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[HGM02-02] 柱状節理の発達した花崗斑岩の皮殻を伴う球状風化過程
キーワード:球状風化, 風化皮膜, 花崗斑岩, 亀裂, 酸化, P波速度
紀伊半島南東部の花崗斑岩山地には,厚い風化帯があり,花崗斑岩の基盤岩が直径0.4-1.5 mの球形のコアストンに風化し,コアストンの表面に鱗状の層(皮殻)が生じている.この風化現象は球状風化と呼ばれ,その際の皮殻は化学的風化によって剥離した結果であると古くから考えられている.しかしながら,皮殻形成の際の化学的変質に伴う物理的性質の変化や亀裂発達の過程は解明されていなかった.そこで,その中新世の熊野酸性岩類の花崗斑岩を対象にして,地表踏査と露頭観察,ならびに採取試料の表面観察と鉱物-化学的分析,物理的性質の測定を行った.その結果,次のように球状風化が進んでいることが分かった.花崗斑岩は2-6 m間隔のほぼ鉛直の柱状節理をもち,地表付近では,斜面に沿ったシーティング節理に切られて角柱のブロックになる.球状風化は,柱状節理やシーティング節理から褐色化(酸化)が進むことにより始まる.コアストンの半径に因らず,褐色帯は2.5-5 ㎝の厚さであり,最もコアストン側の皮殻が3.5-5 cmの厚さであることから,褐色帯が約5 ㎝の厚さを超えると剥離が生じると考えられる.薄片観察やX線回折分析によれば,黄鉄鉱や緑泥石の酸化と水酸化鉄の形成が褐色化の際に生じる.褐色化が進むにつれて,細孔が水酸化鉄に充填されていることや微小亀裂が褐色前線と平行に形成されていることが紫外線照射のもとで行う蛍光観察によって明らかになった.また,褐色帯や皮殻内部に認められる亀裂は,鉄の水酸化物とバーミキュライトとの集合体に収束する傾向があり,0.5-2 cm間隔で鱗状を成す.褐色帯では,P波速度は最大10%速くなったが,褐色境界と平行な面の圧裂引張強度は低下した.これらの物理的性質の変化は,細孔充填と亀裂発達の影響であると考えられる.岩石の密度と化学組成を用いたマスバランス計算によれば,褐色帯や内側の皮殻では未だに体積膨張は認められなかったが,亀裂がさらに増加した外側の皮殻では20%,マサでは80%,未風化岩よりも体積増加を示した.以上の結果は,亀裂発達と皮殻の剥離の原因が鉄の水酸化物の間隙への沈殿に伴う体積膨張であることを示唆している.また,マスバランス計算は化学成分が褐色帯と皮殻,マサで,構成鉱物の変化と調和的に溶脱されていることを示した.酸素の拡散と溶脱によって,コアストンは皮殻を次々と生じて小さくなりつつ,節理に近い皮殻は斜長石を失い,内部に亀裂を発達させる.皮殻は最終的にマサになり,マサ中に皮殻に包まれたコアストンが生じる.