17:00 〜 17:15
[SCG64-14] 鬼界カルデラ及び薩摩硫黄島長浜湾における 海洋底堆積物の層序と化学組成
キーワード:鬼界カルデラ, 水酸化鉄, 酸化還元状態
[目的]
鹿児島県薩摩半島から約40km南に位置する薩摩硫黄島は鬼界カルデラ外輪山の一部を成すと共に,温泉が大量に湧出しており,特に島内にある長浜湾内では大量の水酸化鉄が沈殿している (Kiyokawa and Ueshiba, im press).長浜湾では,海底から湧出するFe2+イオンに富む温泉水が海水と反応することでオキシ水酸化鉄のコロイドを形成しており,湾内からは特徴的な赤褐色の変色水が外洋に流出している.この水酸化鉄沈殿物は湾外では,水深80mの海底下 (NHK プレミアム放送)でも確認されており,鬼界カルデラ内にも水酸化鉄の沈殿が起こっていると考えられる.新青丸調査KS14-10では鬼界カルデラ底最深部水深約650m地点において,表層数センチほどの褐色沈殿物を含むコア試料を取得した.過去の鉄沈殿物は深度によって形態を変えて沈殿すると言われているが,鬼界カルデラでは深度変化に伴う鉄沈殿物の堆積様式を具体的に観察・研究できると考えられる.本研究では,長浜湾における浮遊する水酸化鉄の粒子と沈殿物の観察結果と鬼界カルデラ底650m地点でのマルチプルコア試料についての,記載と化学組成分析の結果について報告する.
[研究手法]
長浜湾における浮遊粒子と沈殿物を電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて観察を行った.また,鬼界カルデラ内の谷における深度が異なる2本の堆積物コア(KS14-10 :コアA 39cm, KT10-18:コアB 42cm)の観察,CTスキャン,またXRF(蛍光X線分析)を試みた.屋久島の南,約70kmのコア(TSK1PC:コアC 26cm)についても比較分析を行った.XRF分析は800℃で12時間加熱し揮発性成分を飛ばした後,メノウ乳鉢で細かく砕き四ホウ酸リチウムと混合しガラスビードを作製.ガラスビードを蛍光X線分析機器(XRF)にかけ,主要元素の定量分析を行った.試料間隔1cmで合計94サンプルを測定しその変化を確かめた.
[結果・考察]
浮遊粒子・沈殿物の観察:FE-SEMによる観察の結果,浮遊粒子が約0.2μmであるのに対して,沈殿物は>1μmの大きさの粒子で構成されていることが確認された.ストークスの法則より浮遊する粒子は凝集することで沈殿していると考えられる.
コア観察:コアは基本オリーブグリーンの半遠洋性堆積物であり,上部と下部では若干色の違いがみられた.特に海底谷が長浜湾から直接続く,深度650mのコア(コアA)では表層数センチがオレンジ色を呈し,水酸化鉄層が見られた.スミアスライドでは,細かい粘土物質や有孔虫、珪藻が多く見られた.
CTスキャン:均質であるが数センチの孔の後が全体にみられ,生物擾乱されていた.また,コアAの表層から約28cmの部分には,直径1cmほどの四角い粒子を持つ礫状物質が混在していた.
XRF分析:主要10元素について分析し,SiO2, Fe2O3, MnO, CaOの4元素において変化が見られた.SiO2はほぼ52-55%,特にコアAは表層から28cm部分でSiO2量が56%に増加する.Fe2O3は3.7-4.0%で,ほぼ均質である.ただ,特にコアAの最上部(褐色部)は4.3%で高くなっている.Mnはほとんど入っていない.比較検討した屋久島沖の試料のMnO濃度は表層から10cmで2.5%と高い部分をもっている.Caは7-8%ほどでSiと逆相関をとり、コアAで見られる28cm部分のSi/Ca変化はSiに富む礫層の影響だと思われる.鉄沈殿について,KS14-10コアAに残される記録は重要である.本コアでは表層のみFe濃度が高くそれ以深は均質である.これは堆積物が埋没し,還元的環境に変わることで水酸化鉄が溶脱したためだと考えられる.比較検討した屋久島南方のコアにおいて鉄の量およびマンガンも含まれることは,海底表層がより酸化的で,ともに酸化物として表層に残っている可能性がある.一方,鬼界カルデラ底は海水循環なども少ないか,もしくは生物活動が活発で,表層直下ですぐに嫌気的状態になっていると考えられる.
