.一方,初期含水量については,ガラス包有物が少量かつ微小であるため測定は行わず,Housh & Luhr (1991)の含水量計を用いて推定を行った.この際,斜長石斑晶リムと石基部分が平衡状態にあったと想定して見積もりを行い,約3重量%であったと結論付けた.しかし,Housh and Luhr (1991)による見積もりはしばしば実測値と一致しない場合があることが指摘されている.また,斑晶リム組成はコア組成に比べてAn成分が有意に高く,晶出直前にマグマ混合などの不均質化プロセスを経ている可能性が指摘されており,マグマ全体が約3wt%であったという直接的なデータは得られていない.そこで本研究では,反射法を用いてガラス包有物の含水量を測定し,嶋野・小屋口(2001)による見積もりとの比較を行った.また,1813年噴火より大規模な活動と考えられる1万年前の火砕噴火堆積物中の斑晶ガラス包有物の含水量も測定した.
1813年噴出物の斑晶ガラス包有物の含水量は斜長石が1.0-2.0wt.%程度,輝石は0.6-1.2wt.%程度,1万年前の斑晶ガラス包有物の含水量は斜長石が1.4-3.0wt.%程度,輝石が2.0-2.4wt.%程度となった.
まず,1813年噴出物については,嶋野・小屋口(2001)の推定値である約3.0wt%と比較するといずれのガラス包有物も低い測定値を示しており,このことは1)嶋野・小屋口(2001)の過大見積り,2)ガラス包有物が同見積値とは異なるタイミングの含水量を反映している,の2点の可能性が挙げられる.斑晶ガラス包有物はいずれも斑晶中央部のコア付近に包有されている.また,斜長石斑晶,輝石斑晶いずれも明瞭な逆累帯構造を示していることを考慮すると,2)の可能性が高い.すなわち,斑晶コア生成時点では最大2wt.%程度の含水量であったが噴火直前により含水量の高いマグマ(あるいは水)の混合によりマグマ含水量の増加と斑晶リムの逆累帯構造が形成されたと解釈することができる.ホストの斑晶によって含水量が系統的に異なる(輝石の方が低含水量)ことは,結晶化段階の違いを示していると考えられるが,今後,ガラス包有物の主要成分組成測定などにより検証が必要である.
次に,約1万年前の噴出物中の斑晶ガラス包有物の含水量については,1813年噴火噴出物より系統的に高い含水量であった.約1万年前の噴火の方が1813年の噴火よりより大規模であったと考えられており,初期含水量の違いがこのような結果の違いを生んだのかもしれない.今後より多くの試料について測定を行って詳細を明らかにする必要がある.