18:15 〜 19:30
[PPS22-P04] ペロブスカイトのCa/Ti比と酸素拡散挙動の関係
キーワード:ペロブスカイト, 酸素拡散挙動
<はじめに> 炭素質コンドライト隕石中のCa, Alに富む難揮発性包有物 (CAI)は,太陽系で最も古い年代を示す岩石であり,メリライト,スピネル,ペロブスカイト (CaTiO3) などの鉱物から構成される.これらのCAI鉱物は,三酸素同位体図において質量非依存の傾き1の直線に沿う不均一な分布を示す (Clayton et al. 1973).この分布から,初期太陽系星雲中のCAI形成環境の酸素同位体組成について議論が行われている (Yurimoto et al. 1998, Itoh and Yurimoto 2003, Park et al. 2012).しかし,CAI鉱物の不均質な酸素同位体組成が,鉱物結晶化時の環境を反映しているのか,または結晶化後に経験した加熱イベントによる酸素拡散の結果であるかは未だ明らかではない.これらの議論には,CAIが経験した熱履歴と,それに伴う鉱物の酸素拡散挙動の理解が必須である.ペロブスカイトは,他のCAI鉱物よりも酸素拡散が速く(Yurimoto et al. 1989, Ryerson and McKeegan 1994, Gautason and Muehlenbachs 1993, Sakaguchi and Haneda 1996),CAI鉱物の酸素拡散挙動を理解し,CAIの熱履歴に定量的な制約を与える上で有用な鉱物である.
固体の拡散挙動は,試料中の不純物濃度によって変動する (Sakaguchi et al. 2010など).また,Tiに富むペロブスカイトでは酸素拡散が遅くなることが報告されており (橋口ら,2014 JpGU).酸素拡散挙動を理解する為には化学組成との相関を調べる必要がある.本研究では,ペロブスカイトの酸素拡散挙動を明らかにするため,CaまたはTiに富むペロブスカイトを用いて酸素拡散実験を行った.
<実験手法> 高純度のCaCO3,TiO2粉末を出発物質とし,Ca/Ti比が0.098-1.002の混合粉末を作成した.部分安定化ジルコニア (PSZ)ボールを用いたボールミル粉砕,成形を行った後,大気中1350 ℃で2時間焼成し,Ca/Ti比の異なるペロブスカイト多結晶体を作製した.ボールミル粉砕時のZrO2の混入によるCa/Ti比のズレは,約0.001の精度で補正している.試料は,化学機械研磨を行った後,大気圧18O2ガス中において,750-1000 ℃温度下で20分~数時間アニールし,試料中に18Oを拡散させた.二次イオン質量分析装置 (SIMS)(Cameca ims-4f)を用いて18O濃度プロファイルを取得し,酸素拡散係数を求めた.また,試料断面において,NanoSIMS (Cameca NanoSIMS 50)を用いた高空間分解能イオンイメージングを行い,18Oイオンの分布を調べた.
<結果と議論> 深さ方向18O濃度プロファイルから得た酸素拡散係数は,Caに富む試料ほど大きい値を示した.Ca/Ti比を0.998として焼成した試料では,表面付近に18Oの高濃度領域が確認され,試料表面と内部においてそれぞれ異なる拡散経路 (拡散I, II)が見られた.950 ℃における拡散係数は,Ca/Ti比を1.002として焼成した試料では8x10-10cm2/s ,Ca/Ti比を0.098として焼成した試料では,7x10-13 cm2/s (拡散I),1x10-11cm2/s (拡散II)であった.Ca/Ti比を0.098として焼成した試料表面の拡散(拡散I)を除き,先行研究の報告値 (Gautason and Muehlenbachs 1993, Sakaguchi and Haneda 1996)よりも大きい拡散係数が得られた.
