日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS25] 強震動・地震災害

2015年5月25日(月) 09:00 〜 10:45 A04 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*元木 健太郎(小堀鐸二研究所)、座長:森川 信之(防災科学技術研究所)、浅野 公之(京都大学防災研究所)

10:30 〜 10:45

[SSS25-07] 2014年11月22日長野県北部の地震による長野善光寺の石灯籠の被害と強震動

*加藤 護1 (1.京大院人間・環境学)

キーワード:強震動, 2014年長野県北部地震

2014年11月22日に長野県北部を震源とする気象庁マグニチュード6.7の地震が発生した。震源地付近で震度6弱の強い揺れとなり、白馬村や小谷村などで家屋等に多大な被害が出た。長野市中心部に存在する長野善光寺でも鐘楼の土台の破損や多数の石灯籠の倒壊など被害が出た。この地域の歴史地震のひとつに1714年の地震があるが、この際にも善光寺の石灯籠の被害が生じたとの記録が残っている。白馬盆地の被害分布を考え合わせると今回の地震と揺れの特徴が類似していた可能性が示唆される。
糸魚川・静岡構造線北部で発生する地震による地震動予測を精緻化するうえで今回の地震で生じた長野善光寺に代表される長野市街の被害を整理しその原因となった強震動を検討することは重要であると考えられる。以上を踏まえわれわれは11月22日の地震によって生じた長野善光寺の石灯籠の現地調査を行った。本発表では調査の結果を整理し、この被害を引き起こした強震動の特徴に関する予察を示す。
被害の調査は地震翌日の11月23日に行った。11月30日及び12月1日に追加調査を行ったが、既に一部で復旧が始まっており両日の結果に差異がある場合は23日に確認した被害を採用した。われわれは1847年善光寺地震による石灯籠の被害の把握を目的として2013年夏に善光寺石灯籠の悉皆調査を行っている(日岡,2014;加藤・日岡,2014)。今回の調査は2013年の調査記録をベースとしている。日岡(2014)などでは石灯籠のみを調査対象としていたが、今回は石塔の被害も確認できたので合わせて報告する。
なお、長野市中心部では長野地方気象台で震度5強、防災科研K-net NGN004観測点で震度4が観測されている。
被害発生後の改変の可能性がほぼない石灯籠65基、石塔12基について部位の落下や転倒を確認した。石灯籠の被災率は約3割5分程度である。この他に部位の回転などの被害も確認された。被害を受けた石灯籠などの分布は境内内で偏りがないようにみえる。落下や倒壊の方位は偏って分布しており、被害を引き起こした強震動の特徴を反映していると考えられる。
石灯籠などの小型構造物は一般に0.3~0.5Hz程度の固有周期を持つ。善光寺に近い長野地方気象台の波形はこの周期帯の成分に富んでいたことから長野善光寺の石灯籠の被害はこの短周期の揺れを反映している可能性が考えられる。

謝辞:気象庁と防災科研で公開されている強震波形記録を用いました。