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[HQR23-P07] 茨城県中部・友部丘陵で見いだされた古期ローム層と風成砂層
キーワード:友部丘陵, 風成砂層, HBPテフラ, 友部層, 更新統
1.はじめに
茨城県中西部には,北から瓜連丘陵・友部丘陵そして柿岡盆地などの丘陵が発達している.これらの丘陵には第四系の引田層および友部層が分布している(坂本ほか,1976, 1979).引田層と友部層には,同じテフラが挟在しており,ほぼ同時代の堆積物である.しかし引田層や友部層の年代については,以下に示すように研究者によって異論があり確証が得られていない. 1) 宮崎ほか(1996)は柿岡盆地の友部層を下総層群地蔵堂層下部に対比されるとした.2) 鈴木・町田(2000)は瓜連丘陵の粟河軽石層を大田原火砕流堆積物に対比し,その年代観に基づき友部層をMIS9の時期のものとした.3) 大井ほか(2006, 2007)では友部層や引田層は上総層群の堆積年代まで遡る可能性を示唆した.最近では,4) 引田層に含まれる火砕物のフィッショントラック年代から,鮮新統であるという見解も出されている(山元,2012).
ところが最近友部丘陵において,友部層を覆う古期ローム層中に風成と思われる砂層が挟在し,古期ローム層には,多摩ローム層の主要鍵層であるGoPおよびHBPと対比されるテフラが見いだされた.風成砂層は地蔵堂層堆積直後の海岸砂丘の堆積物とみなされることから,下総層群の時代の海は友部丘陵には侵入していない可能性が高いことが判明した.
2.友部丘陵の古期ローム層に挟まれる風成砂層
水戸市北西部の,友部層を覆う古期ローム層中に挟在する厚さ3-5mの淘汰の良い中粒砂層について,現在の阿字ヶ浦海岸の砂丘砂と粒度組成を比較し,これが風成層であることが明らかとなった.それは友部丘陵より東側の東茨城台地西縁に,砂を供給する海岸があったことを示している.
3.古期ローム層のテフラの対比
水戸市北西部武具池の,友部層が露出する露頭で,確認できるテフラを下からT1からT8と名付け対比を検討した.
T1, T2は低屈折率の角閃石を含み,T1はさらにカミングトン閃石を含む.上位のT3が次に述べるHBPに対比されることから,多摩Ⅰローム層中のHBPより下位の角閃石を含むテフラであると考えられる.
T3は黒雲母密集層で,チタン磁鉄鉱の主成分分析を行い,対比候補とみなされる大町APmおよび上宝火砕流堆積物(KMT)と比較した.その結果,1/3の主成分がAPmの主成分とほぼ一致した.さらにT3は,上部が軽石質で低屈折率の角閃石を含む.このような,細粒なAPmに粗粒な軽石が重なる特徴は,HBP, J4, TE-5などと各地で呼ばれているテフラの特徴と類似し,対比される可能性が高い.
T5は角閃石と石英を多く含むテフラで,次に述べるT6がMIS8に降灰したAz-MiPに対比されることから,MIS9の多摩ローム層の鍵層であるGoPに対比される可能性が高い.
T6は角閃石の他に岩片を多く含む特徴がある.上位のT7はカミングトン閃石を多く含む特徴なテフラである.T6とT7の組合せは,涸沼川中流の上泉層に見られるカミングトン閃石を含むOgPと,その下位で上泉層の基底礫層直上の泥炭層に挟在し,角閃石と岩片を含むAz-MiPとの組合せと類似している.北関東道工事露頭でも類似した組合せのテフラが見いだされており,両者は対比される可能性が高い.
4.テフラ層序と友部層
古期ローム層中の風成砂層は,その下位の下部ローム層中に挟在するT3が地蔵堂層のテフラJ4に対比されることから,地蔵堂層の堆積直後に生成された可能性が高い.T3と友部層の間には2.5mのローム層があり,友部層と下部ローム層の境界は斜交していて,不整合と考えられる.以上のことから,友部層は地蔵堂層より古い地層と見なされる.したがって,地蔵堂層を形成したMIS11の海進は友部丘陵には達しなかったことになる.また古期ローム層下部に含まれるT1, T2は,友部丘陵の北関東道工事露頭において友部層サイクル2あるいは友部丘陵の高位面とした堆積物中に見いだされたkkmテフラ群(大井ほか,2006)と類似し,瓜連丘陵の引田層を覆う所貫礫層にも類似したテフラがある.これらのテフラは多摩Ⅰローム層のKMTとHBPの間に位置すると考えられ(関東火山灰グループ,2001),約50万年前頃の年代が想定される.したがって,友部層主要部や引田層はこれより古いことになる.
引用文献
関東火山灰グループ 2001.地球科学 55: 23-36.
宮崎ほか 1996.真壁地域の地質.地質調査所.
坂本・宇野沢 1976,地質調査所月報 27: 655-664.
坂本・宇野沢 1979,地質調査所月報 30: 269-283.
鈴木・町田 2000,日本の地形4-関東.伊豆小笠原- 22-36.
大井ほか 2006,日本第四紀学会講演要旨集 36: 168-169.
大井ほか 2007,日本地球惑星科学連合大会予稿集 Q139-P004.
