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[SCG65-10] M7クラスの長野県北部の地震により東京湾岸で観測された長周期地震動
キーワード:長周期地震, 表面波, 後続波群, 東京湾岸, 速度応答スペクトル
1.はじめに
2014年11月22日に長野県北部でMJMA6.7の地震が発生し,最大震度6弱を記録し,多くの住宅が倒壊した.長野県北部周辺では,2011年3月12日にも新潟-長野県境でMJMA6.7の地震が発生している.二つの地震は,ほぼ同じ規模,深さ,メカニズムであり,しかも東京湾岸から見るとほぼ同じ方向にあることから,同じような特性の地震動が観測されると予想される.そこで,東京湾岸における両地震の記録を比較した.
2.データについて
東京湾を取り囲む火力発電所に設置された広帯域速度計(VSE-355G3)の記録を解析に用いた.また,岩盤や広域での波形変化を把握するため,K-NET,KiK-netの記録も用いた.2011年3月12日の地震は,新潟-長野県境で発生し,MJMA6.7,震源深さ8 kmである.F-netの解析結果によるとMw6.2,深さ5 kmで,メカニズム解は北東-南西走行の逆断層である.2014年11月22日の地震は,長野県北部の神城断層付近で発生し,MJMA6.7,深さ5 kmである.F-netの解析結果はMw6.3,深さ 5kmで,メカニズム解はこちらも北東-南東方向の逆断層である.東京湾岸の品川地点からの震央距離は,前者が184 km,後者では206 km,方位角は,325度,後者が305度であり,ほぼ,同じ方向から地震波が到来していると考えられる.
3.東京湾岸の記録の特徴
2011年の地震の速度波形では,横須賀を除き,水平動・上下動のいずれにも周期5秒の顕著な後続波群が認められた.なお,千葉におけるこの波群の出現時刻は,西側の品川に比べて遅い.この波群が西側の山地から伝播していることはK-NETやKiK-net記録を用いてペーストアップを作成することにより確認できる.減衰5%の速度応答スペクトルを作成すると横須賀を除く各地点で,水平成分,上下成分とも周期5秒に顕著なピークが認められた.
2014年の地震の速度記録には2011年のような顕著な波群は認められないが,より長周期の連続した後続波群が認められる.千葉では2011年の地震の波形と同様に遅れて到達する波群も確認できる.減衰5%の速度応答スペクトルを作成すると,周期5秒のピークが認められる地点はなかった.ただし,東京湾西側の大井・品川や東京湾東側の姉崎~千葉などでは水平動の周期7~8秒にピークが認められた.
4.岩盤上の記録
平野へ入射する波の性状を確認するために,関東平野の西側の関東山地に位置するK-NET,KiK-net観測点での波形を確認した.2011年の地震ではパルス的な顕著な後続波群が確認される.減衰5%の速度応答スペクトルでは,5秒にピークが見られた.関東山地を伝播する後続波群は水平動と上下動で位相が90度ずれており,レーリー波と推定される.一方,2014年の地震では,特別な波群は認められない.なおこの違いは,震源に近い群馬県内の観測点でも確認できる.
5.まとめと考察
2011年の地震の速度記録では,周期5秒の顕著な後続波群が認められたが,2014年の地震では認められなかった.2011年の地震記録に見られる周期5秒の波群は,岩盤点での挙動から考えて,レーリー波が平野に入射して増幅・伝播したものと考えられる.2011年の地震と2014年の地震では,平野に入射する地震動自体が異なっていたと考えられる.
2011年,2014年いずれの地震でも,関東山地から東に向かって伝播する後続波が確認でき,東京湾東側の千葉では西側の品川に比べて後続波の出現時刻が遅くなる.遅れて到達する後続波群は,平野内で成長した表面波と考えられる.ただし,7~8秒のピークは水平動に見られ,上下動にはないことからラブ波的な波の伝播と考えられる.
