日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS21] 大気化学

2015年5月28日(木) 11:00 〜 12:45 201B (2F)

コンビーナ:*澤 庸介(気象研究所海洋・地球化学研究部)、竹川 暢之(首都大学東京 大学院理工学研究科)、金谷 有剛(独立行政法人海洋研究開発機構地球環境変動領域)、高橋 けんし(京都大学生存圏研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、座長:笹川 基樹(独立行政法人国立環境研究所)

11:30 〜 11:45

[AAS21-15] カナダ・チャーチルにおける大気中メタン濃度とその炭素・水素同位体比の変動

*藤田 遼1森本 真司1梅澤 拓2Worthy Doug3青木 周司1中澤 高清1 (1.東北大学大学院理学研究科大気海洋変動観測研究センター、2.国立環境研究所、3.カナダ環境省研究所)

キーワード:メタン, 炭素・水素同位体比, ハドソン湾低地, 湿地

二酸化炭素に次いで重要な温室効果気体であるメタン(CH4)の変動原因を明らかにするためには、その放出源に関する情報を持つ炭素・水素同位体比(δ13CH4、δD-CH4)の同時高精度観測が有効である。カナダ・チャーチル(58.44’N, 93.50’W)が位置するハドソン湾低地は、世界で二番目に広大な湿地帯であり(Glooschenko et al., 1994)、北半球高緯度域におけるCH4の主要な放出源の一つであると考えられているが、これまで系統的なδ13CH4、δD-CH4観測は行われていなかった。我々は、2007年4月からカナダ環境省研究所と共同で、カナダ・チャーチルにおける週に2度の系統的大気採取を実施し、CH4濃度、δ13CH4、δD-CH4の時系列観測を継続している。本研究では、これまでに得られた観測データを解析し、チャーチルにおけるCH4濃度の変動原因を明らかにした。
チャーチルで観測されたCH4濃度は、全球的な観測ネットワーク(例えばNOAA/ESRL/GMD)でも観測されているように、観測を開始した2007年以降は経年的な増加傾向を示した。北極域のバックグラウンド大気を観測しているスバールバル諸島・ニーオルスン(78.55’N, 11.56’E)と比較して、チャーチルのCH4濃度は年間を通じて常に高濃度であり、δ13CH4、δD-CH4は年間を通じて低い値を示した。CH4濃度とδ13CH4は共に明瞭な季節変動を示し、極大値はそれぞれ1-2月と5月に、極小値が6-7月と10月に観測された。δD-CH4は、不明瞭ながらも、初夏に最大となる季節変動を示した。それぞれの季節変動の位相は、ニーオルスンにおける季節変動よりも半月から1ヶ月ほど早く、夏期にチャーチル周辺の湿地からCH4が放出されていることが示唆された。年間を通じて短周期の不規則な高濃度CH4が観測された。同時に観測されたδ13CH4、δD-CH4と合わせて解析を行なった結果、夏期には湿地起源、冬期には化石燃料起源の影響が大きいことが明らかとなった。