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[SVC47-04] 霧島火山群,甑岳火山の発達史-小型成層火山の形成過程-
キーワード:霧島火山群, 甑岳火山, 成層火山, 溶岩, 古加久藤湖
霧島火山群は,多様な形態の火山から構成される火山群であり,火山体の分類を行うのに良好なフィールドとなる.山頂を中心に裾野が広がる成層火山と似た形態の高千穂峰,御鉢は,井ノ上(1988),筒井・他(2007)によって急成長した発達過程が明らかにされている.この様な推移について,霧島火山群の他の火山においても起きているのか検討をする必要がある.霧島火山群では,飯盛山,甑岳,丸岡山がこれらに近い成層火山の特徴を有しており,高千穂峰,御鉢との比較検証が可能と考えられる.この中でも甑岳火山はテフラと溶岩の関係を明らかにすることができたため,その発達過程について示し火山体形成の比較議論を行う.霧島火山群を起源とするテフラ層の中で,韓国岳-小林テフラ(Kr-Kb)と入戸火砕流堆積物の間に,降下スコリア層があることが知られている.この降下スコリア層は,飯盛山に向かい層厚を増すことより,飯盛山スコリア層と呼ばれていた(遠藤・小林ローム研究グループ, 1969).一方,Imura(1992)は,同層の等層厚線図より韓国岳が給源であると推定し,韓国岳スコリアと改称した.同層の等層厚線,粒径が甑岳火山に向かい増加することを示し,甑岳-白鳥下湯1~10テフラ(Ks-Ss1~Ks-Ss10)と再定義した.次に,甑岳火山を起源とする溶岩は,霧島火山群の北域に広く分布しており(沢村・松井, 1957; 井村・小林, 2001),火口からの到達距離は7 kmを超える.甑岳溶岩の表面積は約30 km2となり,安山岩溶岩としては規模の大きなものである.2011年11月から始まった西之島において大量の溶岩噴出が継続している現在,大規模な溶岩噴出例としてもその噴火推移を示す必要がある.甑岳火山の活動は,初期に小~中規模のブルカノ式噴火の活動から始まった.Ks-Ss1~Ks-Ss5は小~中規模の噴火活動を行っていたが,Ks-Ss6の時に急に大量の溶岩と降下火砕物を噴出する噴火活動に変化した.Ks-Ss1~Ks-Ss6では噴火毎に短い静穏期があったと考えられるが,Ks-Ss1~Ks-Ss6間の土壌発達は貧弱であり静穏期間は長くなかったと推定される.城ヶ崎ではKs-Ss7a~Ks-Ss8間に泥炭層,湖成層が認められることより,数百年以上の静穏期があったと考えられる.その後,Ks-Ss8~Ks-Ss9は比較的短時間の活動を行い,Ks-Ss10のブルカノ式噴火で成長を止めた.御鉢火山では,約1300年前から活動を開始し,500年後に山体を成長させた高原スコリア噴火を発生させた(筒井・他,2007).高千穂峰の複合火山も,古高千穂-蒲牟田テフラの噴出から1000年内に主たる活動が生じ,高千穂峰-王子テフラでほぼその活動を終えたと考えられている(井ノ上, 1988).最初期の小~中規模の活動から,前期の急激に山体を成長させる活動に至った.初期の相対的な小規模な活動を経て,急激に成長する火山体の発達過程は,これらの火山に共通した特徴と言え,成層火山の成長には急激に噴出率が上がる時期があると考えられる.