16:15 〜 16:18
[HTT30-P01] UAVによる空間線量率マッピングと放射能汚染地域への適用
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:空間線量率, UAV, 原子力災害, 福島, SfM, DSM
1.はじめに
2011年3月11日の東北太平洋沖地震により東京電力福島第一原発(福一原発)が炉心溶融を起こし、大量の放射性物質が環境中へ放出された。政府は米国と共同で、航空機による放射線モニタリングを実施し、福一原発から80km圏の空間線量率マップを作成した。3月17日から始められた航空機モニタリングの結果は5月6日に始めてWEBを通じて公開されたが、この小縮尺の空間線量率マップが避難区域の線引きに使われたはずである。緊急時の製作決定には大いに役立ったと思われるが、すでに避難も4年目に入り、避難指示解除後の対策を考えなければならない時期に入った(一部区域は既に解除済)。
山村地域における帰還後の生業は農業を中心に考えなければならない。現在、低地の田畑および居住区域の除染は進行中であるが、水や様々な資材、資源を提供する里山の放射能対策は未だ定まっていない状況である。
筆者らはこれまでに歩行サーベイ(GPSと同期させた空間線量率計を携行し、山林を歩行することにより空間線量率分布を計測する方法)により里山流域の山林における詳細な放射能マップを作成し、空間線量率分布の特徴を明らかにしてきた。その成果は放射能汚染の森林対策策定の基礎資料となるべきものであるが、土地被覆の状況、地形の制約等のために対象地域を網羅することが困難な場合も多い。そこで、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)としてラジコン電動マルチコプターを用いた空間線量率測定スキームを構築したので、ここで報告する。
2.計測システム
1)空間線量率計測システム
浜松ホトニクスの放射線検出モジュールC12137とGPS、気圧センサー、温度センサーを組み合わせて空間線量率、緯度経度、高度を1秒間隔で計測し、XBeeシステムによりデータを地上に送信するシステムを開発した。
2)UAVによる計測システム
3DRobotics社のオートパイロットシステムであるAPM2.6及びPixhawkを搭載したクアッドコプターを使用し、PC上で飛行コースを設計し、UAVのオートパイロットシステムに転送できるMissionPlannerによるコース設定を行った。
2.計測手順
1)DSM(Digital Surface Model)の作成
UAVにて鉛直写真を撮影し、SfM(Structure from Motion)によりオルソ空中写真とDSMを計測する。この手順はPhotoScan等のSfMソフトウエアにより確立されている。
2)飛行ルートの決定
得られたDSMに基づき、飛行高度、飛行ルートを設定する。DSMにより飛行範囲の最大樹冠高度がわかるため、クラッシュの危険のない高度を設定することができる。
3)UAVによる空間線量率計測
開発した空間線量率計測システムをUAVに搭載し、あらかじめ設定したコースを飛行させることにより、一定高度の空間線量率の分布を計測する。また、離陸地点における空間線量率の鉛直プロファイルを計測し、1m高度の空間線量率への変換を行う指数関数モデルを決定する。
4)歩行サーベイによる空間線量率計測
同時に、地上の歩行サーベイを行い、歩行ルートに沿った詳細かつ正確な1m高の空間線量率の分布を得る。歩行サーベイは全領域を網羅できる訳わけはないが、UAV計測と補完的に用いて、対象領域の空間線量率分布の解釈に利用できる。
5)主題図作成
地理情報システム(ArcGIS10.2)を用いて、空間線量率の分布を主題図化する。画像情報をブラウザ上で表示することにより、情報の共有を可能にした。
3.計測結果
添付の図に福島県H町(旧緊急時避難準備区域)で行ったサーベイの結果を示す。
AはUAV計測で作成したオルソ空中写真であり、観測時の現況を記録することができる。BはSfMにより作成したDSMであり、飛行高度、ルートの検証に使える情報であるCは同時に行った歩行サーベイの結果であり、清楚の高い情報を提供できるが全領域をカバーすることはできない。Dは西側の段丘面上からの高度150mで計測した空間線量率分布である。今回は飛行高度が高すぎたため、山林と平地のコントラストは明らかではないが、矢印で示した場所は除染が先行して行われた集会所であり、明らかに除染の効果が現れている。
4.提案
今後、避難指示解除が進むと思われるが、その土地で暮らすということの諒解を住民自らが得るための基本情報として、また帰還した住民の外部被曝モニタリングを継続して実施するためにも複数の方法による地域の空間線量率モニタリングを継続させなければならない。特に、里山として様々な恵みを供給する山林の放射能対策は帰還後の暮らしに必須である。UAVによる空間線量率のモニタリングを効率的な手法として提案したい。
