17:30 〜 17:33
[SVC45-P17] 御嶽山2014年噴火の爆発エネルギー -水の熱力学的特性に着目した推定ー
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:水蒸気噴火, 爆発エネルギー, 水, 御嶽山, 熱力学
2014年9月27日11時52分、長野-岐阜県境に位置する御嶽山 (標高3067m) において,約35年ぶりの噴火が発生した。新鮮なマグマの噴出が認められなかったことから、この噴火は、水蒸気爆発だと考えられている。本研究の目的は、この噴火の初期における噴火のエネルギー収支を推定することである。そのために、R.Tihery and L.Mercury (2009)が提案した手法に従い、水の熱力学的特性に着目してエネルギーの収支を検討した。彼らは、マグマ溜りや熱水溜りに存在する高温高圧状態の水が大気圧まで減圧した際に放出可能な総エネルギーを熱力学的に推定する方法を与えている。一般に,火山噴火においては,マグマや熱水などの高温高圧物質が有していた熱力学的エネルギーの全てが,爆発の運動エネルギーとして放出されるわけではない.本研究では、水蒸気爆発において,高温の水が有していた全熱力学的エネルギーの何割が,運動エネルギーに変換されたかを示す換算効率をª(範囲は0~1)と定義し,この噴火に関して行われた各種の観測結果を利用して,その推定を試みた.
解析においては、噴火前後の水とそれに駆動される岩石についてのエネルギーと質量の保存則を出発点とした。爆発的噴火で放出される爆発エネルギーの推定方法に関する先行研究であるR.Tihery and L.Mercury (2009)やMastin (1995)では、噴火に伴う噴出物がすべて爆発源の深さに由来すると仮定されていたが、実際の噴火では,噴火前にはより火口に近い場所に存在していた岩石や土砂も噴出する熱水や蒸気に巻き込まれて運動エネルギーの一翼を担っていると考えられる.そのため,本研究では、噴出物を火口付近由来のものと爆発源付近由来のものに分けて、全噴出物量に対する爆発源由来岩石量の質量比をηとし、これも推定の対象である新たなパラメータとして導入した。
噴出岩石と水のエネルギー保存則の式に、御嶽山噴火に関して既に報告されている各種の観測値の具体的数値を代入し、噴火を特徴づけるパラメータの関係を整理した。その結果、ηとªの関係を表す式が導かれた。しかし,エネルギー保存則のみに基づく推定では,条件が不足しており,両者を一意に決定することはできなかった。しかし,拘束条件を課すことで両パラメータの範囲を推定することは可能である.ここでは,噴火当日と翌日での噴出物量の大小関係 (田島ら,2014) と噴火翌日の放熱量の推定値 (寺田,2014) から得られる拘束条件を加えた。
その結果,御嶽山2014年噴火において,ªについては,0.2~1、ηについては0~0.5まで,範囲を絞り込むことができた.しかし,ªに関しては,取りうる範囲が,依然として広すぎるため、類似の噴火の先行研究の結果を参考にしてさらなる範囲の絞り込みを試みた。
Ohba et al. (2007 )は、秋田焼山1997年水蒸気噴火における噴火の全熱力学的エネルギーを500GJ、そのうち爆発エネルギーを100~200GJと見積もっている(ª=0.2~0.4に相当)。両噴火を特徴づける各種のパラメータを比較すると,極めて高い類似性が認められるため,御嶽山2014年噴火においても,ªの範囲を0.2~0.4と仮定することにする。この仮定のもとに,ηを計算すると,その範囲は,0~0.3となった。
以上の議論において,ªの範囲を0.2~0.4と仮定したが,これは、水が熱水源から上昇してくる過程で,本来の熱力学的エネルギーの半分以上が爆発の運動エネルギー以外の形式で放出されたことを意味する.また,この場合,総噴出物に対する,深部由来の岩石や土砂の重量比ηは30%以下であると推定された。このことは,噴火に伴う噴出物のかなりの部分が地表近傍の火道周辺から,熱水や蒸気に巻き込まれて,放出されたことを示唆している。ただし、噴出物の由来に関するこの結果は,噴石や降下火山灰等の成分比の物質科学的な解析結果などとの比較・検討によって,その妥当性がさらに検討されるべきである.
