日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG59] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2015年5月27日(水) 16:15 〜 18:00 106 (1F)

コンビーナ:*桑野 修(独立行政法人海洋研究開発機構)、大内 智博(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、清水 以知子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、石橋 秀巳(静岡大学大学院理学研究科地球科学専攻)、座長:清水 以知子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

17:36 〜 17:39

[SCG59-P03] 障害物周りでの粉粒体の流れ場と出口における閉塞現象

ポスター講演3分口頭発表枠

*遠藤 圭太1桂木 洋光1 (1.名古屋大学大学院環境学研究科)

キーワード:粉粒体流, 閉塞, 障害物, 粒子追跡法, 平均二乗平均

流動状態にある粉粒体は,ボトルネックとなる出口でアーチ構造を形成して閉塞を起こすことがある.出口幅が粉粒体直径の約6倍以上になると閉塞現象が生じないことが経験的に知られているが,その流量は様々なパラメータに依存して変化する.例えば,流れの中に障害物があると閉塞の発生率が減少することがある[1].そのため,障害物による粉粒体流の流れ場への影響を解明することで,粉粒体の閉塞現象の理解を深めることができると考えられる.また,このような現象の理解は,群衆の避難行動のような人々の流れをコントロールする建築物の構造設計などへも応用されることが期待される.この場合,避難する人々の流れを粉粒体の流れと見なせる.加えて,閉塞現象やアーチ構造形成のような粉粒体特有の非線形的な振る舞いは,地滑りや雪崩などの様々な地球物理現象にも関係すると考えられる.
本研究では,粉粒体の重力による出口流と障害物を用いた簡単な実験を行った.まず,2次元セル内に円盤状の障害物を挿入し,セルを直径6.35 mmのステンレス球で満たす.そして,セルの下部中央に設けた小さな出口を開放し,出口へ向かう粉粒体流を作る.この粉粒体流の流れ場と流量,そして障害物にかかる抵抗力を高速度カメラとロードセルを用いて計測する.このようにして,出口の大きさと障害物距離をパラメータとした時,流れ場や流量がそれらのパラメータにどのように依存するかを実験的に調べる.
高速度カメラで撮影した粉粒体流の動画から,障害物を挿入することにより交互流が発生して空間的に非一様(非対称)な流れ場が生じる様子が観察された.一方で, 出口からの流量がほぼ定常であることも明らかになった.この動画から流れ場をさらに粒子追跡法(PTV法)により解析した.PTV法を用いることで,個々の粒子の軌跡を追うことが可能となる.出口付近と障害物上部の左側,右側の3つの領域に分け,それぞれの領域における流れ場と粒子の充填率の時間変化を算出する.さらに,PTVデータから個々についての平均二乗変位(MSD)を計算する.
本発表では,これらの量と粉粒体流の流量や障害物にかかる抵抗力などの物理量との関係について議論する.さらに,出口幅や障害物距離などのパラメータの依存性から,障害物が粉粒体流の流れ場にどのように影響するかを解明していく.

[1] I. Zuriguel et al., Physical Review Letters 107, 278001 (2011)