日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG09] Satellite Earth Environment Observation

2015年5月27日(水) 11:00 〜 12:45 301B (3F)

コンビーナ:*沖 理子(宇宙航空研究開発機構)、早坂 忠裕(東北大学大学院理学研究科)、佐藤 薫(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、佐藤 正樹(東京大学大気海洋研究所)、高橋 暢宏(独立行政法人 情報通信研究機構)、本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、奈佐原 顕郎(筑波大学生命環境系)、中島 孝(東海大学情報理工学部情報科学科)、沖 大幹(東京大学生産技術研究所)、横田 達也(独立行政法人国立環境研究所)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)、村上 浩(宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター)、岡本 創(九州大学)、座長:可知 美佐子(宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター)

12:36 〜 12:39

[ACG09-P03] 偏光情報を利用したGOSAT TANSO-FTS SWIR温室効果ガス濃度導出アルゴリズム

ポスター講演3分口頭発表枠

*菊地 信弘1吉田 幸生1内野 修1森野 勇1横田 達也1 (1.国立環境研究所)

キーワード:衛星観測, 二酸化炭素, GOSAT

TANSO-FTSは温室効果ガス観測技術衛星GOSATに搭載されているFourier変換分光計であり、2009年1月の打ち上げ以来、現在も観測を継続している。TANSO-FTSは、短波長近赤外(SWIR)の3つのバンドにおいて偏光2成分の太陽反射光スペクトルを測定している。この偏光情報を利用すれば、雲やエアロゾルの影響がより良好に補正され、温室効果ガス濃度の導出精度が向上することが期待される。現時点において、TANSO-FTSの偏光情報を利用した温室効果ガス濃度導出アルゴリズムはまだ実現されていない。本研究で、我々は初めてTANSO-FTSの実観測データから二酸化炭素のカラム平均濃度(XCO2)を導出した結果を提示する。

観測データを解析するときに最も重要な点の一つは、TANSO-FTSの偏光2成分の感度校正である。我々はすでに、TANSO-FTSの偏光感度に校正誤差がないという理想的な状況におけるシミュレーションにより、偏光情報の利用によってエアロゾル情報量が増加し、XCO2の導出誤差が減少することを示している。現実には、偏光感度は打ち上げ前の地上試験によって決定された値から経年劣化する。打ち上げ後の偏光感度の校正係数が十分な精度で評価されていなければ、仮にTANSO-FTSが持つ偏光情報を利用したとしても、XCO2の導出精度が向上するどころか、むしろ低下する可能性がある。

そこで本研究では、複数の異なる手法で偏光感度の校正係数を評価し、XCO2の導出結果を比較した。代替校正による校正値はKuze et al. (TGRS, 2014)によって報告されている。これに基づくXCO2導出結果を図の青点で示す。これは2011年6月の一ヶ月間のXCO2導出値の緯度断面図である。我々はまた、衛星に搭載されている太陽照度校正用の拡散板の偏光特性を解析し、TANSO-FTSの偏光感度の校正係数を評価することも試みている。これに基づくXCO2導出値を同じ図の赤点で示す。両者を比較すると、代替校正を用いたXCO2導出値はサハラ砂漠で低濃度側にばらつく傾向が見られるが、拡散板を用いた場合にはそれが概ね解消されていることがわかる。また、代替校正を用いた場合には、南アメリカやアフリカ南部の一部でXCO2が高めに導出される領域が存在するが、拡散板を用いた場合にはそのような領域は見られない。

一ヶ月間、陸のみという限定されたデータではあるが、偏光情報を利用するアルゴリズムにおいては、校正係数によってXCO2導出値に顕著な差が生じることが分かった。今後は解析期間を増やすと共に、サングリント観測を利用して評価した校正係数に基づくXCO2導出結果も比較検討する予定である。