鹿児島県薩摩半島から約40km南に位置する薩摩硫黄島は鬼界カルデラ外輪山の一部を成すと共に,温泉が大量に湧出しており,特に島内にある長浜湾内では大量の水酸化鉄が沈殿している (Kiyokawa and Ueshiba, im press).長浜湾では,海底から湧出するFe2+イオンに富む温泉水が海水と反応することでオキシ水酸化鉄のコロイドを形成しており,湾内からは特徴的な赤褐色の変色水が外洋に流出している.この水酸化鉄沈殿物は湾外では,水深80mの海底下 (NHK プレミアム放送)でも確認されており,鬼界カルデラ内にも水酸化鉄の沈殿が起こっていると考えられる.新青丸調査KS14-10では鬼界カルデラ底最深部水深約650m地点において,表層数センチほどの褐色沈殿物を含むコア試料を取得した.過去の鉄沈殿物は深度によって形態を変えて沈殿すると言われているが,鬼界カルデラでは深度変化に伴う鉄沈殿物の堆積様式を具体的に観察・研究できると考えられる.本研究では,長浜湾における浮遊する水酸化鉄の粒子と沈殿物の観察結果と鬼界カルデラ底650m地点でのマルチプルコア試料についての,記載と化学組成分析の結果について報告する.
[研究手法]
長浜湾における浮遊粒子と沈殿物を電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて観察を行った.また,鬼界カルデラ内の谷における深度が異なる2本の堆積物コア(KS14-10 :コアA 39cm, KT10-18:コアB 42cm)の観察,CTスキャン,またXRF(蛍光X線分析)を試みた.屋久島の南,約70kmのコア(TSK1PC:コアC 26cm)についても比較分析を行った.XRF分析は800℃で12時間加熱し揮発性成分を飛ばした後,メノウ乳鉢で細かく砕き四ホウ酸リチウムと混合しガラスビードを作製.ガラスビードを蛍光X線分析機器(XRF)にかけ,主要元素の定量分析を行った.試料間隔1cmで合計94サンプルを測定しその変化を確かめた.
[結果・考察]
浮遊粒子・沈殿物の観察:FE-SEMによる観察の結果,浮遊粒子が約0.2μmであるのに対して,沈殿物は>1μmの大きさの粒子で構成されていることが確認された.ストークスの法則より浮遊する粒子は凝集することで沈殿していると考えられる.
コア観察:コアは基本オリーブグリーンの半遠洋性堆積物であり,上部と下部では若干色の違いがみられた.特に海底谷が長浜湾から直接続く,深度650mのコア(コアA)では表層数センチがオレンジ色を呈し,水酸化鉄層が見られた.スミアスライドでは,細かい粘土物質や有孔虫、珪藻が多く見られた.
CTスキャン:均質であるが数センチの孔の後が全体にみられ,生物擾乱されていた.また,コアAの表層から約28cmの部分には,直径1cmほどの四角い粒子を持つ礫状物質が混在していた.
XRF分析:主要10元素について分析し,SiO2, Fe2O3, MnO, CaOの4元素において変化が見られた.SiO2はほぼ52-55%,特にコアAは表層から28cm部分でSiO2量が56%に増加する.Fe2O3は3.7-4.0%で,ほぼ均質である.ただ,特にコアAの最上部(褐色部)は4.3%で高くなっている.Mnはほとんど入っていない.比較検討した屋久島沖の試料のMnO濃度は表層から10cmで2.5%と高い部分をもっている.Caは7-8%ほどでSiと逆相関をとり、コアAで見られる28cm部分のSi/Ca変化はSiに富む礫層の影響だと思われる.鉄沈殿について,KS14-10コアAに残される記録は重要である.本コアでは表層のみFe濃度が高くそれ以深は均質である.これは堆積物が埋没し,還元的環境に変わることで水酸化鉄が溶脱したためだと考えられる.比較検討した屋久島南方のコアにおいて鉄の量およびマンガンも含まれることは,海底表層がより酸化的で,ともに酸化物として表層に残っている可能性がある.一方,鬼界カルデラ底は海水循環なども少ないか,もしくは生物活動が活発で,表層直下ですぐに嫌気的状態になっていると考えられる.