日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS24] リアルタイム地震情報システムの発展と利活用

2015年5月27日(水) 09:00 〜 10:45 A06 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*山田 真澄(京都大学防災研究所)、中村 雅基(気象庁)、干場 充之(気象研究所)、鶴岡 弘(東京大学地震研究所)、青井 真(独立行政法人防災科学技術研究所)、山本 俊六(鉄道総合技術研究所)、座長:山田 真澄(京都大学防災研究所)、山本 俊六(鉄道総合技術研究所)

09:45 〜 10:00

[SSS24-04] オンサイト警報のためのP波、S波識別フィルターの提案

*堀内 茂木1 (1.株式会社 ホームサイスモメータ)

キーワード:オンサイト警報, P波、S波識別フィルター, H/V 変化, 周波数変化, 震度予測, 自動震源決定

1.はじめに オンサイト警報システムでは,P波とS波とを正しく区別して,震度予測を行うようにすることが重要である.P波とS波との平均振幅は約5倍違うことから,P波とS波とを区別できなく,S波をP波であると間違えると,最大振幅や震度の予測に大きな誤差が生ずる.海溝型地震を除くと,大きな被害を及ぼす地震は30km以内の地震であり,(S-P)時間は3-4秒であることから,S波到着直後の短い時間区間のデータを用いて,S波到来を決定する必要がある.また,大地震直後の,多数の地震が頻発する場合の自動震源決定システムの開発では,P波とS波とを間違える場合もある.そこで,P波とS波とを識別するためのフィルター開発を行ったので報告する.
2.P波,S波識別フィルター 1)P波は上下動成分の振幅がより大きく,S波は水平動成分がより大きいこと,2)S波の卓越周波数は,P波に比べ長いことが知られている.水平動成分と,上下動成分の振幅比(H/V)をプロットすると,P波到来時にこの値が減少し,S波到来時に増加する.しかし,微弱な遠地地震が含まれていると,P波到来時にH/Vは大きくなる.また,P波コーダの中に,H/Vが大きい位相が含まれている場合が多く,H/Vの値のみからS波到来を判断することは困難である.卓越周波数についても同様である.そこで,P波とS波とを識別するための以下のフィルターを提案する.
F(t)={bZ(t)-NS(t)-EW(t)} ―c{V(t)-rA(t)}                   (1)
 ここでZ(t),NS(t),EW(t):上下,南北,東西成分の絶対値の移動平均,V(t);3成分速度波形の絶対値の移動平均,A(t);3成分加速度波形の絶対値の移動平均,r:P波コーダ部分のV(t)とA(t)の平均値の比(r=V/A),b:上下動と水平動の振幅比(=2),c:H/V変化と周波数変化との重み(0.3)
 式(1)の第1項は,上下動と水平動の振幅変化に対応し,上下動成分が卓越するP波が到着すると正,水平動が卓越するS波が到着すると負になる.第2項は,卓越周波数の変化に対応し,卓越周波数の低いS波が到着すると負になる. 
3.結果 震度5弱以上の地震について,防災科学技術研究所のK-NETによる波形データを用いて,今回提案するフィルターの有効性を調べた.上下動成分の波形と,フィルター出力とを比較した結果,ほぼ例外なく,S波が到着すると,フィルター出力が負になり,かつ,その振幅の絶対値は,P波コーダ部分のそれの数倍になることが示された.このフィルターを用いることにより,高精度のオンサイト警報システムの開発が可能であることが示された.大地震発生直後で,余震が頻発する場合の自動震源決定時には,P波とS波との区別が難しいが,このフィルターは,このような場合の自動震源決定にも有効であることが示された.