18:15 〜 19:30
[SCG64-P17] 熊野灘および南海トラフにおける海底地殻変動
当研究グループでは,熊野灘の4ヵ所(KMN,KMC,KMS,KMEサイト)で,GPS/音響結合方式による海底地殻変動観測を行っている.平成26年度末までに, KMNで2005年から16回,KMCで2012年から6回,KMSで2004年から20回,KMEで2008年から10回の繰り返し観測を行ってきた.平成26年度は,10月と1月にKMCサイトで,10月にKMSサイトで観測を実施した.7月と8月にKMEサイトでも音響測距を行ったが,いずれも海底局のバッテリ切れを確認し,このサイトでの観測が今後行えない状況となった.KMNサイトでの観測は実施しなかった.観測に使用した船舶は,三重県水産研究所の調査船「あさま」である.
解析に先立ち,生データを過去にまで遡り,音響測距波形の再読み取り(海面および船体での反射波の影響の除去),キネマティックGPS測位結果の異常値の削除,姿勢測定データの異常値の削除を行い,データの質の向上を図った.解析において,これまではGPSアンテナと音響送受波器との相対位置関係の補正値を観測ごとに走時残差をもとに決めていたが,今回は過去に求められた補正値の平均を用いて,これを一定値として海底ベンチマーク位置解析を行った.その際,過去の全データを用いて海底ベンチマーク形状を固定して,その重心位置の移動のみを求めた.
ロバスト推定法(TukeyのBiweight推定法)によって求められた海底ベンチマーク位置の時系列のトレンドを推定し,その直線の傾きからSella et al. [2002]によるREVELモデルを用いて計算したアムールプレートの剛体運動成分を差し引くことにより,各サイトにおけるアムールプレートに対する水平変位速度を求めた.得られた変位速度ベクトルは,KMNサイトではN78+/-5?W方向に45+/-2 mm/yr,KMSサイトではN75+/-4?W方向に46+/-5 mm/yr,KMEサイトではN69+/-21?W方向に32+/-12 mm/yrであった.いずれの観測点でも,方向・大きさともに有意な違いは見られない.KMCサイトでは観測期間2年半と短く,確度の高い変位速度は得られていない.KMSサイトには重心位置がほぼ同じである2セットの海底ベンチマークを設置している.もうひとつのベンチマークの解析結果による変位速度ベクトルはN68+/-11?W方向に54+/-13 mm/yrであり,上述のKMSサイトにおける変位速度ベクトルと有意な差はなく,高精度な海底地殻変動観測が行えていると言える.
2011年の東北地方太平洋沖地震では,海溝軸近傍において40-50m以上にもおよぶプレート間の極めて大きなすべりが生じた[たとえば、Ito et al., 2011; Fujii et al., 2011; Iinuma et al., 2012].このことを受けて,南海トラフ軸近傍でも早急にすべり欠損を実測する必要性が高まっており,2013年7月に南海トラフ軸近傍(トラフ軸から約15km陸寄り;尾鷲市の南東沖約120km)に新たにTCAサイトを設置した.さらに,2013年8月に南海トラフ軸の海側(トラフ軸から約35km;尾鷲市の南東沖約170km)にも新たな観測点(TOAサイト)を設置した.これらのサイトの観測は,2013年8月(観測船:関海事「どうかい」),2014年1月(観測船:関海事「どうかい」),2014年6月(観測船:JAMSTEC「新青丸」),2014年1月(観測船:海洋エンジニアリング「第三海洋丸」)の4回実施している.特に「新青丸」および「第三海洋丸」の船底には音響送受波器が装備されており,距離が6,000mを超えても5ノットで航行しながらの音響測距が可能である.現在,これらのサイトで取得したデータについて,海中音速構造による測位への影響やKGPSのクオリティを確認しながら海底ベンチマーク位置決定解析を行っているところである.
解析に先立ち,生データを過去にまで遡り,音響測距波形の再読み取り(海面および船体での反射波の影響の除去),キネマティックGPS測位結果の異常値の削除,姿勢測定データの異常値の削除を行い,データの質の向上を図った.解析において,これまではGPSアンテナと音響送受波器との相対位置関係の補正値を観測ごとに走時残差をもとに決めていたが,今回は過去に求められた補正値の平均を用いて,これを一定値として海底ベンチマーク位置解析を行った.その際,過去の全データを用いて海底ベンチマーク形状を固定して,その重心位置の移動のみを求めた.
ロバスト推定法(TukeyのBiweight推定法)によって求められた海底ベンチマーク位置の時系列のトレンドを推定し,その直線の傾きからSella et al. [2002]によるREVELモデルを用いて計算したアムールプレートの剛体運動成分を差し引くことにより,各サイトにおけるアムールプレートに対する水平変位速度を求めた.得られた変位速度ベクトルは,KMNサイトではN78+/-5?W方向に45+/-2 mm/yr,KMSサイトではN75+/-4?W方向に46+/-5 mm/yr,KMEサイトではN69+/-21?W方向に32+/-12 mm/yrであった.いずれの観測点でも,方向・大きさともに有意な違いは見られない.KMCサイトでは観測期間2年半と短く,確度の高い変位速度は得られていない.KMSサイトには重心位置がほぼ同じである2セットの海底ベンチマークを設置している.もうひとつのベンチマークの解析結果による変位速度ベクトルはN68+/-11?W方向に54+/-13 mm/yrであり,上述のKMSサイトにおける変位速度ベクトルと有意な差はなく,高精度な海底地殻変動観測が行えていると言える.
2011年の東北地方太平洋沖地震では,海溝軸近傍において40-50m以上にもおよぶプレート間の極めて大きなすべりが生じた[たとえば、Ito et al., 2011; Fujii et al., 2011; Iinuma et al., 2012].このことを受けて,南海トラフ軸近傍でも早急にすべり欠損を実測する必要性が高まっており,2013年7月に南海トラフ軸近傍(トラフ軸から約15km陸寄り;尾鷲市の南東沖約120km)に新たにTCAサイトを設置した.さらに,2013年8月に南海トラフ軸の海側(トラフ軸から約35km;尾鷲市の南東沖約170km)にも新たな観測点(TOAサイト)を設置した.これらのサイトの観測は,2013年8月(観測船:関海事「どうかい」),2014年1月(観測船:関海事「どうかい」),2014年6月(観測船:JAMSTEC「新青丸」),2014年1月(観測船:海洋エンジニアリング「第三海洋丸」)の4回実施している.特に「新青丸」および「第三海洋丸」の船底には音響送受波器が装備されており,距離が6,000mを超えても5ノットで航行しながらの音響測距が可能である.現在,これらのサイトで取得したデータについて,海中音速構造による測位への影響やKGPSのクオリティを確認しながら海底ベンチマーク位置決定解析を行っているところである.