日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62] スロー地震

2015年5月28日(木) 09:15 〜 10:45 303 (3F)

コンビーナ:*廣瀬 仁(神戸大学都市安全研究センター)、小原 一成(東京大学地震研究所)、中田 令子(海洋研究開発機構地震津波海域観測研究開発センター)、座長:宮崎 真大(九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻)、小原 一成(東京大学地震研究所)

10:30 〜 10:45

[SCG62-18] ニュージーランド北島沖合ヒクランギ沈み込み帯における地震活動および地震波速度構造

蓜島 大資1、*望月 公廣1Stuart Henrys2塩原 肇1山田 知朗1篠原 雅尚1Bill Fry2Stephen Bannister2 (1.東京大学地震研究所、2.GNS Science)

キーワード:地震活動, スロースリップ, プレート境界, 構造

ニュージーランド北島沖合のヒクランギ沈み込み帯では通常の海洋性地殻のおよそ1.5倍である12kmもの厚い地殻を持つヒクランギ海台がオーストラリアプレートの下に沈み込んでいる。プレート境界面の深さが浅いため、反射法地震探査によりプレート境界の構造が詳細に求められており、沈み込む海山や、反射強度の強い領域(HRZ: High-amplitude Reflectivity Zone)などの不均質構造の存在が明らかになっている[Bell et al., 2010 など]。北島では2000年頃から沿岸のGPS観測網が整備され、この沈み込み帯におけるプレート間のカップリング係数が推定された。ヒクランギ沈み込み帯北部(南緯40°以北)では固着域が狭く、下限が深さ10km程度と浅い。固着域のほぼ全域が海底下となるが、海底地震観測はこれまで行われてこなかったため、海域での地震活動や震源分布については良く分かっていない。固着域の下限付近ではスロースリップイベント(SSE)が観測されており、他の沈み込み帯と比べて非常に浅いところで起こっていることが特徴的である。これらのイベントには微動や群発地震が伴うことが知られている[Kim et al., 2010; Delahaye et al., 2009]。
 海域下の地震やSSEに伴う低周波イベントを調査するため、ヒクランギ沈み込み帯で初めての海底地震観測が行われた。2012年4月に4台の海底地震計が設置され、約一年後に回収された。北側2台は広帯域地震計で南側の2台は1Hz地震計である。広帯域地震計のうちひとつがレコーダーの不具合により記録が断続的になってしまっているが、他の3点では良好なデータが得られた。観測期間終盤の2013年2月中旬から観測網の南でSSEが発生した。まずSTA/LTAアルゴリズムによってイベント波形を抽出し、手動検測により震源を求めた。そのイベントをテンプレートとして用いてマッチドフィルター法を適用することでさらにイベント数を増やすことに成功した。これらのイベントはP波、S波それぞれ相互相関を取ることにより相対走時差を求め、絶対走時と相対走時を用いた震源再決定および構造決定手法(TOMODD[Zhang and Thurber, 2003])を用いて震源が決定された。初動極性からメカニズム解も求めた。陸の観測点だけでは捉えられない、イベントを多く捉えることができた。プレート境界近傍のイベントに注目すると、固着域や沈み込む海山、HRZでのイベントはほとんど見られず、HRZの縁辺で地震活動が活発な領域が見られた。速度構造解析ではおおむね先行研究と同様の結果が得られたが、今まで解像できなかった領域の構造も求めることができた。また、SSEに伴いすべり域北限付近で活発化した地震活動を捉えることができた。過去のSSEでもそれに伴ってすべり域の縁辺で地震活動が活発化した事例が数例確認できる。これらはいずれも局所的な活動で、定常的に地震活動が活発な地域と一致する。これらの地域にはプレート境界の不均質に起因する小規模な固着域が存在する可能性がある。