試料断面の18O濃度イメージにおいて,表面から内部にかけて18O濃度は減少し,拡散している様子が確認された.また,Tiに富む試料ほど,粒界近傍で 18O濃度が減少していた.ここから,粒界近傍では酸素拡散がブロックされる層が形成していると考えられる. 酸素拡散のブロッキング層の形成は,CaTiO3と同じペロブスカイト構造をもつBaTiO3でも観察されている (Watanabe et al. 2011).
本研究の結果から,Ca/Ti比のわずかな違いによってもペロブスカイトの酸素拡散挙動が異なり,Caに富むほど拡散が速くなる事が明らかとなった. ペロブスカイトの組成がCaに富む場合,熱拡散によって酸素同位体組成が変動するタイムスケールは,これまで考えられていたよりも短時間であると考えられる.本発表では,ペロブスカイトの酸素欠陥挙動および拡散メカニズムについても議論する.
固体の拡散挙動は,試料中の不純物濃度によって変動する (Sakaguchi et al. 2010など).また,Tiに富むペロブスカイトでは酸素拡散が遅くなることが報告されており (橋口ら,2014 JpGU).酸素拡散挙動を理解する為には化学組成との相関を調べる必要がある.本研究では,ペロブスカイトの酸素拡散挙動を明らかにするため,CaまたはTiに富むペロブスカイトを用いて酸素拡散実験を行った.
<実験手法> 高純度のCaCO3,TiO2粉末を出発物質とし,Ca/Ti比が0.098-1.002の混合粉末を作成した.部分安定化ジルコニア (PSZ)ボールを用いたボールミル粉砕,成形を行った後,大気中1350 ℃で2時間焼成し,Ca/Ti比の異なるペロブスカイト多結晶体を作製した.ボールミル粉砕時のZrO2の混入によるCa/Ti比のズレは,約0.001の精度で補正している.試料は,化学機械研磨を行った後,大気圧18O2ガス中において,750-1000 ℃温度下で20分~数時間アニールし,試料中に18Oを拡散させた.二次イオン質量分析装置 (SIMS)(Cameca ims-4f)を用いて18O濃度プロファイルを取得し,酸素拡散係数を求めた.また,試料断面において,NanoSIMS (Cameca NanoSIMS 50)を用いた高空間分解能イオンイメージングを行い,18Oイオンの分布を調べた.
<結果と議論> 深さ方向18O濃度プロファイルから得た酸素拡散係数は,Caに富む試料ほど大きい値を示した.Ca/Ti比を0.998として焼成した試料では,表面付近に18Oの高濃度領域が確認され,試料表面と内部においてそれぞれ異なる拡散経路 (拡散I, II)が見られた.950 ℃における拡散係数は,Ca/Ti比を1.002として焼成した試料では8x10-10cm2/s ,Ca/Ti比を0.098として焼成した試料では,7x10-13 cm2/s (拡散I),1x10-11cm2/s (拡散II)であった.Ca/Ti比を0.098として焼成した試料表面の拡散(拡散I)を除き,先行研究の報告値 (Gautason and Muehlenbachs 1993, Sakaguchi and Haneda 1996)よりも大きい拡散係数が得られた.
試料断面の18O濃度イメージにおいて,表面から内部にかけて18O濃度は減少し,拡散している様子が確認された.また,Tiに富む試料ほど,粒界近傍で 18O濃度が減少していた.ここから,粒界近傍では酸素拡散がブロックされる層が形成していると考えられる. 酸素拡散のブロッキング層の形成は,CaTiO3と同じペロブスカイト構造をもつBaTiO3でも観察されている (Watanabe et al. 2011).
本研究の結果から,Ca/Ti比のわずかな違いによってもペロブスカイトの酸素拡散挙動が異なり,Caに富むほど拡散が速くなる事が明らかとなった. ペロブスカイトの組成がCaに富む場合,熱拡散によって酸素同位体組成が変動するタイムスケールは,これまで考えられていたよりも短時間であると考えられる.本発表では,ペロブスカイトの酸素欠陥挙動および拡散メカニズムについても議論する.