日本地球惑星科学連合2015年大会

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[U-06] 宇宙・太陽から地球表層までのシームレスな科学の新展開

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*松見 豊(名古屋大学太陽地球環境研究所)、草野 完也(名古屋大学太陽地球環境研究所)、石坂 丞二(名古屋大学地球水循環研究センター)、坪木 和久(名古屋大学・地球水循環研究センター)、榎並 正樹(名古屋大学 年代測定総合研究センター)

18:15 〜 19:30

[U06-P03] 気候変動に関与するエアロゾルの諸特性の実験および観測研究

*中山 智喜1松見 豊1 (1.名古屋大学太陽地球環境研究所)

キーワード:エアロゾル, 光学特性, 吸湿特性, 新粒子生成, 気候変動

大気エアロゾルには、様々な自然および人為起源発生源から直接排出される一次粒子と、大気微量成分の気相もしくは水溶液相での酸化反応を経て生成する二次粒子がある。これらのエアロゾルは、太陽光を光吸収・光散乱したり、雲凝結核(CCN)として働いて雲粒の粒径や寿命を変化させたりすることで、地球大気の放射収支を直接もしくは間接的に変化させている。
ブラックカーボン(BC)粒子は、可視領域において最も寄与の大きな光吸収性エアロゾルであると考えられているが、近年、短波長可視から紫外領域で、光吸収性を有する有機エアロゾル(ブラウンカーボン、BrC)が存在し、短波長域における放射収支や紫外光により駆動される光化学反応過程に対し、無視できない寄与を有している可能性が指摘されている。エアロゾルの光学特性は、波長に加えて、粒子の粒径、形状、混合状態、および屈折率(化学成分)に依存して複雑に変化すると考えられるが、その理解は不十分なのが現状である。近年、キャビティリングダウン(CRDS)法や光音響分光法(PAS)法を用いることで、エアロゾルの消散および吸収係数を、粒子が浮遊した状態で直接計測することが可能となってきている。我々は、これらの手法を用いて、BCやBrCの光学特性の観測研究や、様々な揮発性有機化合物の酸化反応により生成した二次有機エアロゾル(SOA)およびディーゼル排ガス粒子の光学特性の室内実験研究を行っている。
エアロゾルが、高湿度環境下でどれだけ水蒸気を取り込み成長するかを表す吸湿性は、放射への直接および間接効果を推定する上で重要な特性の一つである。我々は、自作のCRDS装置を用いて、消散係数の湿度依存性を測定し、エアロゾルの吸湿性について調べている。また、CCN数の決定に重要な役割を果たしていると考えられている新粒子生成イベントの観測研究にも参画している。これらのエアロゾルの光学および物理化学特性の研究は、国内の様々な研究グループと共同で進めている。本発表では、我々の最近の研究成果を紹介するとともに、異なる専門分野のグループとの協力の可能性など、今後の研究の展望について議論したい。