2011年3月11日の東北太平洋沖地震により東京電力福島第一原発(福一原発)が炉心溶融を起こし、大量の放射性物質が環境中へ放出された。政府は米国と共同で、航空機による放射線モニタリングを実施し、福一原発から80km圏の空間線量率マップを作成した。3月17日から始められた航空機モニタリングの結果は5月6日に始めてWEBを通じて公開されたが、この小縮尺の空間線量率マップが避難区域の線引きに使われたはずである。緊急時の製作決定には大いに役立ったと思われるが、すでに避難も4年目に入り、避難指示解除後の対策を考えなければならない時期に入った(一部区域は既に解除済)。
山村地域における帰還後の生業は農業を中心に考えなければならない。現在、低地の田畑および居住区域の除染は進行中であるが、水や様々な資材、資源を提供する里山の放射能対策は未だ定まっていない状況である。
筆者らはこれまでに歩行サーベイ(GPSと同期させた空間線量率計を携行し、山林を歩行することにより空間線量率分布を計測する方法)により里山流域の山林における詳細な放射能マップを作成し、空間線量率分布の特徴を明らかにしてきた。その成果は放射能汚染の森林対策策定の基礎資料となるべきものであるが、土地被覆の状況、地形の制約等のために対象地域を網羅することが困難な場合も多い。そこで、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)としてラジコン電動マルチコプターを用いた空間線量率測定スキームを構築したので、ここで報告する。
2.計測システム
1)空間線量率計測システム
浜松ホトニクスの放射線検出モジュールC12137とGPS、気圧センサー、温度センサーを組み合わせて空間線量率、緯度経度、高度を1秒間隔で計測し、XBeeシステムによりデータを地上に送信するシステムを開発した。
2)UAVによる計測システム
3DRobotics社のオートパイロットシステムであるAPM2.6及びPixhawkを搭載したクアッドコプターを使用し、PC上で飛行コースを設計し、UAVのオートパイロットシステムに転送できるMissionPlannerによるコース設定を行った。
2.計測手順
1)DSM(Digital Surface Model)の作成
UAVにて鉛直写真を撮影し、SfM(Structure from Motion)によりオルソ空中写真とDSMを計測する。この手順はPhotoScan等のSfMソフトウエアにより確立されている。
2)飛行ルートの決定
得られたDSMに基づき、飛行高度、飛行ルートを設定する。DSMにより飛行範囲の最大樹冠高度がわかるため、クラッシュの危険のない高度を設定することができる。
3)UAVによる空間線量率計測
開発した空間線量率計測システムをUAVに搭載し、あらかじめ設定したコースを飛行させることにより、一定高度の空間線量率の分布を計測する。また、離陸地点における空間線量率の鉛直プロファイルを計測し、1m高度の空間線量率への変換を行う指数関数モデルを決定する。
4)歩行サーベイによる空間線量率計測
同時に、地上の歩行サーベイを行い、歩行ルートに沿った詳細かつ正確な1m高の空間線量率の分布を得る。歩行サーベイは全領域を網羅できる訳わけはないが、UAV計測と補完的に用いて、対象領域の空間線量率分布の解釈に利用できる。
5)主題図作成
地理情報システム(ArcGIS10.2)を用いて、空間線量率の分布を主題図化する。画像情報をブラウザ上で表示することにより、情報の共有を可能にした。
3.計測結果
添付の図に福島県H町(旧緊急時避難準備区域)で行ったサーベイの結果を示す。
AはUAV計測で作成したオルソ空中写真であり、観測時の現況を記録することができる。BはSfMにより作成したDSMであり、飛行高度、ルートの検証に使える情報であるCは同時に行った歩行サーベイの結果であり、清楚の高い情報を提供できるが全領域をカバーすることはできない。Dは西側の段丘面上からの高度150mで計測した空間線量率分布である。今回は飛行高度が高すぎたため、山林と平地のコントラストは明らかではないが、矢印で示した場所は除染が先行して行われた集会所であり、明らかに除染の効果が現れている。
4.提案
今後、避難指示解除が進むと思われるが、その土地で暮らすということの諒解を住民自らが得るための基本情報として、また帰還した住民の外部被曝モニタリングを継続して実施するためにも複数の方法による地域の空間線量率モニタリングを継続させなければならない。特に、里山として様々な恵みを供給する山林の放射能対策は帰還後の暮らしに必須である。UAVによる空間線量率のモニタリングを効率的な手法として提案したい。