日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2015年5月27日(水) 11:00 〜 12:45 106 (1F)

コンビーナ:*伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、相木 秀則(海洋研究開発機構)、座長:中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

11:30 〜 11:45

[MIS22-10] 関東南部における冬型降雪・南岸低気圧降雪

*荒巻 健智1伊賀 啓太1 (1.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:関東の降雪, 冬型, 南岸低気圧, 下層収束, 成層度

関東南部における降雪としては、本州南岸を通過する総観スケールの低気圧 (南岸低気圧)によるものが知られるが、2012年1月23日の関東南部は、そのような低気圧が存在しない冬型の気圧配置で大雪となった(原,2012)。このような冬型気圧配置における関東南部の降雪に関しては、山本(1984)が1事例を報告しており、本州中部の山岳を迂回した季節風によって下層に生じる収束との関連を指摘している。
 本研究では、まず2012年1月23日の大雪事例について、気象庁メソ解析データを用いて解析を行った。総観スケールでは、JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)および、関東南岸に収束域が生じていた。メソスケールで見ると、関東の南西側に位置する駿河湾付近から南東に伸びる収束線が顕著であった。また、 中上層に寒気、下層に暖湿気が流入し、収束線付近では深い対流が発生しやすい不安定な環境場となっていた。関東付近では水平風の鉛直シアが顕著で、下層では収束線に向かう北東風が、中上層ではトラフの前面にあたることから南西風が卓越しており、収束線に沿って生じた対流性降水が中上層の南西風に流され、風下にあたる関東南部に降雪をもたらしていた。
 また、関東付近における相当温位の鉛直構造を解析したところ、2012年1月23日の大雪事例では鉛直方向の相当温位差が小さく、成層が弱かった。一方で、南岸低気圧による大雪の典型事例と考えられる2014年2月8日についても解析を行ったところ、相当温位差が大きく、成層が強かった。この結果を踏まえ、過去30年間において東京または横浜で大雪となった46の事例について、再解析データJRA-55を用いて関東付近の相当温位の鉛直構造を調べ、成層が2012年1月23日の事例と同程度かそれ以下であった事例(成層弱)と、成層がより強かった事例(成層強)に分類を行った。その結果、46事例のうち「成層弱」は4例(8.7%)、「成層強」は42例(91.3%)であった。また、東京における過去10年間の降雪日に対し同様の分類を試みたところ、全日数(86日)に対する「成層弱」の割合は29日(33.7%)となった。大雪における寄与と比較すると、降雪日の中で「成層弱」による降雪の寄与は大きかった。分類操作においては降水と相当温位に関する情報を用いているが、コンポジットの結果は、気圧配置や水平風等の他の要素を含め、「成層弱」が冬型的、「成層強」が南岸低気圧的な様相を示した。このことから、降水と相当温位に基づいて行った分類は妥当性を有するものと考えられる。関東南部における過去30年間の大雪に対して、南岸低気圧が主たる要因であったことが確認された一方で、冬型による大雪事例は 2012年1月23日以外にも存在していたことが明らかとなった。