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[AAS21-15] カナダ・チャーチルにおける大気中メタン濃度とその炭素・水素同位体比の変動
キーワード:メタン, 炭素・水素同位体比, ハドソン湾低地, 湿地
二酸化炭素に次いで重要な温室効果気体であるメタン(CH4)の変動原因を明らかにするためには、その放出源に関する情報を持つ炭素・水素同位体比(δ13CH4、δD-CH4)の同時高精度観測が有効である。カナダ・チャーチル(58.44’N, 93.50’W)が位置するハドソン湾低地は、世界で二番目に広大な湿地帯であり(Glooschenko et al., 1994)、北半球高緯度域におけるCH4の主要な放出源の一つであると考えられているが、これまで系統的なδ13CH4、δD-CH4観測は行われていなかった。我々は、2007年4月からカナダ環境省研究所と共同で、カナダ・チャーチルにおける週に2度の系統的大気採取を実施し、CH4濃度、δ13CH4、δD-CH4の時系列観測を継続している。本研究では、これまでに得られた観測データを解析し、チャーチルにおけるCH4濃度の変動原因を明らかにした。
チャーチルで観測されたCH4濃度は、全球的な観測ネットワーク(例えばNOAA/ESRL/GMD)でも観測されているように、観測を開始した2007年以降は経年的な増加傾向を示した。北極域のバックグラウンド大気を観測しているスバールバル諸島・ニーオルスン(78.55’N, 11.56’E)と比較して、チャーチルのCH4濃度は年間を通じて常に高濃度であり、δ13CH4、δD-CH4は年間を通じて低い値を示した。CH4濃度とδ13CH4は共に明瞭な季節変動を示し、極大値はそれぞれ1-2月と5月に、極小値が6-7月と10月に観測された。δD-CH4は、不明瞭ながらも、初夏に最大となる季節変動を示した。それぞれの季節変動の位相は、ニーオルスンにおける季節変動よりも半月から1ヶ月ほど早く、夏期にチャーチル周辺の湿地からCH4が放出されていることが示唆された。年間を通じて短周期の不規則な高濃度CH4が観測された。同時に観測されたδ13CH4、δD-CH4と合わせて解析を行なった結果、夏期には湿地起源、冬期には化石燃料起源の影響が大きいことが明らかとなった。
チャーチルで観測されたCH4濃度は、全球的な観測ネットワーク(例えばNOAA/ESRL/GMD)でも観測されているように、観測を開始した2007年以降は経年的な増加傾向を示した。北極域のバックグラウンド大気を観測しているスバールバル諸島・ニーオルスン(78.55’N, 11.56’E)と比較して、チャーチルのCH4濃度は年間を通じて常に高濃度であり、δ13CH4、δD-CH4は年間を通じて低い値を示した。CH4濃度とδ13CH4は共に明瞭な季節変動を示し、極大値はそれぞれ1-2月と5月に、極小値が6-7月と10月に観測された。δD-CH4は、不明瞭ながらも、初夏に最大となる季節変動を示した。それぞれの季節変動の位相は、ニーオルスンにおける季節変動よりも半月から1ヶ月ほど早く、夏期にチャーチル周辺の湿地からCH4が放出されていることが示唆された。年間を通じて短周期の不規則な高濃度CH4が観測された。同時に観測されたδ13CH4、δD-CH4と合わせて解析を行なった結果、夏期には湿地起源、冬期には化石燃料起源の影響が大きいことが明らかとなった。