謝辞
(独)防災科学技術研究所のK-NET,KiK-netの観測データを用いた.また,F-netの震源メカニズム解を用いた.記して感謝します.
2014年11月22日に長野県北部でMJMA6.7の地震が発生し,最大震度6弱を記録し,多くの住宅が倒壊した.長野県北部周辺では,2011年3月12日にも新潟-長野県境でMJMA6.7の地震が発生している.二つの地震は,ほぼ同じ規模,深さ,メカニズムであり,しかも東京湾岸から見るとほぼ同じ方向にあることから,同じような特性の地震動が観測されると予想される.そこで,東京湾岸における両地震の記録を比較した.
2.データについて
東京湾を取り囲む火力発電所に設置された広帯域速度計(VSE-355G3)の記録を解析に用いた.また,岩盤や広域での波形変化を把握するため,K-NET,KiK-netの記録も用いた.2011年3月12日の地震は,新潟-長野県境で発生し,MJMA6.7,震源深さ8 kmである.F-netの解析結果によるとMw6.2,深さ5 kmで,メカニズム解は北東-南西走行の逆断層である.2014年11月22日の地震は,長野県北部の神城断層付近で発生し,MJMA6.7,深さ5 kmである.F-netの解析結果はMw6.3,深さ 5kmで,メカニズム解はこちらも北東-南東方向の逆断層である.東京湾岸の品川地点からの震央距離は,前者が184 km,後者では206 km,方位角は,325度,後者が305度であり,ほぼ,同じ方向から地震波が到来していると考えられる.
3.東京湾岸の記録の特徴
2011年の地震の速度波形では,横須賀を除き,水平動・上下動のいずれにも周期5秒の顕著な後続波群が認められた.なお,千葉におけるこの波群の出現時刻は,西側の品川に比べて遅い.この波群が西側の山地から伝播していることはK-NETやKiK-net記録を用いてペーストアップを作成することにより確認できる.減衰5%の速度応答スペクトルを作成すると横須賀を除く各地点で,水平成分,上下成分とも周期5秒に顕著なピークが認められた.
2014年の地震の速度記録には2011年のような顕著な波群は認められないが,より長周期の連続した後続波群が認められる.千葉では2011年の地震の波形と同様に遅れて到達する波群も確認できる.減衰5%の速度応答スペクトルを作成すると,周期5秒のピークが認められる地点はなかった.ただし,東京湾西側の大井・品川や東京湾東側の姉崎~千葉などでは水平動の周期7~8秒にピークが認められた.
4.岩盤上の記録
平野へ入射する波の性状を確認するために,関東平野の西側の関東山地に位置するK-NET,KiK-net観測点での波形を確認した.2011年の地震ではパルス的な顕著な後続波群が確認される.減衰5%の速度応答スペクトルでは,5秒にピークが見られた.関東山地を伝播する後続波群は水平動と上下動で位相が90度ずれており,レーリー波と推定される.一方,2014年の地震では,特別な波群は認められない.なおこの違いは,震源に近い群馬県内の観測点でも確認できる.
5.まとめと考察
2011年の地震の速度記録では,周期5秒の顕著な後続波群が認められたが,2014年の地震では認められなかった.2011年の地震記録に見られる周期5秒の波群は,岩盤点での挙動から考えて,レーリー波が平野に入射して増幅・伝播したものと考えられる.2011年の地震と2014年の地震では,平野に入射する地震動自体が異なっていたと考えられる.
2011年,2014年いずれの地震でも,関東山地から東に向かって伝播する後続波が確認でき,東京湾東側の千葉では西側の品川に比べて後続波の出現時刻が遅くなる.遅れて到達する後続波群は,平野内で成長した表面波と考えられる.ただし,7~8秒のピークは水平動に見られ,上下動にはないことからラブ波的な波の伝播と考えられる.
謝辞
(独)防災科学技術研究所のK-NET,KiK-netの観測データを用いた.また,F-netの震源メカニズム解を用いた.記して感謝します.