また、ªが0.2~0.4の値を取る場合,御嶽山の9月27日の爆発で放出された運動エネルギーは103~104GJと推定された.この値は,谷口・植木(2014)が火口径と噴石の最大到達距離、爆発実験の結果から見積もった値よりも2・3桁大きい。本研究で求めた値は噴火初日の噴火継続時間(約1.5時間)の運動エネルギーの総量であり,一方,谷口・植木らの推定値は単発の爆発エネルギーに関するものであるから,そもそも対象としている現象が異なっている。よって、両者の大小関係に矛盾はないと考えられる。
解析においては、噴火前後の水とそれに駆動される岩石についてのエネルギーと質量の保存則を出発点とした。爆発的噴火で放出される爆発エネルギーの推定方法に関する先行研究であるR.Tihery and L.Mercury (2009)やMastin (1995)では、噴火に伴う噴出物がすべて爆発源の深さに由来すると仮定されていたが、実際の噴火では,噴火前にはより火口に近い場所に存在していた岩石や土砂も噴出する熱水や蒸気に巻き込まれて運動エネルギーの一翼を担っていると考えられる.そのため,本研究では、噴出物を火口付近由来のものと爆発源付近由来のものに分けて、全噴出物量に対する爆発源由来岩石量の質量比をηとし、これも推定の対象である新たなパラメータとして導入した。
噴出岩石と水のエネルギー保存則の式に、御嶽山噴火に関して既に報告されている各種の観測値の具体的数値を代入し、噴火を特徴づけるパラメータの関係を整理した。その結果、ηとªの関係を表す式が導かれた。しかし,エネルギー保存則のみに基づく推定では,条件が不足しており,両者を一意に決定することはできなかった。しかし,拘束条件を課すことで両パラメータの範囲を推定することは可能である.ここでは,噴火当日と翌日での噴出物量の大小関係 (田島ら,2014) と噴火翌日の放熱量の推定値 (寺田,2014) から得られる拘束条件を加えた。
その結果,御嶽山2014年噴火において,ªについては,0.2~1、ηについては0~0.5まで,範囲を絞り込むことができた.しかし,ªに関しては,取りうる範囲が,依然として広すぎるため、類似の噴火の先行研究の結果を参考にしてさらなる範囲の絞り込みを試みた。
Ohba et al. (2007 )は、秋田焼山1997年水蒸気噴火における噴火の全熱力学的エネルギーを500GJ、そのうち爆発エネルギーを100~200GJと見積もっている(ª=0.2~0.4に相当)。両噴火を特徴づける各種のパラメータを比較すると,極めて高い類似性が認められるため,御嶽山2014年噴火においても,ªの範囲を0.2~0.4と仮定することにする。この仮定のもとに,ηを計算すると,その範囲は,0~0.3となった。
以上の議論において,ªの範囲を0.2~0.4と仮定したが,これは、水が熱水源から上昇してくる過程で,本来の熱力学的エネルギーの半分以上が爆発の運動エネルギー以外の形式で放出されたことを意味する.また,この場合,総噴出物に対する,深部由来の岩石や土砂の重量比ηは30%以下であると推定された。このことは,噴火に伴う噴出物のかなりの部分が地表近傍の火道周辺から,熱水や蒸気に巻き込まれて,放出されたことを示唆している。ただし、噴出物の由来に関するこの結果は,噴石や降下火山灰等の成分比の物質科学的な解析結果などとの比較・検討によって,その妥当性がさらに検討されるべきである.
また、ªが0.2~0.4の値を取る場合,御嶽山の9月27日の爆発で放出された運動エネルギーは103~104GJと推定された.この値は,谷口・植木(2014)が火口径と噴石の最大到達距離、爆発実験の結果から見積もった値よりも2・3桁大きい。本研究で求めた値は噴火初日の噴火継続時間(約1.5時間)の運動エネルギーの総量であり,一方,谷口・植木らの推定値は単発の爆発エネルギーに関するものであるから,そもそも対象としている現象が異なっている。よって、両者の大小関係に矛盾はないと考えられる。