山元 2012,地質調査総合センター研究資料集 562: 1-7
茨城県中西部には,北から瓜連丘陵・友部丘陵そして柿岡盆地などの丘陵が発達している.これらの丘陵には第四系の引田層および友部層が分布している(坂本ほか,1976, 1979).引田層と友部層には,同じテフラが挟在しており,ほぼ同時代の堆積物である.しかし引田層や友部層の年代については,以下に示すように研究者によって異論があり確証が得られていない. 1) 宮崎ほか(1996)は柿岡盆地の友部層を下総層群地蔵堂層下部に対比されるとした.2) 鈴木・町田(2000)は瓜連丘陵の粟河軽石層を大田原火砕流堆積物に対比し,その年代観に基づき友部層をMIS9の時期のものとした.3) 大井ほか(2006, 2007)では友部層や引田層は上総層群の堆積年代まで遡る可能性を示唆した.最近では,4) 引田層に含まれる火砕物のフィッショントラック年代から,鮮新統であるという見解も出されている(山元,2012).
ところが最近友部丘陵において,友部層を覆う古期ローム層中に風成と思われる砂層が挟在し,古期ローム層には,多摩ローム層の主要鍵層であるGoPおよびHBPと対比されるテフラが見いだされた.風成砂層は地蔵堂層堆積直後の海岸砂丘の堆積物とみなされることから,下総層群の時代の海は友部丘陵には侵入していない可能性が高いことが判明した.
2.友部丘陵の古期ローム層に挟まれる風成砂層
水戸市北西部の,友部層を覆う古期ローム層中に挟在する厚さ3-5mの淘汰の良い中粒砂層について,現在の阿字ヶ浦海岸の砂丘砂と粒度組成を比較し,これが風成層であることが明らかとなった.それは友部丘陵より東側の東茨城台地西縁に,砂を供給する海岸があったことを示している.
3.古期ローム層のテフラの対比
水戸市北西部武具池の,友部層が露出する露頭で,確認できるテフラを下からT1からT8と名付け対比を検討した.
T1, T2は低屈折率の角閃石を含み,T1はさらにカミングトン閃石を含む.上位のT3が次に述べるHBPに対比されることから,多摩Ⅰローム層中のHBPより下位の角閃石を含むテフラであると考えられる.
T3は黒雲母密集層で,チタン磁鉄鉱の主成分分析を行い,対比候補とみなされる大町APmおよび上宝火砕流堆積物(KMT)と比較した.その結果,1/3の主成分がAPmの主成分とほぼ一致した.さらにT3は,上部が軽石質で低屈折率の角閃石を含む.このような,細粒なAPmに粗粒な軽石が重なる特徴は,HBP, J4, TE-5などと各地で呼ばれているテフラの特徴と類似し,対比される可能性が高い.
T5は角閃石と石英を多く含むテフラで,次に述べるT6がMIS8に降灰したAz-MiPに対比されることから,MIS9の多摩ローム層の鍵層であるGoPに対比される可能性が高い.
T6は角閃石の他に岩片を多く含む特徴がある.上位のT7はカミングトン閃石を多く含む特徴なテフラである.T6とT7の組合せは,涸沼川中流の上泉層に見られるカミングトン閃石を含むOgPと,その下位で上泉層の基底礫層直上の泥炭層に挟在し,角閃石と岩片を含むAz-MiPとの組合せと類似している.北関東道工事露頭でも類似した組合せのテフラが見いだされており,両者は対比される可能性が高い.
4.テフラ層序と友部層
古期ローム層中の風成砂層は,その下位の下部ローム層中に挟在するT3が地蔵堂層のテフラJ4に対比されることから,地蔵堂層の堆積直後に生成された可能性が高い.T3と友部層の間には2.5mのローム層があり,友部層と下部ローム層の境界は斜交していて,不整合と考えられる.以上のことから,友部層は地蔵堂層より古い地層と見なされる.したがって,地蔵堂層を形成したMIS11の海進は友部丘陵には達しなかったことになる.また古期ローム層下部に含まれるT1, T2は,友部丘陵の北関東道工事露頭において友部層サイクル2あるいは友部丘陵の高位面とした堆積物中に見いだされたkkmテフラ群(大井ほか,2006)と類似し,瓜連丘陵の引田層を覆う所貫礫層にも類似したテフラがある.これらのテフラは多摩Ⅰローム層のKMTとHBPの間に位置すると考えられ(関東火山灰グループ,2001),約50万年前頃の年代が想定される.したがって,友部層主要部や引田層はこれより古いことになる.
引用文献
関東火山灰グループ 2001.地球科学 55: 23-36.
宮崎ほか 1996.真壁地域の地質.地質調査所.
坂本・宇野沢 1976,地質調査所月報 27: 655-664.
坂本・宇野沢 1979,地質調査所月報 30: 269-283.
鈴木・町田 2000,日本の地形4-関東.伊豆小笠原- 22-36.
大井ほか 2006,日本第四紀学会講演要旨集 36: 168-169.
大井ほか 2007,日本地球惑星科学連合大会予稿集 Q139-P004.
山元 2012,地質調査総合センター研究資料集 562: 1-7