日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)

18:15 〜 19:30

[SVC45-P07] 2013年箱根火山群発地震活動に伴うGNSS歪場の時空間変化

*道家 涼介1原田 昌武1行竹 洋平1代田 寧1里村 幹夫1 (1.神奈川県温泉地学研究所)

キーワード:箱根火山, 群発地震活動, GNSS, 歪場

箱根火山では,2001年に発生した群発地震以降,2006年,2008~2009年,2011年,2013年と数年おきに地震活動の活発化が認められている(例えば,原田ほか,2013).GNSS観測の結果などからは,東北地方太平洋沖地震によって誘発された2011年の群発地震活動を除き,地震活動の活発化に対応した山体膨張を示す地殻変動が検出されている(例えば,代田ほか,2009;原田ほか,2009).2013年1~2月の群発地震活動は,2001年に次いで,観測史上2番目の規模の群発地震活動であり,同期間に震源決定された地震数は約1800回にのぼる.
温泉地学研究所では,箱根火山およびその周辺地域において12点のGNSS連続観測網を展開しており,周囲のGEONET観測点を含め平均約5kmの観測点間隔をもって,2013年の群発地震活動に伴う地殻変動を観測することができた.過去の群発地震時には,まだ十分な観測点を整備できておらず,この様な観測点密度で,箱根火山の群発地震活動に伴う地殻変動を捉えたのは,2013年が初めてであった.このGNSS観測より明らかとなった変位場・歪場が時空間的にどのように変化したかは,群発地震の発生過程を理解する上で重要である.
GNSSより観測された各観測点の変位量から推定した面積歪は,群発地震発生にやや先立ち2012年12月中~下旬頃より,箱根山を中心に同心円状の膨張を示し,群発地震活動が終息する2月中~下旬頃まで増加した.この間の累積的な面積歪の値(膨張が正)は,箱根山の中央火口丘付近において,約1.7 micro-strainであった.また,面積歪の分布は,GEONET観測点のみで算出した場合には,膨張域を拘束できず,やや南北方向に広がってしまうのに対し,GEONET観測点に温泉地学研究所の観測点を加えた場合では,箱根山を中心とした同心円状の分布に膨張域を拘束することができた.なお,群発地震の発生期間中,膨張域の中心の移動は,ほとんど認められなかった.
面積歪場が同心円状の分布となることから,球状圧力源モデルを検討した.ソースの水平位置については面積歪分布の中心付近(139.000°E,35.215°N)とし,深さについては7kmと10kmを仮定した.体積変化量については,各深さについて,面積歪分布のピーク付近の値が説明可能となるように,それぞれ1.5×106m3と4.0×106m3を与えた.その結果,深さ10kmのモデルの方が,面積歪分布に認められる膨張域の広がりを良く説明できることが分かった.このことは,地震波トモグラフィーの結果から推定されているマグマだまりの深さ約10km(行竹ほか,2014)と調和的である.
以上の結果および考察から,2013年箱根火山群発地震活動に先行し,箱根火山直下の深さ約10km付近に存在するマグマだまりにおいて体積変化(膨張)が生じ,群発地震活動終息までの約2ヶ月の間,膨張が継続したことが推察される.群発地震活動に伴う他の諸現象との関係を整理し,群発地震活動の発生過程をより詳細に明らかにすることが今後の課題である.